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第9話 ~政人くんと美乃梨ちゃん~

Side・斎賀政海/その2

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「お嬢様にそうおっしゃって頂き、誠に光栄で御座います」

 カッコイイ政人をイメージして、美乃梨ちゃんに微笑んだ。僕のお勧めケーキセットをオーダーしてくれたので、それを用意して、美乃梨ちゃんの前で紅茶を淹れてあげた。

 僕がお勧めしたアールグレイのミルクティーを、美乃梨ちゃんは気に入って飲んでくれている。春らしいさくらのムースにたっぷりのホイップとさくらのジャムを添えた、季節限定のケーキと共に提供する。
 このムース、試食させてもらったけれど、とても美味しかった。接客も楽しいけれど、できればパティシエになってケーキ作ったりしたいなぁ、って思った。女の子があっと驚くような、素敵なケーキを作りたい。


 そんな事を考えながら、時間を計るための砂時計が落ち切ったのを見てそれを回収した。予め高温の湯で温めておいたカップに、三分間蒸らしたアールグレイの紅茶を注ぎ、温めたミルクを美乃梨ちゃんの前に差し出した。

「政人さん、何時も美味しいお茶を淹れてくれてありがとう」

「お嬢様の為なら、幾らでもお注(つ)ぎさせていただきます」

「・・・・嬉しい」

 ポニーテールじゃなくて、巻き髪の美乃梨ちゃんは、僕(まさと)に恋する可憐な女性だ。
 僕が普通の男なら、きっと好きになっていただろうな。素直で可愛い美乃梨ちゃん。


 僕の大事な、初めての女友達。

 
「お嬢様。大学は慣れましたか?」


 美乃梨ちゃんとは時間の赦す限りで、色々な話を聞いた。僕の事はあまり話せない(話しちゃいけないという決まりという事にして、零さんにもそう言って欲しいと伝えてある)から、謎の男という立ち位置。あくまでもノクターンにいる、バイトの執事。だから僕が大学生だという事は、美乃梨ちゃんは知らない。

「うん。スクールライフ、楽しいよ。仲良しのルームシェアの子がいるって言ったじゃない? 幼馴染だから気も楽だし、一緒のサークルに入る事になったんだ」

「左様でございますか。それは、どの様なサークルなのですか?」

 知ってるけどね。僕も一緒に加入しているし。

「軽音だよ。政人さん、音楽はするの?」

「いいえ。聴いて嗜(たしな)む程度で御座います。演奏等、滅相もございません」

 やった事無いし。多分、色々無理。

「えー。色々出来そうなのに」

 無理無理。不器用だし、オタクだし。

「お嬢様は、わたくしの事を買い被りすぎで御座いますよ。ただの凡人ですから」

「そうは見えないけどなぁー」

「そのお言葉だけ、有難く頂戴しておきますね」

 海里ちゃんをイメージして笑った。僕の理想は海里ちゃん。あんなにカッコイイ男の人(?)になれたらいいなって思う。そしたら・・・・海里ちゃんも僕に振り向いてくれるかな?

 あ。海里ちゃんは女の子の方が好きなのかな?
 だったら政人じゃなくて、政海で頑張った方がいい・・・・?
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