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12.行動開始!
しおりを挟む「ふむふむ、なるほどな」
俺は木の上から目の前で起こっている戦闘の様子を観察していた。
距離にして大体500m前後と言ったところか。
しかも戦場全体が見渡せるのでこれほど戦況把握をするために適した場所はない。
完璧な位置取りだ。
「やはり敵軍の数は最初に視認した通り多いな」
バンガード軍側と比べるとその違いは顕著に出ていた。物量差では圧倒的に敵側に軍配が上がる。
でも――
「兵の動きに無駄がない。ライドさんとセシアの指揮による影響だろうか?」
バンガード軍側の兵の動きがかなり良かった。混戦でも陣形を乱さずに相手との戦闘を繰り広げている。
兵力で負けているとはいえ、戦況は今のところバンガード軍側が優勢だった。
「敵の数も徐々にだが減っていっている。戦闘終了も時間の問題か」
この状況でバンガード軍側が劣勢を強いられる可能性を挙げるならば第三勢力の介入か、強力な戦力の出現、兵の疲労などの身体的問題の三つだろう。
だが戦況を見る限り三つ目はないとみた。なぜなら戦闘の動きがかなりゆっくりだからだ。
魔獣は次から次へと出てくるがどれも動きがかなり遅い。
普通ならもっと機敏な動きをするはずの魔獣もただ街の方へ向かってゆっくりと突き進んでいくだけだった。
まるで自分たちの意志を持っていないかのように。
「意志を持たない……いや、ちょっと待てよ」
俺は一つ気になる点を見つけ出す。それはどの魔獣も動きが単調であること。
それとあんな多種多様な魔獣が軍勢を作って襲ってくるなんてあり得るだろうか。
冷静に考えればおかしな話だ。それに戦闘を見る限り、魔獣たちの様子にも違和感があった。
「これはもしかすると……」
これらの分析を元に俺は一つの結論を導き出す。
それは――
「誰かが遠方で彼らを操っている可能性が高いな」
魔獣たちの遠隔操作。別にこれはあり得ない話じゃない。
俺の生きていた世界でも魔獣を調教し、操る者がいた。この世界にもそういったような輩がいると仮定すれば可能性は十分にあり得る。
だが問題はそういった奴らをどう探し出すかというところ。
「下手に森の中を駆けまわるのは得策ではない。だとすれば――」
――ゴォォォォォォォォォォォォ!
突如として響き渡る大きな音。
そしてその轟音と共に現れるは――
「なんだ、あれは」
目の前には見たこともない紅き巨人。前に戦闘をした角の生えた黒巨人とは比にならないくらいの大きさだった。
周りの魔獣と比べるとその大きさは一目瞭然。
そして魔力の流動を感じ取るにかなり膨大な魔力を持っていると推測できる。
「やはり誰かが裏で糸を……」
その紅き巨人は現れた後、すぐに戦闘を開始。前に戦った黒巨人と似た巨大な斧を用いた力任せの攻撃で次々と兵たちをなぎ倒していく。
兵たちはどんどん街の方へと後退、陣形は見事に崩される。
「マズイ、このままじゃ……」
戦況はガラリと一転し、一気に窮地へ。巨人はその巨体を揺らしながら街の方へと侵攻していく。
(まずはあいつを食い止める。黒幕はその後だ)
俺はすぐに木から降りると、次なる行動へと移った。
♦
「前衛部隊、後退してきます!」
伝達兵が指揮官のセシアとライドの所へ駆け寄ってくる。
万一のことを想定し、前衛部隊隊長であるセシアが最終防衛ラインまで下がってきた所だった。
「やはり前線を下げるしかないか。まさかあんな大物が出てくるとはな」
「真紅の巨王。超危険指定級モンスターがなぜこんなところに……」
「恐らく召喚術による召喚だろう。かなり錬度の高い召喚士なら制約はあるもののああいった大物を呼び出せることができるはずだ。ごくわずかな者しか扱えないだろうがな」
「ということはつまり誰かが裏であれを操っていると?……」
「そういうことになる」
戦場に重苦しい空気が漂う。このままでは時間の問題、何か先を見据える一手を打たないと自分たちも街も助からないのは明らかだった。
「どうしますか騎士長」
「あれを使うしかないだろう。こんな時のための防御策だ」
「大規模結界ですか?」
「ああ」
コクリと頷くライド。
そしてセシアはそれを聞くなりニヤリとし、
「万が一のことを想定して準備をしておきました。もうすぐ展開可能です」
「さすがだな。でもいいのか?」
「何がです?」
「死ぬかもしれんぞ。あいつを止めるには倒すかあれを操る者を排除しなければならないし、完全に結界が張られれば街へはもう逃げられない。それでもいいのか?」
ライドは真剣な顔をしてセシアにそう告げる。
だがセシアは一瞬たりとも迷うような表情を見せることはなく、
「死ぬ覚悟なんて戦場に出る時から固まっていますよ。でも私は、そう簡単に死ぬ気はありませんけどね」
まだ成人にも満たない少女とは到底思えないくらいの勇敢な心構え。
ライドもそれを見ると思わずフッと笑ってしまう。
「そうか。さすがは団の未来を担う前衛部隊長様、勇ましい覚悟だ」
「騎士長閣下にそう言ってもらえて光栄です。これでさらに仕事に精が出せそうですよ」
「相変わらずお世辞を言うのは達者だな」
「そんなことはないですって。ぜーんぶ本当のことを言っているだけです」
「はいはい、続きは全部終わってから聞くよ。じゃあ、準備はいいな? 行くぞ!」
「はい!」
馬を操り、二人の屈強な騎士は巨人へと向かって前進する。
その並外れた不撓不屈の精神を盾にして。
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すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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