転移先で出会ったアラフォー魔術師が時々かっこよく見えるのが悔しい

チーズたると

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 ラックの首を絞めるザルフィナの手に、徐々にチカラが込められていく。

「……ぐ、ぅ……っ」
「お前になにがわかる。お前なんかに、僕のなにが!」

 ラックの首を絞めていたザルフィナの右手が、今度は勢いよくラックの頬を平手打ちした。
 鋭い音が、室内に響く。

「僕がこれまで……これまで、どんな想いで……っ」

 ラックはザルフィナの様子を窺った。
 今の彼は、先程までの冷静さが嘘のように感情的になっている。

 ひょっとすると、今の己が感情に振りまわされている自覚すらないのかもしれなかった。

 そうラックが感じるほどには、彼の瞳に余裕がない。
 おそらくはラックの言葉が、無意識にザルフィナの触れてはいけない部分に触れてしまったのだろう。

 ラックの視線に感付いたザルフィナが、また顔を歪める。
 まるで、幼い子供の癇癪のようだった。

「……なんだ、その目は。お前なんかが、僕をそんな目で見ていいと思っているのか!」

 叫んで、再びラックの頬を叩く。
 そんなにラックが憎いのなら、魔術で攻撃をすればいい。ザルフィナほどの魔術師であれば、ラックの息の根を止めることも容易いだろう。

 しかし、彼はそれをしない。そんなことにすら頭がまわらなくなるほど、感情的になっているということか。

 それほどまでに――友人の死に関することで、自分自身を責めたのか。

 ザルフィナの平手打ちは、しばらく続いた。
 ラックは反論する気にも、反撃をする気にもなれなかった。

 何故ならば、ラックの頬を叩いているザルフィナの瞳が、今にも泣きそうに歪んでいたからだ。

 叩かれているラックよりも、彼のほうが余程つらそうに見えたからだ。
 ラックを散々たたいたザルフィナは、荒い呼吸でしばらくそこに佇む。

 どことなくぼんやりとした彼の面持ちに危うさを感じ、なにか声を掛けようとラックがくちをひらいた、その瞬間だった。

 ザルフィナが、今度は両手で容赦なくラックの首を絞めてきたのである。
 彼は虚ろな瞳で、ひとりごとのように言った。

「……もう、いいです。メルウィンさんとミサさんが現れるまでは生かしておこうと思いましたが……どうにも、私達は馬が合わないようだ」

 ゆっくりと、ザルフィナの手がラックの首を締めあげていく。
 ゆるやかな動作に反して明確な殺意を感じ、そのチグハグさにラックはぞっとした。

 ラックを見据える彼の眼差しも静かで、それはどこか、生きることに疲れきっているふうにも見える。

 そのザルフィナの表情が、妙にラックの胸を衝いた。
 そんな顔をしないでほしい――と願ってしまったのは、どうしてだったのか。

「あなたがもう少しお利口さんだったなら、長生き出来たかもしれないのに」

 遠のいていく意識で、ラックは彼の言葉を聞いた。絞められている首が、声を出すことさえ許してはくれない。


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