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第3章 おっさん、冒険をする
第37話 早朝での出来事
朝である。
今日も昨日と同様に焼けつくような暑さと強い日差しの二重苦という俺にとっては天敵級の天候となった。
ササっと支度を済ませ、俺とレーナは宿屋を後にする。
「よしレーナ行く……行くわよ」
「あ……はい」
この姿に物凄く違和感を感じているのか知らないが、苦笑いをするレーナ。
ただここまで来るのに俺は苦戦を強いられていたのだった。
* * *
話は早朝にまで遡る。
仮眠時間は2時間程度。
きっちりと予定時刻に起き、俺たちは準備を始めていた。
「よし、レーナ起きたな。早速だがこれを飲んでもらう」
差し出したのは昨晩錬金術によって生成した全能薬だ。
小瓶の中に微量の金色の液体が入っている。
と、ここでレーナが、
「あ、その前に着替えてもいいですか? 買った服を着てみたのです」
「え、ああ。構わん」
宿屋に置いてあった浴衣を着ていたレーナは着替えを始めた。
服なども素材採取の際に購入しておいたのは理由がある。
それは単純で服の替えがなかったからだ。
さすがに同じ服だと一回見られているため、怪しまれる可能性がある。
こういう小さな所にも気を配る。
「もう大丈夫ですよ」
後ろを向いていた俺はレーナの方へ目線を変える。
「その……どうでしょうか?」
「うむ、中々に似合っているぞ」
「本当ですか!?」
正直何を着ても似合うのだが、やはり白を基調とした洋服は彼女にぴったりと言えるだろう。
ひらひらのついた白ブラウスにちょうどいい丈のスカート。
ビジュアル自体はシンプルなのだが、彼女の容姿やスタイルがそれをより映えさせている。
俺でも一瞬だけだが、目に止まってしまったくらいだ。
「それじゃあ次はレイナードの番ですね」
「はい?」
レーナは袋から俺用に買った女性モノの衣服を取り出す。
「はい、レイナード」
当たり前のように衣服を差し出す。
「おい、どういう……」
「え? 着るんですよ今から」
「いや、それはそうなのだがこのままで着ても意味がないだろう」
対象者が女性な上、服など自分で買った経験がないことから女性モノの衣服をレーナの助言を得て購入した。
まさかこの俺が女性モノの衣服を纏うことになるとは思わなかった。
なんとも不思議な感覚である。
レーナは今すぐにでも着てほしいようだった。
「先生はどちらかと言うと童顔なのできっとそのままでも似合いますよ」
「いや……そういう問題じゃない。さすがにそれは勘弁だ」
こんなやり取りが数分続いた。
そして―――
「わぁ……可愛いですー!」
「く、屈辱だ」
男のままの姿でバリバリの女性モノの衣服を着させられた。
レーナは顔をキラキラとさせながら嬉しそうに見ているが、俺の心は今にも枯れそうな勢いだった。
俺はレーナとは対照的に黒を基調とした衣服を選んだ。
特に組み合わせはなく黒のワンピースを一枚だけだ。
「やっぱ私が見込んだ通りです。凄く似合っていますよ!」
全く嬉しくない。
この瞬間、俺の人生に新たな黒歴史が生まれた。
頼まれたとはいえ女装した姿を他人に見られるという辱めを受けた黒歴史だ。
「おい、こんなことをしている暇はないぞ。とりあえずこれを飲め」
強引に今の状況を戻そうとする。
「あ、そうでした。すみませんつい楽しくなっちゃって」
どこが楽しいんだ?
全くもって今の若い奴は分からんな。
おっさんを女装させて楽しむとは。
疑問が多いが、とりあえず気を取り直して本題に入るとする。
俺は小瓶に入った秘薬をレーナに差し出す。
「これを飲めばいいんですか?」
「そうだ。ただ味の保障はできない。頑張って喉に通してくれ」
「わ、分かりました……」
確か全能薬は薬の中でも最高ランクの不味さを誇るものだった気がする。
だがどっちにせよ喉に通さないと意味がない。
吐き出してしまったら今までの苦労が水の泡となる。
俺は小瓶の蓋を開ける。
中身はキラキラと黄金に輝く液体。見た目は不味そうには見えない。
ふぅ……っと深呼吸。
そして一気に飲み干す。
「ぐっ……!」
見た目以上にトロトロしていた。
予想通り味はくそ不味く上手く喉に通っていかない。
味は……なんといえばいいだろうか。
その辺にあるドブ水の濃度を高くしたような、とにかく人が口にするものではない味だ。
なんとか喉に通し、水を含む。
「ああ……これはきついな」
その時レーナは、
「ぷはー! なんか健康になりそうな味ですね!」
顔色変えず平然と飲み干していた。
「お、おい……大丈夫だったのか?」
「は、はい。私は許容できる味でしたよ」
ま、マジか……
もしかしてレーナって味音痴なのか? 喉に通すだけで精一杯だったのになんて奴だ。
彼女はどうしたのかと言わんばかりに首を傾げる。
「ま、まぁそれならいい。とりあえず変化が出るまで待つぞ」
そしてその数分後、身体から金色のオーラを放ちながら徐々に身体が変化していった。
ざっと10分経たないくらいだろうか。俺たちは見事にコピーさせることに成功した。
「ふぅ、なんとか成功だな」
「す、スゴイですね……本当に変化しています」
時間を確認。
懐中時計は午前9時を指していた。
「よしレーナ。早速準備をして出るぞ」
「はい! それであの……一つ言いたいことが」
「なんだ?」
「その……その姿でそんな男前な喋り方は似合わないかなーって」
レーナが指摘する。
なるほど、確かにこの姿で普段のように振る舞ったら違和感があるか。
女性のような振る舞いをした方が怪しまれることはないな。
レーナの指摘を受け、立ち居振る舞いを変えることにする。
「よし、レーナ行く……行くわよ」
「は、はい……」
時は来た。
俺たちはハルカを救出するため、スメラギ家の屋敷へと向かった。
今日も昨日と同様に焼けつくような暑さと強い日差しの二重苦という俺にとっては天敵級の天候となった。
ササっと支度を済ませ、俺とレーナは宿屋を後にする。
「よしレーナ行く……行くわよ」
「あ……はい」
この姿に物凄く違和感を感じているのか知らないが、苦笑いをするレーナ。
ただここまで来るのに俺は苦戦を強いられていたのだった。
* * *
話は早朝にまで遡る。
仮眠時間は2時間程度。
きっちりと予定時刻に起き、俺たちは準備を始めていた。
「よし、レーナ起きたな。早速だがこれを飲んでもらう」
差し出したのは昨晩錬金術によって生成した全能薬だ。
小瓶の中に微量の金色の液体が入っている。
と、ここでレーナが、
「あ、その前に着替えてもいいですか? 買った服を着てみたのです」
「え、ああ。構わん」
宿屋に置いてあった浴衣を着ていたレーナは着替えを始めた。
服なども素材採取の際に購入しておいたのは理由がある。
それは単純で服の替えがなかったからだ。
さすがに同じ服だと一回見られているため、怪しまれる可能性がある。
こういう小さな所にも気を配る。
「もう大丈夫ですよ」
後ろを向いていた俺はレーナの方へ目線を変える。
「その……どうでしょうか?」
「うむ、中々に似合っているぞ」
「本当ですか!?」
正直何を着ても似合うのだが、やはり白を基調とした洋服は彼女にぴったりと言えるだろう。
ひらひらのついた白ブラウスにちょうどいい丈のスカート。
ビジュアル自体はシンプルなのだが、彼女の容姿やスタイルがそれをより映えさせている。
俺でも一瞬だけだが、目に止まってしまったくらいだ。
「それじゃあ次はレイナードの番ですね」
「はい?」
レーナは袋から俺用に買った女性モノの衣服を取り出す。
「はい、レイナード」
当たり前のように衣服を差し出す。
「おい、どういう……」
「え? 着るんですよ今から」
「いや、それはそうなのだがこのままで着ても意味がないだろう」
対象者が女性な上、服など自分で買った経験がないことから女性モノの衣服をレーナの助言を得て購入した。
まさかこの俺が女性モノの衣服を纏うことになるとは思わなかった。
なんとも不思議な感覚である。
レーナは今すぐにでも着てほしいようだった。
「先生はどちらかと言うと童顔なのできっとそのままでも似合いますよ」
「いや……そういう問題じゃない。さすがにそれは勘弁だ」
こんなやり取りが数分続いた。
そして―――
「わぁ……可愛いですー!」
「く、屈辱だ」
男のままの姿でバリバリの女性モノの衣服を着させられた。
レーナは顔をキラキラとさせながら嬉しそうに見ているが、俺の心は今にも枯れそうな勢いだった。
俺はレーナとは対照的に黒を基調とした衣服を選んだ。
特に組み合わせはなく黒のワンピースを一枚だけだ。
「やっぱ私が見込んだ通りです。凄く似合っていますよ!」
全く嬉しくない。
この瞬間、俺の人生に新たな黒歴史が生まれた。
頼まれたとはいえ女装した姿を他人に見られるという辱めを受けた黒歴史だ。
「おい、こんなことをしている暇はないぞ。とりあえずこれを飲め」
強引に今の状況を戻そうとする。
「あ、そうでした。すみませんつい楽しくなっちゃって」
どこが楽しいんだ?
全くもって今の若い奴は分からんな。
おっさんを女装させて楽しむとは。
疑問が多いが、とりあえず気を取り直して本題に入るとする。
俺は小瓶に入った秘薬をレーナに差し出す。
「これを飲めばいいんですか?」
「そうだ。ただ味の保障はできない。頑張って喉に通してくれ」
「わ、分かりました……」
確か全能薬は薬の中でも最高ランクの不味さを誇るものだった気がする。
だがどっちにせよ喉に通さないと意味がない。
吐き出してしまったら今までの苦労が水の泡となる。
俺は小瓶の蓋を開ける。
中身はキラキラと黄金に輝く液体。見た目は不味そうには見えない。
ふぅ……っと深呼吸。
そして一気に飲み干す。
「ぐっ……!」
見た目以上にトロトロしていた。
予想通り味はくそ不味く上手く喉に通っていかない。
味は……なんといえばいいだろうか。
その辺にあるドブ水の濃度を高くしたような、とにかく人が口にするものではない味だ。
なんとか喉に通し、水を含む。
「ああ……これはきついな」
その時レーナは、
「ぷはー! なんか健康になりそうな味ですね!」
顔色変えず平然と飲み干していた。
「お、おい……大丈夫だったのか?」
「は、はい。私は許容できる味でしたよ」
ま、マジか……
もしかしてレーナって味音痴なのか? 喉に通すだけで精一杯だったのになんて奴だ。
彼女はどうしたのかと言わんばかりに首を傾げる。
「ま、まぁそれならいい。とりあえず変化が出るまで待つぞ」
そしてその数分後、身体から金色のオーラを放ちながら徐々に身体が変化していった。
ざっと10分経たないくらいだろうか。俺たちは見事にコピーさせることに成功した。
「ふぅ、なんとか成功だな」
「す、スゴイですね……本当に変化しています」
時間を確認。
懐中時計は午前9時を指していた。
「よしレーナ。早速準備をして出るぞ」
「はい! それであの……一つ言いたいことが」
「なんだ?」
「その……その姿でそんな男前な喋り方は似合わないかなーって」
レーナが指摘する。
なるほど、確かにこの姿で普段のように振る舞ったら違和感があるか。
女性のような振る舞いをした方が怪しまれることはないな。
レーナの指摘を受け、立ち居振る舞いを変えることにする。
「よし、レーナ行く……行くわよ」
「は、はい……」
時は来た。
俺たちはハルカを救出するため、スメラギ家の屋敷へと向かった。
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