元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第1章 おっさん、魔術講師になる

第8話 前代未聞の魔術講師



 ―――ドカァァァァァァン!

 物凄い轟音が学園全体に響き渡った。
 最低位魔術とは思えない絶大な威力に周りの者は声も出ない。

「ざっとこんな感じだ。どうだ? 自分たちと比べたら違うだろ?」

 圧倒的な力を見せつけられ、さっきまで盛大に喧嘩を売っていたガルシアでさえも黙ってしまった。

「あの……先生」

 誰よりも一番最初に口を開いたのはフィオナだった。
 俺はフィオナの方を向く。

「先生って一体何をされていた人なんですか? あれは最低位魔術の枠を明らかに越えています」

 俺は悩むこともなくすぐに答える。

「元々は商人だ。キャスターとの関係はない」
「しょ、商人……!?」

 フィオナは目を丸くする。
 自分で言うのもあれなんだが、結構きつい設定だったかなと思っている。
 商人がいきなり魔術講師へと転職していきなりこんな魔術を放てるわけがない。
 実際に今の時代の商人に魔術学校に通っていたというケースは少なく、そもそも魔術を使える人が少ない。

 と、言うとガルシアが、

「そんなはずあるかよ! あれが商人が出せる魔術か!」

 仰るとおりである。
 だが、このままでは話が進まないので次の話題へと移る。 

「まぁ商人の話はいいとして、オレがお前たちにこれを見せたのには理由がある」
「……それはどういうことですか?」

 フィオナの瞳を見ると聞きたいという思いがすごく伝わってくる。
 俺は話を続ける。

「お前たちはこの魔術のランクアップを図るために何をした?」
「それは……ひたすら魔術書を読み、その知識から自分なりに応用したんです」
「……そうか。皆もそうなのか」

 他の者もこう聞かれるとコクっと縦に頷く。
 
 そう聞くと俺は深い溜息をつきながら、

「はぁ……少しは成長したのかと思ったんだがな……」
「おい、どういうことだ?」
 
 またもガルシアが気に食わないと言わんばかりの表情でキッと睨み付けてくる。

(ホントに礼儀のなっていない奴だな。これがトップ30以内なんてもう既に学園自体末期なんじゃねぇか?)

 心の中で愚痴を言いつつも俺は指導の続きをする。

「いいか、今回はお前らの努力で微小ながら感心をしたから特別に教えてやるが次はないぞ」

 これだけは念入りに言っておく。
 なぜなら二度と隅から隅まで教えるつもりはないからだ。面倒くさいし。

 こう言うと皆、これでもかというくらい真剣な顔をして耳を傾ける。
 人付き合いが苦手な俺からしたら大多数の視線がこっちに来るだけでもきつい。
 俺は話を手っ取り早く進めることにする。

「まず一つ言う。お前たちは今すぐ頭の中から学術書の知識を捨てろ」


「……!?」

 何を言ってるんだという表情が目に見えてわかる。
 確かにごく普通の魔術講師ならこんなことは絶対に言わないだろう。
 何せ現代の魔術講師もこいつらと同様に厚い紙の本で教えられてきたのだから。

「知識を捨てろだと!? 何を言っていやがる!」

 ガルシア一人だけが食ってかかってくる。
 よほど俺に対しての評価が低いのかなんだか知らないが鬱陶しい。

「おい、お前は一回黙ってろ」

 一言言うとガルシアは、

「なん……だと……?」

 今にも襲い掛かってきそうな感じだ。
 すぐにフィオナが止めに入ろうとするが俺がそれを拒否する。

「フィオナ、止めなくていい」
「……ですが」

 俺はガルシアの目を見て、

「おい、お前はなぜキャスターを志す? 他にも錬金術師アルケミスト鍛冶師ブラックスミスなどの進路もあるだろう」

 そう、この学園は総合魔術学園。総合という名は嘘でもなんでもなく、専攻という形で分野が区分されている。
 もちろん共通の教養として全専攻で学ぶものもあるのだが、その中でも特に深く学習したい分野ということで専攻が設けられている。
 分野は多岐に渡っており、錬金術専攻、鍛冶師専攻など様々だ。
 こういうこともあって学園内は様々な生徒や講師で入り乱れている。

 俺はガルシアにそのような多岐に渡る分野の中でなぜ、魔術専攻で志望者の多いキャスターを目指しているのかを聞いたわけだ。

 するとガルシアは、

「決まっている。キャスターとしてオレは強くなりてぇんだ」
「ほう、なぜ強さを欲する?」

 ガルシアの顔は険しい表情へと変わっていく。

「越えたいやつがいるんだ。だからこそオレは誰にも負けない力を手に入れるためにここへ来た」

(ふーん。ただの暴言野郎かと思ったが、それなりのものは持っているみたいだな)

 これを聞いて俺は、

「だったらオレの話を黙って聞け」
「なに?」
「強くなりたいんだろ? ならオレの話を聞け」

 ガルシアは俺が今、マジメに教えようとしていることにようやく気付いたようだ。
 流石のガルシアもここまで自信満々に言われれば何も言うことがない。

「分かった……聞いてやる」
「よし……」

 そんなわけで話を振り出しに戻す。

「改めて言うが知識を捨てろ。そして感覚センスを掴め」
「セン……ス?」
「ああ、そうだ。感覚センスだ」

 イマイチ分かっていないという表情がチラホラ見える。
 まぁ実感できんのも無理はない。
 より分かりやすく説明できるよう心がける。

「お前たちは学術書という一つの概念に囚われ過ぎなのだ。なぜあんな紙の本一冊で全てを学ぼうとする?」
「それは……魔術書には嘘は書いてないからではないですか? 私は魔術書で知識を学び、応用して自分の能力として吸収するものだと思っています」

 フィーネは自分の意見をはっきりと言う。
 だが俺はそれを否定する。

「そうか、じゃあその魔術書とやらで学んだことのない俺はどうやってあそこまでの魔術を身に付けたんだろうな?」
「えっ……どういうことですか?」
「俺は生まれてから現在まで魔術に関する書物など真面目に読んだことはない。むしろ不必要な物だった」

 そうだ。俺は学術書など読んだことはない。
 なぜ人々はあんな書物を絶対視するのだろうか。
 学術書も所詮は人間の書いた物。神から授かったわけではない。
 
 偉大なキャスターが書いたから、理論的に当てはまるから、そんな理由で人々は学術書を信じ切ってしまうわけだ。
 現代のキャスターたちは一から全てを学ぼうとしない。
 応用と言っても元となる知識は一つしかないわけで結果的にたった一つの答えから自分の都合のいいように変換しているだけなのだ。

 そう思えば、神魔団の奴らはある意味特別だった。
 彼らも俺と同じような思想を持っていたからだ。
 だからこそ人の上に立つ実力者しかいなかったのだろう。

 俺は話を進める。

「話していても分からないだろう。ガルシア」
「なんだ?」

 俺はこっちに来るようガルシアに指示を出す。
 そして手を翳すよう伝える。

「まず一つ。感覚を掴むにあたって大事なのは記憶メモリーだ」
記憶メモリー……?」
「例えば、魔術には射程範囲があるよな? ガルシア、ここからターゲットに向かって≪ファイアーボール≫を放ってみろ」
「は? ここでか? 届かないぞ」
「ああ、そうだ。早くしろ」
「ちっ……分かったよ」

 舌打ちしながらもガルシアは俺の命令に従う。
 ここで俺は放った瞬間を記憶するよう伝えた。

「≪ファイアボール≫!」

 放った≪ファイアボール≫は予想通りターゲットには届かず、蒸発した。

「記憶したな? じゃあ次はさっきの感覚とは別にもっと遠くに飛ばすよう心がけてみろ」
「遠くに飛ばす……分かった」

 ガルシアは深く深呼吸をする。
 遠くに遠くに飛ばすことだけに重点を置き、一声。

「≪ファイアボール≫!」

 すると先ほどの≪ファイアボール≫とは違い、ぐんぐんと飛距離が伸びていく。
 そして見事、ターゲットに命中。

「すごい……完全に射程外なのに命中した……」

 フィオナは真新しいものを見るような目でその瞬間を目に焼き付けた。

「感じたか?」
「ああ、すげぇ……今まで感じたことのない感覚だった。こう、体全体が前に出るような……」

 ガルシアもこれには驚きのあまり手が震える。

「そうだそれが感覚センスだ。全然違うだろ?」
「全く違う……別の魔術を放っているみたいだった」
「そういうことだ。魔術なんて至って単純な物だ。たったこれだけでお前たちの言う学術書の常識なんて簡単に覆せる」

 俺はさらに具体例を挙げる。

「ちなみに慣れてくれば……≪ファイアーボール≫」

 先ほど放った高火力≪ファイアーボール≫や通常なら不可能な魔術の連続発動でマシンガンのように≪ファイアーボール≫を出したりしてみる。

「こんなことができるわけだ」

 前代未聞の出来事にもはや誰も俺に対して反論することもなくなった。
 数日前と違って表情の輝きが全然違う。

「さらにだ。もっと慣れてくれば……」

 俺はラストに詠唱無しで≪ファイアーボール≫を放つ。

「―――そんなバカな。詠唱無しで……」
「―――人間じゃないわ」
「―――もしかしたらあの人、物凄い人なのかもしれない」

 こんな会話がクラス内から聞こえてくる。
 レーナもフィオナもガルシアも同じように俺に対する見方が変わったようだ。

「すごいです先生!」
「ああ、さすがに何も言えねぇわ」
「レイナード先生、感激しました」

 少しざわついてきた。

(やりすぎたか……)

 後悔するも悪い気持ちはしなかった。俺とて性格が心の底からひん曲がっているわけではない。
 称賛されればそれなりの気持ちが湧く。

 だが……あまりにもうるさいので、

「お前ら少しは黙れ、うるさすぎる」
「す、すみません。つい」

 フィオナを始め、クラス全体が一気に静かになる。

「分かったらやってみろ。今日は特別授業だ」
「はい!」

 その一部始終を見ていた学園長のフィーネは、

「なーんだ、結構やる気じゃんレイナード。評判悪いから見に来たけど心配ないみたいね」

 陰から見ていたフィーネはそっとその場を立ち去った。
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