カオスな日常から抜粋する

骸梟

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夏といえばホラーです。

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これは、幼稚園から保育園に移った頃の話です。
幼稚園の方から話をしますと、最近は少なくなりましたがお寺の中に幼稚園が併設するスタイルでして、子供たちが遊んでいる遊具のすぐ隣に墓石や卒塔婆そとば佇んでたたずいました。
これも日常でしたから慣れると大した事はありませんが、一つだけ怖かったのはある恒例行事です。
それというのも、お寺が年に一度行う掛け軸の虫干しの際、『どうせだから』と言って幼稚園の子供たちを集めて掛け軸の鑑賞会を開いていました。しかしその絵というのが、よく言われる『幽霊画』。
余りにも忠実に描かれたその姿に、毎年泣きながら寺の本堂を帰ってくる子供たちが行事のセットだった事を覚えています(かく言う私も半泣きでしたが)。


そのような恐怖の(?)幼稚園から保育園に移って一年も経たないある冬の日、保育園への送り迎えで私を車に乗せる準備をしていた母は、ペットボトルにお湯を注いでいました。
冬場の朝というのは結露でフロントガラスが凍り付きますから、毎朝手動で溶かしに向かわなくてはなりません。
流石に、冷えきった車内で子供を待たせる訳にはいかないと思った母は、私を住んでいた部屋の前に残して階下に降りていきました。
その頃住んでいた所は何処にでもあるような普通の団地の五階。その時は多分空をボーッと眺めていたと思います。
ある瞬間から突然体の自由がかなくなり、意識はあるのですが体だけがまるで誰かに操られている、そんな状態になったのです。
そのままフラフラと近くの階段についていた手摺てすりをよじ登り始めました。
その当時は4~5歳くらいで身長的に腕は届くとしても、よじ登れる力なんてありません。
そう、と思っていたのにもかかわらずその時はまるで目に見えない何かに突き動かされる様に、手摺りを簡単に登り切り、狭い足場を器用に使って立ち上がっていました。
ついには体を空中に投げ出し腕さえ離してしまえば地上に真っ逆さま…この時ばかりは子供ながらに死を覚悟しました。
  ・
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宙ぶらりんになってどれだけ時間が経ったのか、母の戻ってくる気配はせず、しかしながら一向いっこうに落ちる気配もしません。
不思議に思っていると今度は背中の方から私の体を押し戻す、誰かの両腕の感覚がします。
手摺りを登ったのとは逆であれよあれよという間に階段の中に引っ張りこまれ、私はどうしたらいいのか判断がつかないまま、階段の踊り場に一人ポツンと突っ立っていました。
「準備できたよー」
階下から聞こえてきた母の声にハッと我に返った私は、この出来事を母に話さないまま現在まで至ります。
正直この事件を母でなくとも、その当時誰かに話していれば、そう今でも後悔しています。




























あのようなが待っていたのですから。
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