76 / 124
76 アブラタンク派を断罪しよう!
しおりを挟むカシコちゃんが【風魔法】で、厳かな印象の音楽と、爽やかな気分になる花の香りを広場中に広げてゆく。
それに併せ、ルシーファのヤツが懐から取り出した小さな白い花をまき散らす。
なお、これ……元は女性用のトイレに飾られていた花である。
このために、花弁だけをカシコちゃんが毟り取って来たのだそうだ。
その白く小さな花びらが風に舞い、広間に広がる。
「「「おおおおお……」」」
たったこれだけの事なのに、巻き起こるどよめき。
何でも、前回だか、前々回だか知らないけど、花弁をばら撒いた天使が居たんだと。
しかも、その時任命された聖女が、大魔王を封印しているらしく、この行動は縁起が良いと伝承があるそうな。
……あほくさ……と、思わなくも無いが、多くの同族を取り纏める以上、それなりに演出が必要なのは、俺もルシーファのヤツもよく分かっている。
ほら、一応、俺達『魔王軍四天王』でしたし?
神官たちが静まったのを確認して、厳かにルシーファのヤツが口を開く。
「いと高き天にまします、我らが父・スゴピカ様の命を受け、わたくし、光の天使ルシーファは、勇者・カイトシェイドの守護天使となることをここに宣言いたします」
「「おおおおおお……!!」」」
堂々とした態度に凛とした声色。
流石、ルシーファ……コイツ、こーいう演説、得意だったもんな……
ちゃっかり一人称も「わたくし」とか言ってるし。それだけで雰囲気ちょっと変わるもんな。
まさか、これが、空も飛べないヘッポコ天使とは誰も思うまい。
「そんな……! では、何故あのような小汚いガキ……ごほん、あのような幼い姿で降臨されたのです!?」
アブラタンクのヤツが脂汗交じりの蒼白な顔で叫ぶ。
その様子を、ルシーファは、慈愛の微笑みを浮かべて口を開いた。
「今回、わたくしは、通常より幼い姿・異なる降臨場所・そして勇者への情報も、数少ないものしか伝えませんでした……ですが、これは全て父なる精霊・スゴピカ様の命によるもの……」
このセリフは、俺達の台本通り。
もう、一切合切全部の責任をスゴピカのヤツになすりつけることに決めたのだ。
「な、なんと……」「おお……」「だが、何故そんな……?」
「我らが父・スゴピカ様は憂いておいでです。聖地とも呼ばれているこの『中央神殿』が、真の教えを忘れ去っていることを……」
そう言って胸元で手を握り締め、俯くルシーファ。
長いまつげに光が反射して、ちょっと涙ぐんでいるように見えなくもない。
光の加減で虹色に輝くプラチナブロンドの長いストレートヘアが無駄なくらい絵になっている。
神官達の中には何やら感動で瞳を潤ませているヤツまで居るぞ。
……なるほど、カシコちゃんのナチュラルメイク術はすごいな。
そのルシーファの一言に、マチョリダ一派が鬼の首を取ったように口々にアブラタンク派への不満を一斉に口にする。
曰く、「修行の場に異性を連れ込んで祈りを忘れ連日いかがわしい行為にふけっている」
曰く、「神殿の運営資金を横領し、私腹を肥やしている」
曰く、「賄賂を贈らない生真面目な神官達に難癖をつけ僻地へと異動させている」
「ええい!! そんな事は出鱈目だっ!! 全部嘘だ! 何が天使だ! 第一、私の【嘘発見】のスキルでは……ッ!」
ああ、そう言えば、アイツそんな能力が有ったな。
「貴様のスキルなど信用できるか!」「そうだ、そうだ!!」「天使様が嘘を言うはずがない!」「スキルが有るからって、自分の都合の良いよう捏造しているんだ!!」
しかし、案の定……神官たちから信用されていない。
いやー、気の毒ダネー、ヤツは本当の事を言っているのにネー。
せっかくのレアスキル……これが信用されたら、この茶番はアウトだったはずなのに。
うん。日頃の行いって大事ダネー。
「くっ……た、確かに私の行動が誤解されやすいことは承知しております」
アブラタンクはしゃらり、と宝石だらけの杖を握り締め、叫び声をあげる。
おお、どうやら、コイツもこっちの茶番に乗った上で論破しないとダメだと気づいたようだ。
「しかしながらッ! 組織の運営とは奇麗事だけで進むものではございません! 金で態度を変える商人共! 欲望が満たされねば神をも愚弄する愚民共! そんな輩の欲求を多少なりとも満たしてやらねば! 信仰で腹は膨れぬのです!!」
信仰で腹は膨れない、って部分だけは同意できるな。
「それに、この『カイトシェイド』は、ハポネスとか言うふざけた街でしか魔法が使えない、と! そんな輩を恐れ多くも誉有る『光の勇者』などに任命したところで、どうやって東西南北に居を構えていると言われる魔王共を倒すのです!」
よし! その言葉を待ってたぜ!!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~
軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。
そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。
クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。
一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる