元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

文字の大きさ
36 / 127
第3章 おっさん、冒険をする

第36話 初めての錬金術

「よし、これで準備は整ったぞ」

 俺たちは変成薬を使うのに必要な素材を集め、宿屋に帰ってきた所だった。

 俺は20代半ばの女の髪、レーナも何とか20代後半くらいの女の指紋を採取することができた。
 予想以上に時間はかかったが、作戦決行に支障はない。

 時間もないので早速作業を始める。

「レーナ、今すぐ作業を開始するぞ」
「は、はい。ですが一体何を……?」
「錬金術で変成薬を全能薬へと練成させる」
「れ、錬成ですか?」

 全能薬。
 変成薬とは違い、あらゆるものへと身体を変化させることができる万能薬だ。
 それは生物や無生物を問わない。
 神話の全能神ゼウスのように万能な力を持つことからその名がつけられたという。

 今では品としては流通しておらず、エリクサーなどとは違って一部の人間しかその名を知らないという幻の秘薬だ。
 ちなみにこの秘薬を錬成できる者は俺を除くと神魔団メンバーの一人であり錬金術師であったハイアットくらいしか知らない。
 俺は彼から知恵を得て錬金術を学んだ。
 正直、錬金術に関して言えば彼の右に出る者はいないだろう。 

 そして俺が変化の対象者の髪やツメアカをなぜ必要としたのかというと記憶よりもコピーのクオリティが高くなるからだ。
 全能薬は想像したものに自身を変化させることができる。
 だが、その想像力が曖昧だと完全にコピーすることができないのだ。

 これは万能と言われた薬の唯一のデメリットと言えるだろう。
 違和感なく完全にコピーするにはこれが一番良いやり方だと言うわけだ。

 俺は四次元空間に保管してあった小さな錬金釜を平然な顔をして取り出す。

「レイナードって何でもできるんですね。魔術だけじゃなく錬金術まで」
「魔術は独学だが、錬金術はある人からほんの少しだけ知恵を貰った。俺一人で全てを学んだわけじゃない」
「でも凄いことですよ。本当に商人だったのか疑っちゃいます」

 ああ、そうだった。俺は商人という設定で学園生活を通しているんだった。
 四次元保管庫を見せたのはさすがにまずかったか。

 だが、今更考えても仕方がない。
 作業を続ける。

「レーナ、この錬金釜に変成薬と取ってきた髪と指紋のついた髪飾りを入れてくれ」
「りょ、了解です」

 この髪飾りは持ち主が捨てていった物で、たまたまそれを見ていたレーナが拾ったものだ。
 その髪飾りには指紋がたっぷりとついており、素材として使うには申し分ない。

「この髪飾り……綺麗だったので残念ですね」

 レーナは少し残念なようだ。
 それを横目で見ていた俺は、

(髪飾りか……全て終わったら買ってやるか)

 その他にも錬金術には欠かせない金属の破片などを投入し、蓋をすぐに閉める。
 ぐつぐつと煮込み料理をする要領で時間が過ぎるのを待つ。

「錬金術ってこうやるんですね……私初めて見ました」
「レザードとかには教わらなかったのか?」
「あ、はい。レザードさんに教わったのは魔術と体術だけです」
「そうか」

 ま、確かに今の時代は技術が進歩して中級錬金術なら誰でもできる世の中になったし、人を問うこともなくなった。
 それに伴って錬金術をより簡単に行えるための道具なども作られた。錬金釜もその一つだ。
 昔は全て混ぜて錬金スペルを詠唱すれば、完成といった容易な物ではなかったので大きな進歩である。
 ひと昔前の錬金術はとても高度な技術が必要で貴金属と身体をリンクさせる能力や爆絶な魔力量を誇った者でないと決して行うことができなかった。

 その中で俺たちはより高度な上級錬金術を容易にやっていたのだから、周りの人間と比べたら次元が違うレベルだったのだろう。

 数時間が経った。
 
「よしそろそろ頃合いだな」

 錬金術はタイミングが重要である。
 少しでも狂えば全く別の物が出来上がってしまうことも錬金術ではよくあることだ。

 ここだ。
 俺は例の如くスペルの詠唱をしなくても良いので少しタイミングをずらす。

 魔力を注ぐと錬金釜が大きく揺れる。
 青なのか赤なのか分からないような異色に光り、今にも爆発しそうな勢いだ。
 そして錬金釜から閃光が放たれると―――



「よし、完成だ」
「で、できたんですか?……」

 初めての光景に少しビビりながらも錬金釜をそっと覗く。
 すると中には小瓶に入った金色の液体が二つ入っていた。

「こ、これが全能薬ですか?」
「そうだ。これを飲めば対象の人間に自らを変化させられる。想像する必要もない」
「スゴイ……ホントにそんなものが作れるなんて」

 興味を持ったのか顔をキラキラさせながら錬金釜を見ている。

「興味があるのなら今度教えるぞ」
「えっ!? いいのですか?」
「ああ、ちょっとだけならな」
「わぁ!……ありがとうございます!」

 錬金術一つでそんな笑顔をされたら反応に困る。
 よっぽど感銘を受けたのだと見受けられる。
 今時の若者で錬金術を見てここまで興味津々な反応をする人は中々いない。

 しかし今はやるべきことが先にある。
 俺はレーナに、
 
「だがまずはハルカの件を終わらせないことには何も始まらん。今は集中するぞ」
「は、はい。もちろんです」
 
 一気に真剣な表情に変わる。
 外を見るといつの間にか日が落ちて夜になっていた。
 宿屋の窓を開けると昨日と同様、夜市場が盛んに行われていた。

(相変わらず人が多いな)

 その光景を少しだけ見て俺は窓を閉める。

 その後、俺たちは夜中まで綿密に作戦会議を行い、次の日の朝を迎えたのだった。
感想 29

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか?

chocopoppo
ファンタジー
【毎日12:10更新!】 松本(35)は会社でうたた寝をした瞬間に異世界転移してしまった。 特別な才能を持っているわけでも、与えられたわけでもない彼は当然戦うことなど出来ないが、彼には持ち前の『単調作業適性』と『社会人適性』のスキル(?)があった。 第二の『社会人』人生を送るため、超資格重視社会で手に職付けようと奮闘する、自称『どこにでもいる』社会人のお話。