その視界を彩るもの

疼木 沙紀

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第2章

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* * *






「イサゾーごめん、あたし嘘吐いちゃった」



『あ、アンタ!なんつーとこから入って来るのよ!?ていうか此処二階……ッ』







自宅で寛ぐイサゾーを窓越しに見つめ、コンコンと指の背で鳴らしたあと直ぐに。



鬼気迫る表情で勢いよくガラス窓を引っ張った奴は、慌ててあたしを中へと迎え入れる。




そんなさなかに吐き出した先の台詞。



それを耳にしたイサゾーは小さく首を傾げるものの、『傘!傘さしてこなかったワケ!?』と慌ただしくタオルを取りに奔走する。



ほらね、アカネには勿体ないって。だってイサゾー良い人すぎるし。





不運にもにわか雨にあてられたあたしの制服はびちゃびちゃ。



尚もボケっと間抜け面で瞑想に耽るあたしの頭を軽く小突いたイサゾーは、『ほら早く拭く!』とタオルを投げつけてくる始末。











柔なタオルに鼻先を埋めながら、眼下の畳を視界に映したまま。



真実を口にするのにイサゾーの眼を見られないのは、やっぱりあたしがチキンだからかもしれない。



余計なお世話だって言われたら、どうすれば良いんだろう。






「あのね」



『なによ、シケた面しちゃって。コーヒーとお茶あるけど』



「コーヒー。砂糖とミルク入れて」



『………』










そこは遠慮しないのね、と呆れ混じりに口にした奴はキッチンへ向かうべく立ち上がる。



尚も視線を下げたあたしの視界には、その踝から膝あたりまでが存在を主張していて。







「……あのね……」











ぽたり、雨のせいで濡れた髪から滴がおちる。



それと同時に吐き出した言葉。







「"友だち"に、イサゾーと付き合ってるって嘘吐いちゃった」











どんな顔をしてイサゾーと向き合えば良いのか、あたしには分からないんだ。



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