転移先で出会ったアラフォー魔術師が時々かっこよく見えるのが悔しい

チーズたると

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 強い光が瞼越しの目を焼いて、ミサは目を覚ました。

「んん……」

 妙な夢を見た気がする。トラックに撥ねられそうになっていた女の子を助けたら、変な世界へ行ってしまった夢だ。

 漫画の読みすぎだなと、重い瞼もそのままにミサはのんびりとベッドの上で伸びをする。
 と――。

「やぁ、起きたかい。ミサちゃん」

 その声に、ミサは思わず固まった。
 家族の声ではない。当然、聞き覚えも――。

 いや、聞き覚えは――あった。
 両目を開けて、ミサは勢いよく起き上がった。

 ミサを覗き込んでいたらしい男が「おっと」と言って、上半身を反らす。
 見れば、そこで微笑んでいたのは見覚えのある魔術師であった。

「やっと起きたか。あまりにも起きないから、早すぎる冬眠でも始めたのかと思ったぞ」

 別の方向から声がしたので今度はそちらに視線をやると、こちらにも見覚えのある魔術師の姿があった。

「まぁまぁ。昨日は色々なことがあったんだ。疲れていたんだろうさ」
「ふん」

 見覚えもあれば、名前もわかるふたりの男性。
 ミサは自分の頬をつねった。

「……なにしてるんだい」
「これは……夢じゃないんですか……?」

 この発言に一瞬だけ間を置いてから、メルウィンは笑う。

「残念ながら、現実だよ。君がこの世界に来てしまったことも、なりゆきで僕やラックくんと行動を共にしていることもね」

 彼はあっけらかんとそう述べたけれども、ミサの心境は絶望的であった。

 これまでのミサの人生はたしかに平凡そのもので、まるでモブのようなそれだったが、それでも、こんなにも急激な人生の変化など望んではいなかった。

 人生にも、多少のスパイスは必要だろう。しかし、これはやりすぎである。神様、自分はあなたの機嫌を損ねるような真似をなにかしてしまったのだろうか。

 馴染みのない環境に突如放り込まれた不安が、ここに来て改めて込み上げてくる。

 そのとき、不意にラックから器を差し出された。
 見上げると、彼は相変わらずの不愛想な表情でミサを見ている。

「朝食だ。お前のくちに合うかは知らんがな」

 ミサは再度、器に視線を戻した。それは、具がたくさん入ったスープである。きちんとスプーンも添えられてあった。

「……ありがとう」
「ふん」

 ミサに皿を渡したラックは、背中を向けて素っ気なく去っていく。
 すると、ミサの隣にいたメルウィンが小声でフォローをした。

「女の子との交流に慣れてないから、まだ距離感がうまく掴めないんだよ。しばらくはあんな感じだと思うけど、まぁ許してあげて」

「おい、聞こえてるぞ!」
「おっと」

 真っ赤になった弟子に怒鳴られた師匠が、わざとらしく肩をすくめる。

 ミサはスープに目線をやる。見た目は、なんの変哲もない野菜のスープという印象だ。変なものが入っていたり、変な色をしていたりする様子もない。

 スプーンを手に取り、スープをすくってくちに運ぶ。

 味はいたく素朴で、その優しさがミサに安心感を与えてくれた。初めて食べる味なのに、不思議とどこかなつかしい。


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