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第5話 ~政人くんと琴里ちゃん~

Side・斎賀政海/その5

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 あれから暫く。そんなこんなで一週間はあっという間に過ぎ、もう週末となった。待ちに待った土曜日だ。
 今日は、海里ちゃんと格安スマホの申し込みに行く。既にあるスマホの子機ではなく、できれば携帯の機種や会社も一新したいということで、新規契約で行くことに。正直、ネットで契約の方がラクだったんだけれど、アナログな海里ちゃんがデート(ではないと思うけれど僕にとっては立派なデート)を申込してくれたんだ! このチャンスを生かす手はない。


 しかし、しかしだ!


 学生証の顔写真は、僕は女、海里ちゃんは男みたいに映っている。性別だけはしっかり男と女になっているけれどね。携帯は本名で契約しなきゃいけないから、大変ややこしい。仕方がないので、僕たちは免許証を本人確認証として提出し、携帯契約をすることに。住まいが田舎だったから、免許は十八歳になってすぐ取りに行ったから、僕も海里ちゃんも、普通免許証は持っている。

 しかし、これにも問題があった。免許証の写真だ。

 僕はもっさりとした男、海里ちゃんは女として映っているものだから、またまたややこしいけれど、今日のデート(携帯申込)は政人と琴里で行くことにしたんだ。リバースのリバース。だから結局リバース無し? もう、わけがわかんない。

 
 本当なら政海と海里ちゃんでデートしたかったのだけれど、仕方ないよね。


 リバースのままで行ったら、多分契約できないだろう。だから結果、逆リバース=元に戻したって話。僕は男で海里ちゃんが女の人。
 とにかく、イメチェンしたって押し通せば何とかなると思う。海里ちゃんは免許証が美人なまま映っているから通るかもしれないけれど、僕が心配だ。でも、琴里ちゃんの横を前のオタクみたいな僕で歩くのは絶対に無理。そうなったら、僕だけネット申込する。もうそれでいい。もしくは、田舎の家族に電話して本人確認が通るならそうしてもらおう。

 あと、ここだけの話だけれど、琴里ちゃんの綺麗なしぐさに、女として生きていこうと思っている僕が、ドキっとすることがあったんだ。

 もうこれさあ、どうしたらいいのって思う。

 というのも、僕は昔からカッコイイ男の人にしか興味なくて、カッコイイ男の人にときめいていたんだ。女性らしい可愛いものが大好きだったしね。好きな色はピンク。これで十九年間も生きてきたんだ。
 海里ちゃんを好きになったのだって、あれだけカッコイイからだし、女性の海里ちゃんには今まで正直トキめいたことがない。だから、驚いているんだ。どうして海里ちゃんじゃなくて、琴里ちゃんの方にもトキめいたりするのかな、って。
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