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101 【魔王side】魔王出陣!
しおりを挟む「くそっ!! あの小男めッ! 余を……余を馬鹿にしおって!!!」
魔王サタナスは目を血走らせ足を踏み鳴らす。
よもや、カイトシェイドのヤツが強制的に呼び出される事を想定し、身代わりとして自身の身体を切断して保管しているとは……!
召喚魔法は、指定した者が複数存在する場合、魔力抵抗の低い方が自動的に選択される仕組みだ。
【強制召喚】自体、大きな代償を必要とするので、あまりメジャーとは言えない魔術である。
だが、これは発動さえすれば、一気に戦況をひっくり返す切り札と成り得る術とも言える。そのため、自身の魔導クローン体などをデコイ用として準備しておく用意周到な魔族も、ごくごく稀に存在する。
だが、まさか己の左腕を……しかもこんなに大量に……!
一体、あの男は何を考えているのだ!?
ヌルヌルと掴みどころがなく、飄々として……そして、まるで蛇のように狡賢い男だ。
実の父である先代魔王も飄々とした男であった。
その事実が余計、腹立たしい。
せめてもの救いは、カイトシェイドの見た目が、祖母である人間にそっくりで、先代魔王のような美しい角も、翼も無く……そして、自分自身とも一切、似ていないところだ。
かなり手痛い代償を払った【強制召喚】が失敗したあの日、魔王サタナスは怒り狂って手当たり次第に周りを破壊したものの、すでにその場に八つ当たりできるような部下も無く……
ただ、ただ、無駄に自身の居城である魔王城を破壊しただけとなっていた。
ここ、魔王城の主は、当然、魔王サタナスである。
この広大な魔王城から吸収された魔力の全ては基本的にサタナスの元へと送られる。
本来、自分の魔王城を傷つけることは、害は有れども利は無い。
だが、最近は、その供給路も全く管理されていないため貧弱になり、自身の保有魔力量が、カイトシェイドの居た最盛期から比べると驚くほど落ちているのだ。
魔王サタナスはその事に気づけない。
【強制召喚】の失敗は、それも大きな理由の一つだ。
だが、魔王サタナスのプライドが『失敗』という事実を認めることを拒否している。
「……まぁ、良い……余はカイトシェイドのように巣穴に籠って出てこれないような軟弱者ではない」
実際、サタナスはカイトシェイドと戦って敗れた訳では無いのは事実。
「ハポネス、と言ったな……よかろう」
そう独り言ちると、引き攣ったように唇に笑みを浮かべた。
「……余、自ら蹂躙してやろう! そのハポネスとやらをッ!!」
魔王サタナスは背中の黒いコウモリのような美しい漆黒の6枚羽根を広げると、魔王城から飛び立った。
魔王の力を持ってすれば、多少の距離など問題にはならない。
しばらく飛行をつづけると、やがて眼下には目指す都市が見えて来る。
「くくく……ははは! この距離からの攻撃を防ぐ術などあるまい!? 終わりだ、カイトシェイドッ!」
魔王サタナスはルシーファから奪った能力である超・遠距離型攻撃呪文を発動させた。
「滅ぶがいい! 【浄化光弾】!!」
ピカッ!!
天空から光の刃がハポネスの町へと降り注ぐ。
これで、街の半分は消し飛び、逆上したあのアナグマ男が飛び出してくるはずで……
ピカッ!!
だが、魔王サタナスが勝利を確信した笑みを嘲笑うように、先ほど自身が放ったものと全く同じ魔法がハポネスの町から、サタナスに向かって降り注いだ。
まるで、何者かが、己の呪文を反射したかのように。
「ぐっ!? ……ぐおおぉぉぉっ!?」
サタナスは自分が放ったはずの【浄化光弾】をその身に受けながら、戦闘が終わったのではなく、今、まさに始まったのだ、と悟った。
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