元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第2章 おっさん、旧友と会う

第26話 突然の再開


 アルフォート家を訪れて一週間が経った。
 俺はいつものように学園へと出向くと正門前に人だかりができていた。

「ん? なんだ?」

 俺は人混みの方へ近づいていく。

「―――おい、見ろよ。あの黒髪」
「―――ああ、すげぇ綺麗だよな」
「―――おまけにめっちゃ美人! どこの国の人なんだ?」

(黒髪? 美人?)

 人混みをかき分け、やっとのことで前の方へ来ることができた。
 そして人だかりの元凶である黒髪の女を捉える。

「あいつは……」

 すると偶然、その女と目が合う。

「あ、あなたは……!」

 そういうと彼女は俺の方へ歩み寄ってくる。
 そして、

 ―――ガシッ!

「ようやく見つけました。私の勇者様!」
「はぁー!?」

 いきなり抱きつかれ、思いもよらない言葉が放たれる。
 周りの生徒たちは思わぬ出来事に歓喜に湧く。

「―――あの人、レイナード先生の恋人!?」
「―――いいなぁ……」

 まずい、おおごとになってきた。
 俺はすぐさま振り払い、

「お、おい。何の話だ」
「覚えていないのですか?」

 彼女は悲しそうな目をしながらこちらを見る。

(どこかで会ったか?)
 
 俺は彼女を凝視する。
 確かに会ったことがあるようなないような……
 いや……記憶がないな。

「あ、あの……あまり見られると恥ずかしいのですが……」
 
 彼女が顔を真っ赤にしながらボソッと言う。

「ん? ああ、すまない」

 考え込んでしまうとつい自分の世界に入り込んでしまう。

「それで……思い出しましたか?」
「ああ……すまん、思い出せない」

 分かりやすく残念そうな顔をする。
 というかどこかで会っただろうか。
 ここまで特徴のある黒髪があればさすがに印象に残るはずだ。

 だが、心当たりはない。

 すると彼女は、

「この前、王都の街で助けていただいたハルカ・スメラギです。覚えていませんか?」
「王都の街……あ、ローブの男たちに襲われていたあの……」
「そうです。私です」

 俺はポンっと手を叩いて納得する。
 確かにあの時も黒髪の女だった。
 顔はしっかりとは覚えていないが、髪を結っていたのはなんとなく記憶にある。

「思い出していただけましたか?」
「ああ。それにしてもあの時より雰囲気が違うな」
「そうでしょうか?」

 俺の中では髪を結って眼鏡をかけていたという記憶がある。
 だが、その二つの要素を外しただけでここまで印象深い雰囲気に変わるとは……
 人は分からないものである。

 と、相手の正体が分かったところで俺は彼女に問う。

「それで、君はここで何をしているんだ?」
「今日から魔術講師としてこちらにお世話になることになったんです」
「え?」

 俺は疑問を抱く。

「いや、この前襲われていた時に職場がどうとか言っていなかったか?」
「あー、それは……その、辞めてきました」
「辞めた?」

 首を傾げる俺に、

「ま、まぁ細かい話は後でします。とりあえず此処にいると生徒たちの渦に飲まれてしまいます」

 気がつけば、人だかりが先の倍に増えていた。
 俺たちは逃げるようにして学園内に入っていった。

 俺はいつものように講師室のデスクにドスッと座り、コーヒーを飲む。

「はぁ……今日も一日始まるのか。しんど」
「まぁまぁ、そう言わずに」

 いつもと違うのは、レーナ以外の異性が隣にいることくらいだ。

「それで辞めたってどういうことだ?」

 さっきの話の続きに戻る。

「はい。私はある組織で治癒魔術の研究を行っていたものです」
「研究者か……」
「そうです。ですがこの前、事件は起こりました」

 彼女は水を含み、改めて説明を始める。

「私は治癒魔術の研究のため、財団のある重要書類を持って外に出ました。ですがその行為が掟破りという形で捉えられ、追われる身となったのです」
「それは許可を取っての行為なのか?」
「はい、しっかりと書類を管理する者には許可を取ってありました。ですが総帥は私の事をいいように思っていなかったのかこれを口述に殺そうと思っていたようです」
「関係がよくなかったのか?」

 彼女は表情は一気に暗くなる。

「いや……言いたくなければ無理しなくてもいいが」
「あ、いえ、そういうわけじゃ……」

 なんとも言えない暗いムードの中、レーナがやって来る。

「おはようございます、レイナード。あれ? その方は……」
「おはようございます。この前はお世話になりました」

 するとレーナはハッと思いついたような表情をする。

「あ! この前王都でお会いした……」
「あ、はい! ハルカ・スメラギと申します」
「レーナ・アルフォートです。まさかこんな所で再会できるなんて……」

 二人はお互いペコペコとお辞儀をする。

「それにしてもよく気がついたな」
「え? 気づかなかったの? 確かに雰囲気は多少違うけど……」

 逆になんで? みたいな顔をされる。
 多少どころではない。全くの別人だ。
 ここまで印象深かったらさすがの俺も忘れることはない。

 同性同士だからこそ分かる何かがあるのだろうか?

「そんなに雰囲気が違いますか?」

 この問いに俺はサラッと答える。

「ああ、あの時よりも美人に見える」
「え……」

 ハルカは顔が蒸発したかのように真っ赤になる。

「そ、そそそんなことないです! 私は、あの時のビシッとした感じの方がいいと思ったんですが、初日から堅苦しい雰囲気を出すと、その……あまり印象良くないかなって……」
「いや、オレはそっちの方がいいと思うぞ。柔軟な感じがして接しやすい」
「あ、ありがとうございます……」

 真っ赤に顔を染めたハルカは目を反らし、下を向く。

 と、ここで、

 ―――ガラガラ。

「皆さん、おはようございます」

 例の如く講師統括のエルナーが入ってくる。
 そしていつものように業務内容を確認し、諸連絡へと移る。

「今日は皆さんに新しい講師の紹介をしたいと思います。ハルカさん」
「あ、はい!」

 ハルカは講師陣の前に出て、自己紹介をする。
 こう見ると数か月前のことを思い出す。俺が魔術講師としてここへ初めて来たときのことだ。

 今じゃもう、この空間に慣れてしまった自分がいる。
 当時では想像ができないことだ。

「こう見るとレイナードが初めて学園に来たことを思い出しますね」

 レーナも同じようなことを思っていたようだ。

「ああ、そうだな」

 自己紹介が終わり、職員会議は終了かと思いきやエルナーから思わぬ言葉が発せられる。

「それで、ハルカ先生の仕事なのですが……レイナード先生」

(ん? オレ?)

 いきなり呼ばれて何事かと思う。
 とりあえず反応しておく。

 そしてエルナーは、

「えーっと、彼女にはレイナード先生のクラスの助手としてついてもらうことになりました」
「は?」


 
 唐突の助手宣告に俺は戸惑いを隠せなかった。
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