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しおりを挟むしかし、シャールに役立たずだと思われるのは非常に癪である。なにより、仮にも一国の姫としてのプライドもあった。
彼を横目で窺えば、シャールは剣と炎の魔法を駆使して着実に花の体力を奪っている。大規模な魔法を使わないのは、森の環境を考えてのことだろう。
思案してから、再びマーガレットは駆ける。
迫ってくる蔓を回避し、今度は花に直接向かうことなく、花をまわり込むふうに動いた。
何本もの蔓が、複雑に動いてマーガレットを襲う。それを跳躍し、または地面を転がってマーガレットは避けた。
マーガレットの思惑に感付いたらしいシャールが、マーガレットをフォローするように自身の動きも変化させる。
花が、ふたりの魔法使いに翻弄されて右へ左へと揺れた。
それによって宙吊りになっている男の悲鳴もひと際ひどくなったけれども、やはりかまっている暇はないので無視する。
「マーガレット、上だ!」
シャールの声に頭上を仰ぐと、一本の蔓が鞭のごとき鋭さで真っ直ぐマーガレット目がけて落ちてきていた。
それを避ければ、蔓は大地を震わせて地面を大きくえぐる。直撃を受ければ、とても無事では済まないだろう。
しかし、マーガレットは敢えて笑った。
「あら、けっこうやるじゃない」
言って、魔法で全身を強化する。
そうして、目の前の蔓を掴んだ。
「でもね――」
マーガレットは、蔓を引っぱり上げる。肉体を強化したマーガレットに、蔓はされるがままとなった。
その蔓を肩に担ぎ、マーガレットは花の葉を蹴って跳躍する。
マーガレットが花の周辺を駆けるたびに、花は自らの蔓によって徐々に拘束されていった。
その様子を見ながら、シャールが笑う。
花の周囲を何周もしたマーガレットは蔓を持ったまま地面へと降りると、最後の仕上げに蔓をきつく引っぱった。
雁字搦めになった花が苦しげに煙を吐き出したものの、締めつけられているせいか、先程よりも噴き出す煙の量は少ない。
「喧嘩を売った相手が、悪かったわね!」
そのセリフが合図だったかのように、直後、シャールの炎の魔法が花を襲った。
全身を炎に包まれた花が、苦しそうに蠢く。しかし、抗おうにもマーガレットに蔓を掴まれているままのため、花は大きく動くことすら出来なかった。
燃え盛る炎が消えると、あとには黒焦げになった花だけが残る。
花はゆっくりと傾いて、そうして地面へと倒れていった。
宙吊りになっていた男も、それと同時に大地へ転がる。
倒れた花は、もう動かなかった。それを確認して、マーガレットは蔓を放す。
「なかなかやるじゃねーか、お前」
見れば、シャールが片手をあげながら近付いてきていた。
マーガレットも手をあげて、ふたりはハイタッチをする。
「ふふん、当然」
「最初はどうなるかと思ったが、予想以上だよ。相棒に欲しいくらいだ」
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