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①一ノ瀬光という女性

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この世界は憎悪でありふれている世界だ。
憎悪になったものが特定の文字を空に書くことで使用する文字の力を使うことが出来る。例えば刀と空に書くと刀がでて使える。自分の文字が刀なら刀を変異して銃の文字にすると銃を使用できる。つまり、文字を変換することによって、文字に示された能力を使うことが出来るのだ。
文字には六つの系統がある。物質系、変身系、召喚系、魔法系、干渉系、精神系、である。それぞれに得意な系統と不得意な系統が存在する。

文字には博愛と憎悪がある。
文字を使うには希望や思いの力である博愛と怒りや憎しみの力である憎悪の2つがある。
博愛は1人1つ文字を生まれた時から存在する。扱うには相当の訓練が必要になる。
憎悪はハーメルンが憎悪にする時に文字を与える力。すぐに文字を力に出来る。

ハーメルンという存在が憎悪を作り。死神がその憎悪を狩り取る。
別の憎悪、つまり、別の人格を別の人間に入れる。そのハーメルンが作った存在の悪事を裁くのが特殊警察組織である。
その手伝いをしているのが相談屋であり一ノ瀬光が所属する組織である。締結書があるために多少の悪事は見逃される。
一ノ瀬光の体にも別の人格が入っている。ハーメルンによって憎悪の塊にされ別の体に入れられた。
憎悪の人格が別の体に入ることにより文字を使うことができる。その文字を授けるのがハーメルンだ。
一ノ瀬光になる前は伊藤秋穂だった。最初はハーメルンの言うことを聞いていたが、逃げ出した。
そして、今に至る。
相談屋の一ノ瀬光の過去との決着と自分とよく似た愛に執着する女の話である。


「あっ」
「夢か」
布団の上に寝ている一ノ瀬光が腕を顔に持ってきて、ぼそりと言葉を発する。
「また、同じ夢を見た」
この夢は何なのかは光自身にしか分からないが、汗を異常に書いている風を見ると、いい夢ではないのが分かった。たぶん、悪夢だったんだろうと推測が、出来る。
汗が尋常じゃないくらいに出ている。この時には光がこの夢を見た理由が後で分かることになる。それは、後から考えると当然だったかも知れない。
「シャワー浴びよう」
衣服を脱衣場で脱ぎ。
ドアを右手で開けた。中に入るとシャワーの位置に蛇口を合わせてあって、きよいよく水が出る。
「冷たい」
思わず声が出てしまう。
お湯の位置にはしていなく、自分自身を怒る。
気分がまた、落ちた。
蛇口をお湯の位置にしてしばらくたつとお湯が出てくる。頭からシャワーのお湯を浴びる。
「何やってるんだか」
また、あの悪夢を見たことを忘れないでいる。
その夢とは何か、いったいいつぶりだろう。過去の自分の憎悪になった時の夢は。
自分自身の中で決着が着かないでいる。
いつになったらこの悪夢を見ずに済むのか。人がなぜ、夢を見るのか、それは、自分自身との決着だと考えている。
本来夢とは。幻であり願望である。もしかすると自分自身の警告なのかもしれない。自分の好きな夢を見れたらいいなと少し乙女チックにこの光は思えたらどんなにいいか。
しかし、光は現実思考で自分自身が過去の自分と決着がつけれていない。
ただ、それだけなのだ。
光の過去とはいったい何なのかは光自身にしか分からない。
シャワーを浴びて体や髪を洗い出てきた。下着をはき、そのままで今日の服をチョイスする。今日はラフで行くと私自身の中で決めている。
きっと今日は、一人でのんびりタイム何だと分かる。いつもは誰かといる。それは、淋しいからではなくただの付き合いと光は、話しているが、結構な淋しがり屋だ。
(ほっとけ)
(その淋しがり屋が)
(ほとっけ)
光からの異議申し立てが出たためにここからは、何も言わない。
光は服に着替えてお気に入りのパンプスを履き外に出た。まだ秋口ということで外はまだ、暑かった。外は太陽が照らしていて、からっとした気持ちのいい天気だった。それに風がそれを後押ししている実にいい季節である。


今は午前十一時である
今日は、遊ぶ男がいないために久々に一人を謳歌すると決めている。
ここは、梅田の駅中である。今日はテレビで放送されていた。アイスを食べに、トランフロント大阪に来た。人の混雑によって光の食べたいものが変わる。並んでまでは食べたくない。 だから、飲食店等に男友達と行くときは、絶対にファストパスを飲食店の予約ガイドでとってもらっている。そうしないと光の機嫌がどんどん悪くなっていく。光は自分の性格が、あまりいい方じゃないことは分かっている。並んでまでは食べたいとは思っていなかった。でも、美味しいものには目がない。だから、ファストパスを用意してくるのだ、男友達は。
ファストパスとはUSDや東帝ディズニーニンドでは、乗り物を並ばずに楽しめる券だ。所謂金持ちが、並ぶ時間を買ったのだ。それを飲食店も取り入れて、並ばずに指定の時間に飲食店に行くと、座席が用意されているのだ。
飲食店で並ぶなんてありえないと光は文句をいうからできたらしい。っとこんな話もあるということだ。しかし、並ぶ時間を金に換えられるとはこの世界も成長している。お客のニーズに順応している所を見ると、まだまだ捨てたもんじゃないと分かる。
憎悪になった当初は彼氏が大勢いた、でも今はみんな友達になっている。どうしてか、そこが気になるポイントだ。
アイスを無事に並ばずに買えてご機嫌はいい。
ついでに差し入れでもしようと阪急梅田に行き、皆の分のケーキを買って行く。
トランフロントを出て歩いていると駅と阪急梅田を結ぶ陸橋の上を歩いている時に、チラシを配っている人たちに出くわした。前もそう、この人たちは仕事がないときはいつもチラシを配っている。人探しをしているんだ。
光は気まずそうにチラシを貰い歩いている。
「娘を探しているんです」
歳は五十代半ばで、秋口であるにも関わらず半そでのポロシャツでチラシを配っている。なぜか、それは、暑いからである。秋口にもかかわらず、三十℃まで上がるくらいの可笑しな気候である。でも、すごしやすい気候に変わって来ている。
「自分から失踪したわけがないんです」
「きっと何か事情があり、失踪したんです」
チラシを配りながら行きかう人に何度も頭を下げて情報を得ようとしている。
それほど、親はその子のことが大事なんだと分かる。
ここまで、愛されているのに失踪する。
いや。
事件に巻き込まれているんだろうと。思わせるくらいチラシを配っている。
「誰か、この子を見かけた人はいませんか」
また、別の人の所に行きチラシを配っている。
「有力情報には三百万出します」
周りにいる人たちが。
「また、チラシ配っているよ」
若いカップルがチラシを貰いすぐに捨てていった。この光景は我慢ならなかった。
しかし、チラシを配っている人は、くしゃくしゃに捨てられた、チラシを元の状態に戻し、また、チラシを配りを始める。
許せない。
これが、光の中での考えを大きく変える。
「自分の子が失踪したことをまだ、受け止められていないんだよ」
また、別のカップルがひそひそ話で話している声が聞こえる。
光は足を止めて、チラシを配っている、数人のグループを見ている。
周りの人から声が聞こえる。
「可哀そうに」
「あれだろ、私立のいい所の子供なんだろ」
「親がどちらも公務員なんだってよ」
「子供がぐれて失踪したんだろ、どうせ」
そういう声に負けずに。
自分の子供の為に必死に情報を得ようと頑張っている。
光は何も言わずに立ち去る。でも、これが光の中の後悔に繋がっているとは気づいてはいない。いや、気づいている。ただ、見たくないから見ないだけなんだ。
そして、しばらく歩き阪急の梅田の地下一階に下りる。
そこは、まるで、夢を見ているみたいと子供の時に連れられて来た当時は思った、子供にとってお菓子は天にも及ぶ美味しいものだと当時思っていた。それ以降も何度も足を運んでいる。 阪急梅田にも当然行ったことがある。
梅田の周りの百貨店はすべて制覇しているのだ。ただのおいしいものが好きなだけの子供、いや、大人のお姉さんだ。
新急の梅田のデパ地下で、人数分のケーキを買った。
見るからに美味しそうで。本当に宝石箱に見える。それほどケーキに装飾されている出来栄えがいい。
デパ地下を出て、又あの陸橋を渡った。数人で、秋穂の情報を提供してもらえないかと、チラシを配っている。
秋穂とは、失踪した娘さんの名前である。秋に生まれたから秋に関する名前を探してつけたらしい。
どこ情報だよ。
私の所まで来てチラシを渡してくる。
「何か知っていますか」
女の人は話をしている。
「いいえ、知らないですね」
光は答える。
「毎日しているんですか」
光はこの人たちに対して疑問を持っていて、そのことを話す。
「流石に毎日は無理ですけど、出来るときにはチラシを配っています」
姿勢を正し真正面に立ち、目でじっとこちらを見ている。
「残念ですけど、知らない顔ですね」
光の中でもこの言葉を放つことでこの人たちの気持ちが下がることを分かりつつ、申し訳なさそうに言葉を選び発する。
「そうですか」
「ご協力ありがとうございます」
やはりの態度である。少し落ち込み又、次の人に声をかけようとしている。
「娘さんは迷惑だと思っているんじゃないですか」
自然と言葉を出している。この言葉を選んで話したわけじゃない、勝手にこの言葉が考えるよりも心から出てしまう。
「失踪して二年でしょ」
この言葉でその人達が傷つくことまでは考えが至らなかった、いや、本音で話しているんだ。だから、失礼なことも言わなくてはならない。それは、この人たちが頑張るための理由なんだと分かっていたけど言葉に出てしまう。きっと彼女らも分かっているはず。

報われないと。

でも、報われないと無駄になるかは本人次第だ。きっと、娘さんは帰ることは望んでいないかもしれない。でも、続ける意味は何なんだ。親としての責務なのかもしれない。親はどこに行っても、親なんだ。だからこそ、子供のことはいつでも自分の中では一番なんだ。だから、希望を持ち探している。徒労に消えようとも。
だからこそ、次の言葉が出たんだ。

「いいえ、まだ、二年です」

「ご協力ありがとうございます」
苦虫を噛むような感じがして、すぐにも立ち去りたい、でも、「まだ」という言葉が光の中で響いていた。
何も考えずに歩き出した。
何を考えていたのかは分からないが、光自身でなにかが、変わろうとしていた前兆のようなものが現れたんだと感じる。
駅のトイレに入り。
鎌。
と書き。
「分解」
金と兼に分けて。
「変異」
金を空に兼を間に。
「結合」
空間と書き円で囲み手を触れた。
空間に入った。
そして、胸ポケットから名刺を出し、バーへ繋がる道を出す
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