転移先で出会ったアラフォー魔術師が時々かっこよく見えるのが悔しい

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「このまま城まで行くよ！」
「だ、大丈夫なんですか？」

「当然だとも！　僕を誰だと思っているんだい」
「世界でも指折りのろくでなし魔術師でしたっけ？」
「違う違う！　世界屈指のイケメン魔術師だよぉ」

　ミサを腕に抱いたまま、メルウィンはまっすぐに城へと飛ぶ。
　避けながら飛行しているうちにトラップの地帯を抜けたのか、いつの間にか槍が襲ってくることはなくなっていた。

　ザルフィナの城が、着実に近付く。
　そのときだった。突然、城を中心にして、半円型の半透明なガラスを思わせるものが出現する。

　今の今まで存在しなかったはずのそれが、城を守るように一瞬にして現れたのだ。
　まるでスノウドームを思わせるそれを、ミサは凝視する。

「メルさん、これ……」
「結界だね。解除するのも面倒だから、ぶち割るよ」
「ぶ、ぶち割……？」

　片腕にミサを抱いたまま、メルウィンはもう片方の手で杖を掲げた。
　すると杖の先端の宝玉が光を放ち、ミサとメルウィンを微光が包み込む。

　いったいなにをするつもりなのかとミサが疑問に思えば、メルウィンは出し抜けに飛行の速度を上げ始めた。
　彼は猛烈なスピードで、結界に迫っていく。

「あ、あの、ぶつかっちゃうんじゃ……っ」
「ぶつからないと、ぶち割れないじゃないか」
「で、でも……！」

　結界が目前に迫り、ミサは反射的に目を瞑った。
　硬いものにぶつかる衝撃が襲ってくるものとばかり予想して身構えていたけれど、幸いなことにそれがミサを襲うことはない。

　かわりにけたたましく響いたのは、ガラスが割れるふうな破壊音だった。
　その音に驚いて目をあけると、視界いっぱいにキラキラと輝くなにかが広がっている。

　もしや、破壊された結界の欠片がきらめいているのだろうか。
　だが、そのキラキラとしたもの達は、すぐに空気中に溶けるように消えてしまった。

　ミサがうっとりと見入っていたのもつかの間、今度はザルフィナの城の上空に巨大な魔法陣が出現する。

「メ、メルさん、あれ……」
「うん、結界が破壊されるのと同時に発動する仕掛けだったみたいだね」

　メルウィンは、そこで飛行を停止して空中にとどまった。
　魔法陣の出現が引き金であったのか、急速に雲行きが怪しくなる。

　黒い不吉な雲が魔法陣を中心にして発生し、その暗雲は渦を巻いて、城の周辺に不吉な影を落とした。

　すると、今度は小さな稲妻のようなものが魔法陣に纏いつき始める。
　その稲妻は徐々に大きくなって、薄暗くなった周囲を雷鳴と雷光で威嚇した。