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第1話 ~政海ちゃんと海里くん~
Side・斎賀政海/その8
しおりを挟む「そうだ。政海、今、オタクって言ったけど、何が好きなの?」
「あー、えっとね。少女漫画と、ゲーム全般と、SERIOUS!」
「キャーっ、ウソーっ! 政海もSERIOUS好きなの? 誰、誰が好きっ? 私もチョー好きなんだぁー!」
「えーっ、嬉しいー!」
それから、僕と美乃梨ちゃんはSERIOUSの話で相当盛り上がった。僕はヴォーカルの健二が好きで、海里ちゃんはまりなが好きって事を教えて、美乃梨ちゃんは瑞樹が好きなんだって!
中性的な、男性か女性か解らない雰囲気のミステリアスな人が好みなんだって。あー、そっかぁ。タイプも色々あるよねぇー。だったら美乃梨ちゃんは、間違いなく海里ちゃんがタイプだと思う。
「ね、政海! 軽音のサークル入ろうよ! 実は私の友達に誘われていてさ、やろっかなーって思っていたんだ! SERIOUSのコピーやろうよ」
「えー、楽しそう! やりたい、やりたい!」
「新庄君も誘っちゃいなよ」
「か・・・・海里・・・・も・・・・」
思わず赤面した。そして何時もの通り、僕のめくるめく妄想が始まる――
『海里・・・・あの、軽音部に一緒に入って?』
『え? 政海入りたいの? 仕方ないなあ』
海里ちゃんは軽音部に都合よく転がっていたギターやベースを持ち、どう、似合うかな、と少し照れたように笑うんだ。
ああ、ギターより大きなベースの方がカッコいいな。線が細いけれど、海里ちゃんによく似合っている。
そんな海里ちゃんに、健二が春人にやっちゃうみたいにして、頬を寄せて歌う僕。
あっ。待って! 健二よりも海里ちゃんの好きな、歌姫まりなになりきったら・・・・もしかしたら、海里ちゃんがハートの入った目で僕を見てくれるかも!
そんで、惚れちゃうかも!? キャーっ。
あっ。あっ。そしたらそしたら、海里ちゃんはベースよりもヴォーカルがいいかなっ!
ツインヴォーカルしよっ、海里ちゃんは健二ポジションしかないよっ、って言うと、海里ちゃんは照れつつ了承。
そして・・・・。
DSM(デュエットで 自然に 密着)!!
僕の時代キタ――っ!
ふおおお・・・・。それ、いいっ!
僕は『海里ちゃんだけのまりなだよ』って、言ったらさ、もしかしたら海里ちゃんをメロメロにさせられるかも!
そのまま恋人に・・・・なったりできないかなぁ、なんて考えていた所に、政海、と海里ちゃんが声をかけてくれた。
『なあに? 海里ちゃん・・・・』
僕に惚れたから、恋人になろうって言ってくれるのかな!?
『いい声で歌うな。政海、見直したよ』
海里ちゃんが微笑んでくれた。
ズッキューン!!
自分の妄想の海里ちゃんにハートをブチ抜かれた。
ううう・・・・海里ちゃん・・・・それ以上カッコよくならないで。
他の女の子に、嫉妬しちゃうよ。
海里ちゃん。
どうすれば、君の一番になれるんだろう。
キモ男の僕なんかが、君の一番になるなんて無理だって思う前に、探してみよう。何時も僕は頑張る前から諦めていたけれど、海里ちゃんの事は諦めたくない!
僕は美乃梨ちゃんに軽音サークルに入る約束をした。始業のチャイムと同時にイケメン教師が室内に入って来たので、背筋を伸ばして前を向いた。
先生を見て、海里ちゃんの方がカッコいいな、と思った。
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