転移先で出会ったアラフォー魔術師が時々かっこよく見えるのが悔しい

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　すると、口数すくなく聞いていたメルウィンがくちを挟んだ。

「たしかに、君とミサちゃんのタイマンなら、ミサちゃんの勝ち目は薄いだろう。けどね、ザルフィナくん。君は忘れちゃいないかい？」

「……あなたが彼女の側についていること――ですか？」
「それもある。が、戦況は正しく把握しないと足をすくわれるよ」

　メルウィンの指摘に、ザルフィナが不思議そうな面持ちをする。

「なにを――」

　言いかけて、ザルフィナはハッと視線をメルウィンから逸らした。
　直後、壁にあいていた穴が爆発し、そこからなにかが勢いよく突っ込んでくる。

　それは、真っ直ぐにザルフィナへとぶつかっていった。
　ザルフィナは咄嗟に自らの杖で身を庇い、攻撃を防ぐ。

　室内に、硬いものと硬いものが激しくぶつかる音が響いた。
　風圧で砂埃が舞い上がり、ミサは腕で目を覆う。

　そうして顔を上げて、状況を理解した。
　眼前にいたのは、己の杖を武器にしてザルフィナへとぶつかっていったラックである。

　噛み合ったふたりの杖が、ギリギリと軋んだ。
　ザルフィナは微笑する。

「おやおや。思いの外、頑丈なようですね。手加減して投げ飛ばしたわけではなかったのですが」
「当然だ。俺を誰だと思っている。あの世界一クズな魔術師であるメルウィンの弟子だぞ」

　ふたりは互いの杖を弾き合って、距離をとる。
　床で靴底を削り、停止したザルフィナの死角から、今度はメルウィンが襲い掛かった。

　メルウィンが振りおろした杖を、ザルフィナが自身の杖で受け止める。
　その隙を狙って、次はラックがザルフィナへ追撃した。

　ラックの杖の先端にある宝玉が光を放つと、無数の氷の柱が連なって現れ、それは蛇のごとく床を這いながらザルフィナを襲う。

　小さく舌打ちをしたザルフィナは片手を杖から離し、迫ってくる氷の群れに掌を向けた。

　その掌から噴き出したのは、炎である。
　ザルフィナの炎にラックの氷は蒸発して、無力化した。
　しかし、メルウィンはザルフィナが片手で抑えられる相手ではない。

　相手の注意力が分散したのをメルウィンが見逃すはずもなく、彼はなにかの呪文を小さく唱えると、そのままザルフィナを押しきって、相手を強引に弾き飛ばしてしまった。

　家の壁に豪快な穴をあけて、ザルフィナは屋外へと吹き飛んでいく。

　そんな魔術師達の戦闘は、ほんの一瞬の出来事だった。ミサはぽかんとして、メルウィンとラックを見やる。

　己の杖を肩に担ぎながら、メルウィンはラックに話しかけた。