元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第2章 おっさん、旧友と会う

第22話 二人の魔剣使い


「ああ~やっと座れる」

 椅子に座った俺は乳酸がたまった脹脛ふくらはぎを優しく揉み始める。
 
「すみません、レイナード。こんなにかかるとは思わなかったんで……」

 レーナも頻繁にくるわけではないそうで時間の認識が薄かったようだ。
 俺は気にするなと身振りで答える。

「それにしてもあー……レイナードが来るとは思ってもいなかったわ」

 紅茶を運びながらセントレアが言う。
 そして紅茶を各人の前に置いていく。
 
「俺も驚きだ。まさかこんな所にいたとはな」

 出された紅茶を飲み、一息ついて答える。

「あ、あの……二人とレイナードはどのような仲なのですか?」
「ただの学友だ」と俺。

 実際は違う。
 ”こいつら”とは神魔団に入って初めて面を会わせた。
 いつも笑顔で明るいが変態的要素を含んだ姉のセントレアといつも無表情で掴みどころのない性格の弟レザードという相反する性格を持つ双子の姉弟という認識だった。
 
 だが、さすがは神魔団の一員。魔剣を使わせたら常人では考えられないほどの実力を発揮する。
 正直、この二人に匹敵する魔剣使いなどこの世には存在しないとまで思っている。
 それほど彼らの魔剣使いとしての能力は卓越しているのだ。

 元魔剣を作っていた大貴族の娘とその使い手……。
 お互いが相手の事をどこまで知っているか定かではないが、ある意味運命的と言えよう。
 悪い言い方で言えばレーナは魔剣と言う呪いの言葉から解放されない運命なのかもしれない。

「レイナードもあれだが、レーナも元気そうで何よりだ」
「あ、はい……お陰様で」

 なんとなくぎこちない空気になる。
 数年一緒にいて相手の事をあまり知らないという理由が分かった気がする。

「学園はもう慣れたのか?」
「あ、はい。沢山の方が支えてくださって楽しくやれています」
「そうか、良かった……」

 レザードの口元がわずかに歪む。
 滅多に笑みを浮かべなかったあいつが……変わったもんだな。

「あ、そういえば好きな人とかもうできたの~?」

 セントレアがニヤニヤしながらレーナに聞く。
 相変わらず気持ち悪いなこのドリルは……
 俺は心の中でそう思う。

「い、いえ! まだそんな……」

 レーナは顔を真っ赤にしながらあたふたし始める。

「え~ホント~? あ、レイナードとかはどうなの?」
「おい、止めろ」

 俺はすぐさまセントレアに釘を打つ。
 
 するとレーナはトマトのように顔を赤らめて、

「そ、そんな! 私なんかがレイナードと……釣り合わないですよっ!」
「あら、釣り合えばいいの?」
「あ、いや……そういうことじゃ……」

 困り果てたレーナは俺の方に目線を合わせてくる。

(なんだ、SOSサインか?)

 助けてほしい……というような表情をされたので助けることにする。

「おい、セントレア。その辺にしておけ」
「は~い。分かりましたよ~」

 わざとらしい返答。

 なんだろうな、こいつといるとすげぇイライラする。
 いい年こいといてこの調子なのもいささか問題だろ。

「でもまぁ……レイナードに関して素はひねくれている所はあるがいい奴だ。視野にいれておいてもらいたい」
「おい、お前は何様だ」

 まるで自分の親かのようなレザードの発言にツッコミを入れる。

「そうね~私も隙があればレイナードとあんなことやこんなことしたいのに~」
「おいドリル、これ以上調子こいたこと言っていると息の根を止めるぞ」
「まぁこういうSな所がまたいいんだけどねぇ~」
「っ……!」

 イライラする以前にこいつと同じ空間にいるだけで疲れる。
 俺から言わせれば、もう一種の特殊能力だ。
 こんなのが『撃滅の黄金女帝』と呼ばれているなんて……爆笑物である。

「でもレーナ。彼といて苦痛に思ったりしないの? 正直身が持たないと思うわ」
「おい……」

 先ほどとは手のひらを反すような意見がセントレアの口から出る。

「そんなこと思ったことはないです。むしろ尊敬していますよ」
「ふーん、例えば?」

 この質問にレーナはモジモジしながら答える。

「例えばその……私の話を終わるまで真面目に聞き入れてくれたこととか……」
「ほう……他人には基本的に興味を示さない男が……珍しい」
「ちっ……」

 言いたい放題である。
 でもまぁ確かに神魔団みたいな特別な存在の奴を抜きにして他人とこんなにも話したのは初めてかもしれない。
 関わることを避けてきたのに……レーナといる時はそうは思わない。実に不思議である。

「この前、私の過去の事を話したんです。正直、どんな反応されるか怖い部分はありました。でもレイナードは最後まで私の話を真剣に聞いてくれたんです」
「へぇ~珍しいこともあるものねぇ~」

 ったく、こいつらの俺に対する認識はどうなってるんだ。
 人と関わることに関してはそんなに低くみられていたということか?
 複雑な感情が俺の中で渦巻く。

「だから一緒にいて苦痛とは思ったことはないですよ。むしろ優しく、温かくて居心地がいいくらいです」

(本人がいる前でよく堂々と言えるな……)

 こう思ったが、悪い気持ちはしなかった。
 むしろそういう風な感情を抱いていなかったことを知ることができて安心する。

「なるほどねぇ……よかったじゃないのレイナード。レーナにここまで言わせるのはすごいことよ」
「ま、まぁ……悪い気はしてなくて安心した……」

 さすがに堂々と言いすぎたことを自覚したのかレーナは無言になってしまう。
 だが、レーナの心情を把握できたのはデカい。
 悪い印象を持たれたら面倒だからな。

「あぁ……」

 少し眠くなってきた。
 俺はセントレアに少し仮眠したいと提案する。

「なら奥の寝室を使うといいわ。誰も使っていないから」
「分かった。すまないレーナ、少し休ませてもらう」
「あ、はい。分かりました」

 
 こう言うと俺はその場から去り、案内された寝室の方へ向かった。
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