四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

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42 冒険者を観察しよう!

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「おー……やっぱり、アイツ等、強いなー」

「本当デスね~」

 俺とネーヴェリクは、主寝室の壁に映し出されたボーギル殿とエルフ少女のパーティを見つめていた。

「水中の隠し通路ヲあんな方法でアッサリと見つけるなんテ……すごいデス」

 ネーヴェリクが関心したように呟いた。
 普通、生きたダンジョンの罠は時間経過で原状復帰するから、わざわざ水を抜くのは魔力の無駄遣いに近い。それを無駄と思わず平然とやってのけるのだから、なかなか曲者だぞ、あのエルフ少女。
 
「でもまぁ、逆にあの通路は見つけておいて貰わないと困るモノだから良いんだけどな」

 ……とはいえ、結構、腹黒くて意地悪な通路にしたつもりだったんだけどな……むー……
 俺もまだまだだぜ……

 ボーギル殿とエルフ少女の快進撃は止まらない。

「あっ……ゴブローさん!? あぁぁ……痛そうデス」
 
 ネーヴェリクが思わず映し出された映像から目を反らす。
 ヴァンパイアが流血シーンでビビるっていうのも問題ありな気がするのだが、そこはまぁ、ほら、ウチのネーヴェリクですし?

 見れば、確かにゴブローさんの右腕はボーギル殿の剣で切り裂かれ、エルフ少女の炎魔法が、その身を焦がしている。

 ゴブローさんがほぼ一騎打ちに持ち込んだことで、他のゴブリン達はバックヤードに逃げ込んだようだが、バックヤードではプリースト達が必死に回復魔法を飛ばしている。

 ボーギル殿とエルフ少女は、魔物の殲滅よりもダンジョン踏破を狙っているらしく、半死半生のゴブローさんは何とかバックヤードに逃げ込むことに成功したようだ。

 彼等は「まさか、こんな浅い階層でゴブリン・ロードが居るとは」とか「5階までのぬるい環境からの落差が酷い」とか「ここのマスターは『徐々に・段階を追って』が出来ないのか?」とか色々言ってくれている。

「あぁぁ、どうしまショウ、まさかゴブローさん達があんなにお強くなっていたなんテ……」

「どうした? ネーヴェリク」

「ハイ、あの……ネーヴェリクの創ったアンデットさん達デスと、あのお二人を止められないと思いマス。攻撃力的にも、能力的にも、もっと弱いのデ……」

「そうか」

 どうやらダンジョンの難易度的に、1~5階がイージー・モード、6~7階がハード・モード、8~10階がノーマル・モード、の調整になってしまっているようだ。
 ま、これはそのまま俺のスキルで6,7階と8~10階を入れ替えれば済む話なので、侵入者が居ない時にでも調整し直そう。

 ネーヴェリクのいうとおり、ゾンビーやスケルトンたちの群れなど敵ではないとばかりに二人の進行速度は上がっている。

 あ、これ、10階の俺のところまですぐに到達するなぁ……

 ちょっとゴブリン達のバックヤードの方に『回復魔法』の応援に入りたかったんだが……もう一人の俺の方は人間側の病人とケガ人の対応が有って、割と忙しい。
 どうやら、ギルドマスターの留守にちょっとした喧嘩騒ぎがあったのか、ベータやシスター・ウサミン達だけでなく、アルファまでヘルプに駆り出されている。

「ネーヴェリク、悪いがちょっとコアを見ていてくれ。俺本体が一旦ゴブリン達のバックヤードで治療のフォローをしてくる」

「ハイ、かしこまりマシた」

 折角住み着いてくれたゴブリンさん達なのに、最初の戦闘で戦える戦士達が半壊では勿体ないが過ぎるというものだ。彼等には進化分のダンジョン・ポイントの倍は稼ぐくらい長生きして貰わないと割に合わない。

 俺本体がバックヤードでゴブリン達の治療に当たっている頃、別の俺――10階のフロアにはボーギル殿ご一行が到着していた。

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