四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

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23 ニンジンを売ろう!

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「……なぁ、カイトシェイドさんよォ……」

「何だよ、アルファ」

 ぎっし、ぎっし、ぎっし。
 積み過ぎたマンドラニンジンで荷馬車が小さな呻き声をあげている。

「何でまたテメェまで俺と一緒に荷馬車を牽いてやがるんだよ!」

「仕方ないだろう。マンドラニンジンが採れ過ぎたんだ。口じゃなくて足を動かせ、足を」

「そんで、何でこのガキが荷台に乗ってんだよ!!」

「これも仕方ないだろう。お前に大分懐いてるみたいで傍を離れないし、オメガのヤツ地味に【奴隷紋】の命令が効かないし、他の連中もそれぞれ仕事が有るし……それに、オメガは歩かせる方が危なっかしいし、移動速度が遅い!」

「このクソガキ!! ぶっ殺すぞ! どっか行け! 死ねッ!!」

 アルファがそう怒鳴ると、ハの字眉毛でニタァ~、と嗤うオメガくん。
 
「おい、アルファ! なんて事を言うんだ! 『どっか行け』ではなく『屋敷に戻れ』、『死ね』ではなく『死ぬなら屋敷で』と言うべきだ。それに本気で殺すつもりがあるなら屋敷の中で殺ってくれ」

「テメェ、頭、湧いてんのか!?」

 だが、彼も最初の無反応に比べれば、反応するだけマシになっていると思いたい。

「ははは、まぁ、そうは言っても、長生きしてもらうに越したことはないがな」

 オメガのヤツ、実は、購入して来た奴隷たちの中で一番、魔力値が高いんだよな。
 他の奴らの3倍近い魔力量で、一人群を抜いている。
 ぼんやりと泥団子を混ぜている姿からは想像つかないが、ダンジョン・ポイント的に美味しい子なので、健康で長生きしてもらいたいものだ。

 やはり、大切なダンジョン・ポイントを生み出す奴隷はきちんとケアしてやらないとな。
 ゆくゆくは、ダンジョン内で繁殖してくれると凄く助かるんだが……
 そのためにも男女比は大きく違わないようにしているのだから。

「くそっ! おい、ガキ!! 何ニヤニヤしてやがる!」

 バキッ!
 
 どうやら、俺が少しアルファをからかい過ぎたのが原因か。
 苛立ちをオメガにぶつけ始めるようになってしまった。

 ……あ、いや、でも、オメガの方は相変わらずニタ~と笑ってるから、激しめのスキンシップなのか?
 人間の育成は初めてだから限度が良く分からんけど、明かに殴られた部位が腫れ上がってきている。

「おい、俺が回復魔法を使えるのは屋敷の中だけだから、あんまり乱暴に扱うなよ」

「……チっ!」

 ひと悶着ありつつも、荷馬車は冒険者ギルドへ到着した。


「まぁ!! こんなにたくさんのマンドラニンジン!! す、凄いわ、ええ、もちろん、喜んで買い取らせていただきます!」

 冒険者ギルドで、素材を売りたいと話をしたところ、受付嬢らしき女性が荷馬車いっぱいのマンドラニンジンを見て瞳を輝かせる。
 興奮で鼻息がだいぶ荒い。

 状態を調べて単価と個数を出すまで少々お待ちください、と言われ、俺たちは冒険者ギルドのテラス席で待つことにした。

「ヒュ~! お兄さん、凄いねぇ、あんなにたくさんのマンドラニンジン!」

 そこへ冒険者らしき男が声をかけて来た。
 割とチャラい印象の4人組だ。

「なぁ、あんな大量に、一体どこで採って来たんだ?」

「教えてくれよ、俺たちにも、さ」

 こちらを値踏みしつつも馬鹿にしているような不愉快な眼差しを浮かべている。
 こういう視線は、とても見覚えがある。
 あの三馬鹿たちが俺やネーヴェリクを蔑む目とそっくりだ。

「ア”ぁ?」

「ッ……!」「うっ……」「ぐっ……」「ひっ!」

 だが、アルファの棘が立ちまくりの一睨みに怯む四人組。
 ははは、雑魚い、雑魚い。

 だが、敵わないと見るや、サッサと尻尾を巻いて逃げ出すあたりは、魔王軍のバカたちよりは己の力量を知っている分、賢いな。
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