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第5話 ~政人くんと琴里ちゃん~

Side・斎賀政海/その10

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 余談はさておき。僕が使うスマホの機種は何でも良かったので、イケメンのお兄さんがお勧めしてくれた格安スマホにした。海里ちゃんは調べていた機種を告げたが、欲しい色や無難な色が全て売り切れで、何とピンク色しか在庫が無いと言われたんだ。
 他の色にしようと思うと、一か月くらい時間がかかるらしい。人気の機種だし、仕方ないか。
 うわー。その色、僕が欲しいけれど、政人がピンクを持つわけにはいかないから、今回は白にしておいたんだ。

 海里ちゃんは仕方なくピンク色で契約していた。海里ちゃんがピンク・・・・笑っちゃいけないけれど、笑える。そんな色を持ち歩いているトコ、今まで見た事が無いから。


 一時間くらいで諸々の手続きが終わり、無事に政人と琴里専用の携帯を手に入れた。
 まあ、使う事はそれほど無いだろう。ショップ袋を下げ、外に出た。

「ランチするか?」

 海里ちゃんが聞いてくれた。

「オレンジキッチンってもう開店だよね。あ、お客さん並んでる。人気だね。でもその前に、CDショップに寄ってもいい?」

「いいけど、何か買うのか?」

「うん。さっきからずっと流れているCD、綺麗な声だなって思って。気に入ったから、CD買ってくるよ」

 CDショップあるあるだけれど、新発売のCDをデッキで延々ループして掛けて垂れ流しするアレ。実は携帯ショップの扉は開いていたものだから、外から流れてくるCDの音が気になっていたんだ。

 店頭に目をやると、RH with T と書かれた、どこか海外の海辺に散りばめた白い花の写真がジャケット、そしてジャケットと同じ写真のポスターが貼り出されていた。
 ポスターには、全てが謎のヴェールに包まれたRH with Tの待望の1stアルバム、『la fleur blanche(ラ フルール ブランシュ)』堂々発売! と書かれていた。多分このCDに収録された曲がずっと流れていたのだろう。アルバム一曲をループさせるヤツ。

 このCDは、男性と女性のツインボーカルの美しい声で、英語ばっかりだから歌詞の内容は全然解らなかったけれど、とても綺麗な曲だったんだ。アコースティックギターやピアノもいい音色で、素敵な曲だなって思った。

「これ、買ってくるね」

 僕はショップに入って行って、『la fleur blanche』と書かれたRH with Tのちょっとよく解らないユニット名みたいなCDを購入した。普通アー写(アーティスト写真)等をジャケットにするのに、顔写真みたいなものは一切載っていなかった。まあ、ネットで調べてみたら解るかな。どんな人たちなんだろう。
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