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61 天使の罠!?
しおりを挟む「あの、シスター・ウサミンのところの神様だろ?」
「まぁ、それはそうなんだけど……ハポネスの場合は、かなり……その、簡略化されてて……中央の『聖皇教会』とは殆ど別物と言って良いんだ」
「ふーん?」
どうやら、本家本元は、もっと戒律にもうるさく面倒くさい宗教団体らしい。
ハポネスではあくまでも「光の精霊」であるスゴピカ様も、そっちでは「絶対神」扱いだ。
「で、その中央府の『聖皇教会』から少し離れた森で、最近『天使降臨』があったらしいんだよ」
「へー?」
「天使降臨があるって事はイコール、勇者か聖女のどちらか……もしくはその両方が天使によって任命されるのよ」
俺がピンと来ていないと感じたのか、カシコちゃんがそう補足してくれた。
「勇者って冒険者連中がレベルを上げて進化するものだと思っていたのだが、違うのか?」
ボーギル曰く、そういう『叩き上げ』も、もちろん存在するらしいのだが、それは単なる『勇者』であり、聖皇教会からの任命を受けている勇者は『光の勇者』なのだそうだ。
どちらであっても高位魔族を屠れる程の力を持っているのが普通。
……正直、違いがわからん。
「で、だ。……旦那、天使に知り合いって居るのか?」
「はァ?」
いや、堕天使なら知り合いに一人居るが、俺は魔王城生まれ魔王城育ちだぞ?
魔王の城に天使が居てたまるか。
確か、天使って魔王城付近の魔界と呼ばれる地域の空気はヤツ等にとって毒って言われるくらい育成が難しい種族だったはずだ。
だからこそ魔界に適応している『堕天使』なんて種族が別に居るくらいだしな。
「例えば、昔、会った事があるとか……」
昔……?
そういわれると確か、ばーちゃんが、自分には守護天使が居るだか、居ただか……そんなことを言ってたような……?
いや、でも、俺は直接、その守護天使と会ったことは無い。
俺が魔王城で働き始めてからは、魔王城に天使が居るなんて話はなかった。
仮に居たとしたら、天使のための環境保全的な意味で、雑用係の俺が知らないはずがない。
こちとら、あの三馬鹿だけじゃなくてヒラ魔族の下着の洗濯まで担当だったんだぞ?
サーキュ配下のサキュバス達にいたっては、「クリーンスライムに任せると型崩れする繊細な素材」だの「肌に合わなくなるから手で洗え」だの、注文がうるさくて、結局、俺はヤツ等の勝負下着の色や形や素材まで熟知させられたんだからな?
空気でさえ害になりかねない繊細種族があそこに居れば、絶対分かる。
「知らんな。つーか、魔族に天使の知り合いが居る訳無いだろ?」
「……だよなぁ……そうなんだが、その降臨された天使様が『カイトシェイド』を勇者にご指名なんだと」
「名前が同じ別人なんじゃねーか?」
「そうなんだが、割と珍しい名前なんだよ『カイトシェイド』って。それで、各街の領主様クラスに、それなりに力のある『カイトシェイド』という人間を探して欲しい、ってお触れが出てて……」
どうやら、俺はこの街で『物凄い回復魔法の使い手』としてちょっとした有名人になっているらしいのだ。
当然、その存在は領主も知っているらしい。
「で、お前さんの存在を知った中央教会から、一度会いたいって話が来たんだよ」
「いや、俺は興味ない」
「ちなみに、その天使様のお名前がルシーファと言うらしいんだが……」
「はァァッ!?」
思わず、変な声が出た。
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