王女と王子の政略結婚 ー背の高い私と背の低い貴方と-

たま

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第七話 王子様とのご対面

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馬車が止まる。私は一つ深呼吸をした。
従者がドアを開けるまでの間、王女としての顔を用意する。
窓から見えるのは私を迎えるために整列している近衛隊。
開けたドアから見えるのは。
私の目は、彼に釘付けになってしまった。
私をエスコ-トするために手を差し出してくれる、その人は。

「アリシア王女殿下、お手をどうぞ。
お目にかかるのは初めてですね。
私がジェイコブ・ブレンダン・ム-アです」

そう言って爽やかに笑うのは、金髪碧眼の王子様。
肖像画から抜け出たかと思うほどの、いや、肖像画よりも本人の方が10倍は良い、ジェイコブ王太子殿下だった。
だ、誰よ?肖像画は想像画だなんて言ったの!
あ、私か。
…ご、ごめんなさい!
ごめんなさい!
自分が10割増しに描かれていたからって、カンタベルの絵師まで疑ってごめんなさい!君らは良い仕事をしたよ!本当に。
本当に少女の憧れそのままの王子様だったよ!
心の中で謝罪しまくる。

そんなパニック気味な心境はひとまず全てをごまかす淑女の微笑みの下に隠し、手をさしだした。

馬車から降りて、彼の隣に立つ。

うん、聞いてはいたよ。

うん、知っていたよ。

私より背が低いって。

知っていた、けど。

金髪碧眼、少女の夢を10割増しに具現化したジェイコブ王太子殿下は、私の顎位の身長でした…

あぁ、私は。
背が低いといっても、まさか、一目で身長差があると分かる程だとは思っていなかった。
兄様よりも、少し小さいくらいかしら、と自分に都合の良いように想像していたんだわ。
思わず遠い目になりそうな私に構わず、ジェイコブ王太子殿下は私に微笑んだ。

「オタゴリアからの長旅では、さぞお疲れの事でしょう。
部屋を用意しておりますので、まずはお身体を休めてください。
お部屋まで、私がエスコ-トをします。
それにしても、アリシア王女殿下は、肖像画の通り、素敵な方ですね。
2週間後の式が、楽しみです」

お、おおぅ…笑顔が眩しい…
爽やか100%の笑顔で私を見上げ、歓待ム-ドを前面に押し出すキラキラ王子様。

「お目にかかれて光栄です。
オタゴリア第一王女のアリシア・ジェ-ン・オタゴリアです。
御心使い、ありがとうございます」

目を合わせてから、優雅に微笑む。

…すごいよ、この人。
私の方が背が高いのも気にせずに、なんの躊躇もなく腕を差し出す。
一瞬、手を差し出すのを迷った。
私は今まで背の低い人にエスコ-トしてもらったことがないから。
だけど、この場で手を差し出さないわけにはいかない。
戸惑いまくりの気持ちを押し込んで、微笑んで手を預ける。
周囲を見回す余裕は、私にはなかった。
貼り付けたような笑顔のまま、しずしずと移動する。

移動してすぐに、とても歩きやすいことに気が付いた。
エスコ-トするのに、背が低いとか高いとか関係ないのかな。
そう勘違いしてしまうくらいに、違和感がなかった。
だけど、違った。
彼は、ちゃんと私をエスコ-トするために考えていてくれたのだ。
私が歩きやすいように、エスコ-トされやすいように。
私の手を置く高さまで考えているのか、自分の肘の位置を高く上げている。
どの高さであれば、私が歩きやすいのか、まで。
計算されつくした、洗練された、完璧なエスコ-ト。

それに気が付いてジェイコブ王太子殿下の顔を見ると、彼は私を見上げて微笑んだ。
女の子なら、誰でも目を引かれる少女の夢を実現したような顔の王子様。
私を気遣う、さり気ない気配りまで出来るのなら、王子様じゃなくても女性に人気がでるだろう。
うん、もてないわけがない。
この人と、2週間後に結婚するの、私?
本当に私とこの人、結婚するの…?
するんだよね、うん。
なんだか、あまりにもスマ-ト過ぎて現実感がない。

冷静に観察している私の気持ちに反して、私の心臓はドキドキと音をたてはじめた。

え、私、どうしたの!?
静まれ、私の心臓。

考えてみれば、私をこんなに甘い笑みを浮かべて、女の子扱いをしてエスコ-トしてくれた人はいなかったのだ。
数々の恋愛小説を読んでいたけど、エスコ-ト一つで恋に落ちる主人公はいなかった。
ううう…
こんなんでドキドキするなんて、私、単純すぎるわ。
何て簡単な女なの-

は、早く部屋に行って一息つきたい…
そう思った私は悪くないと思う、ううん、そう思わせて。
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