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15 怪我を治そう!
しおりを挟むそんな訳で、無事、購入した奴隷たちを屋敷に運び入れた。
まだ殆ど何も手を付けていないから、1階は購入した時のまま、手つかずに近い状態だ。
だが、彼等がこの屋敷に入り込んだ事で、時間経過と共にどんどんダンジョン・ポイントが溜まっていっている。
うん、うん。
一気に人間14人分。実に美味しい。
「さて、先ずはお前たちを『治療』しよう。それが終わったら、風呂を沸かすから入浴してくれ」
……ざわり!?
俺の言葉に、目を見開ける者は目を見開き、口を開けられる者は、あんぐりと口を開け、驚きを露わにしている。
「何故、我々を治療など……」
「そりゃ、お前たちが長生きしてくれた方が俺が助かるからな。俺にはお前たちが必要なんだ」
原則、ダンジョン・ポイントは時間経過で加算なのだ。
仮に死亡されると、その時に10倍のポイントが一気に加算されるが、それであれば10時間以上生存していてくれた方が長い目で見ればお得。
「おぉ……」「な、なんと……」「そんな」「うぅ……」
何故か、俺の言葉を聞いた奴隷たちの一部が泣き崩れる。
まだ流石に情緒が不安定な状態なのだろう。
「じゃ、順番に治療するから……ベータ、お前からな。そうだ、ネーヴェリクは先に風呂の準備をしてやってくれ」
「ハイ、かしこまりマシた」
俺はネーヴェリクに『セーブ・エリア虫』を数匹融合させ『住環境コーディネート虫』に進化させたものを手渡す。
これがあれば、地下の水脈や魔脈から勝手に路を創って、必要な要素を吸い上げ、再度循環させることが出来る。
「標準的な人間の体力・魔力・疲労・老化回復の泉、温水タイプが良いだろう。それだけで足りなければ溜まったポイントを使い切っても構わない。あ、あと、2階に魔族用のものも作っておいてくれ」
なお、魔族用の風呂は、魔力回復量が多めな一方、老化回復機能を付けないことが多い。
種族にもよるが、普通の人間に比べると老化速度がかなり遅いため、頻繁に入浴する風呂にその効果をつけてしまうと、逆に若返り過ぎて幼児が大量発生してしまうことになるのだ。
おまけに『老化回復』って妙にダンジョン・ポイントを喰うし。そんな風呂は1個で十分だ。1個で。
「ハイ、それでは浴槽を加工させていただきマス」
まずは、それぞれの生物に合わせた住環境の整備はダンジョン構築の基礎中の基礎と言える。
俺はネーヴェリクを見送ると、奴隷たちを順番に回復する。
梅毒により、鼻がもげ落ちた老婆を元の姿に戻した際には女達からどよめきが起こった。
「ああっ……! うそ……夢みたい……! か、顔が……!! 指も、膝も……元にッ!! 旦那様、あり、ありがとうッ……ございますっ!!」
「いや、構わない。それよりも、お前たちには明日以降、薬作成の協力として、少しでいいから献血をお願いしたい」
にっこり。
俺が微笑みかけると、彼女たちは、感動に打ち震えるように瞳を潤ませ、何度も何度も力強く頷いてくれた。
「うぅ、も、もちろんでございます!! アタシなんかの血でよろしければ……ッ!!」
よーし、これでネーヴェリクのご飯もゲットだ。
……しかし、今回購入して来た女たちは、てっきり老婆ばかりだと思っていたのだが、回復してみたところ、そのほとんどが、まだ20代後半から30代半ばの働き盛り。一番年上でも40代と……使用人として住み込んで貰うには十分な年ごろ。
これは嬉しい誤算だ。
男性陣は、年代がバラバラだが、大きな欠損が有る者は若く、病気の者は年配の傾向があるようだ。
「お前たちは、身体の汚れを落としたら、食事はこの食材を使って作成してくれ。一週間分あるはずだ。1階についてはお前たちが好きに使ってくれて構わないが、最初の一週間は俺の回復魔法が固着するまで病状や怪我が悪化したら困る。そのため、屋敷の外に出ることは禁止する」
回復魔法が固着うんぬんは言い訳だ。
重要なのは、彼等をこの屋敷から外に出さない事。
人間14人、一週間分のダンジョン・ポイント。
ふふふ。序盤ブーストとしては完璧。
「とりあえず、奴隷たちの仮のリーダーはお前な、ベータ。屋敷から出られない間、暇なら全員に文字の読み書きを教えておいてくれ」
「は、かしこまりました」
俺は元・執事のじーさんに指示を飛ばす。
これなら、体力が回復しても一週間程度は大人しく屋敷内に居るだろう。
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