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続・マザコンとは云わせない
しおりを挟むこんな経緯を経て彼女から離れたが、日常的に顔は合わすし会話も交わした。
別れてなんかいない様に互い振舞ってた。
でもそこに甘ったるさは無く、先々を照らしていた灯みたいなものは、コレっぽっちも感じさせない会話だった。
その中で何度か君は、一番になれなかった、と言ったね。
そんなに一番が良かったのか?
一番は永遠に一番とは限らない。 そんなものが良いの?
それにだよ。 一番では無いと、自分は君に言ったかい?
受験は上手くいかず、一年浪人するも想定外の所で手を打つこととなる。
彼女は予備校の下見に同行してくれたし、大学に通う為の下宿街の物色もついて来てくれた。
其れはまだ好きでいるからの行動かと考えたが、彼女曰く、〝 女は恋愛を上書き保存する 〟のだそうで、既に自分とは別の誰か。 大人の男とやらと恋しているらしかった。
彼女の卒業式典の後、と或る送別会に同席し、駅までの道を肩を並べて歩き、同じホームで二人きりで電車を待つ間。
よく行った場所、二人が好きだった作家のその後、初キッスのときの事、知人が彼女を好きだと言ってたこと。 その他諸々の話題を取り留めなく話をしたのが、二人が交わす最後の会話に為った。
乗る電車が違えていて、彼女が乗った急行が先に発って、余韻も去った。
くちにすると本当に淋しくなりそうで、別れの挨拶は無かったと記憶している。
出逢って恋して愛して別離て、そして君は――元気で幸せでいるか?
〝 いつの間にか君も 大きな窓を開けて 大きな空を目指す人になった
飛び立とうとしても 飛び立つすべを知らない 僕に翼を見せつけながら
あの 向こうには きっと 素晴らしい夢があると 大きな瞳を うるませながら 〟
いつか贈ったこの一節を、君は覚えているか――
自分はあのとき彼女を一番、愛した。
彼女のことを今も、と問われたら……どう答えよう。
今以て自分の理想像は、変わることが無い。
でも、一番好きとか一番大切とかの対象は、その時々で変わるものみたいだ。
それにね。
何くれと無く初めてを味わうとき、横に居たのは彼女であったし、自分の初めての女ひとは彼女だけな訳で。
そういう所以で、君は永遠にオンリーワンなのかも知れない――
自分の理想の女性は、昔から吉〇〇百合さんだ。
何故と問われれば、言ってしまおう。 そう、母のイメージがそこに在るからだ。
だからと言って〝 貴方はマザコンだ 〟と決めつけて良いのものか?
違う。
自分は至って常人、と誓って言う。
マザコンとは云わせない!
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