元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第3章 おっさん、冒険をする

第38話 面会

「ここだな」
「すごく大きなお屋敷ですね。造りも独特で」

 俺たちはスメラギ家の屋敷の前まで来ていた。
 探索魔術を用いてハルカの居場所を洗い出した結果、ここにいるとのことだった。

「とりあえず屋敷の人間を呼び出すか」

 何メートルあるか分からないくらいの大きな門を3回叩く。
 
 ―――カチャ。

 中から何かが外れるような音がする。
 鍵が開いたようだ。

「どなたです……?」

 中から出てきたのは小さな女の子だった。
 歳は10の年くらいだろうか。
 全身を大きな布で覆った姿で現れた。

「私たちはここの使用人になりたく、はるばる遠方から来たものなのですが家の方はいらっしゃらないのですか?」

 俺は演技のスイッチを入れる。
 女の姿の内はなりきらねばならない。
 それにこの姿でいられるのは24時間が限界。
 要するに今日中に決めないとまずいということだ。

「その……えっと……ワタシは……」

 脅えているのだろうか? 言葉が出てこない。
 するとそこへ一人の中年男が現れた。

「おい、そこで何をしている。下がれ」
「あ……親方様……お客さんが……」
「誰の許可を得て門を開けていいと言ったのだ? 商品の分際ででしゃばるな」

(商品……?)

「その……ゲッコウ様に言われて」
「あのお方が貴様らなどを頼るわけなかろう。早急に蔵の中へ戻れ!」

 子ども相手に厳しい口調で追い払おうとする。

「ご、ごめんなさい……」
「後で蔵へ行く。そこで待ってろ」
「は、はい……」

 その女の子は下を向き、無気力にトボトボと去っていく。
 女の子の首と足には何やら鎖みたいな物で繋がれており、まともに歩けないような感じだった。

(こいつらまさか……)

 初っ端から不愉快な物を見せつけられ、気分が悪くなる。
 女の子が去った後、その男が代わりに応対をしてきた。

「申し訳ない、家の者が迷惑を。それで何か御用かな?」

(何が家の者だ。どう見ても家内の扱いじゃないだろうが)

 段々と腹が立ってくるが、ひとまず落ち着く。
 そして再びスイッチを入れ直す。

「あ、はい。私たちはゲッコウ・スメラギ様の元で使用人をしたいと思い、はるばる遠方からやってきたものです」
「ほう……使用人ですか?」
「はい。以前にゲッコウ様の演説をたまたま聞いておりまして、その際に語られていたことに膨大なほどの感銘を受けました。私たちはもっとゲッコウ様のことを知りたいのです」
「それで使用人をご希望で?」

 首を縦に振る俺たちにその男は少し待つよう要求してきた。
 
 数十分経った後、再びその男は姿を現した。

「お待たせいたしました。ゲッコウ様が面会したいとのことなので中に入っていただけますか?」
「ほ、本当ですか!?」
「はい。ですがその前に身分を証明できる物をご提示していただきます」

 俺たちは先日にあらかじめ作っておいた偽の身分書を差し出した。
 
「アナ・ユークリウッドさんとメイア・シューンさんですね。どうぞ中へ」

 俺たちは難なく屋敷の中に潜入することができた。
 ちなみにこの名前は偽名とかではなく、対象者本人の実名だ。
 素材を入手した際に探索魔術で予め調べておいたのだ。

 それにしても比較的簡単に中へ入れたな。とりあえず第一関門突破だ。
 かくなる上は精神魔術でどうにか切り抜けようと考えていたが、その必要はなかった。
 それにあまりにも魔術を行使しすぎるとゲッコウに察知される可能性がある。
 おそらくあの男は魔術を感じ取る能力を持っている。

 とりあえず今は、それ以外の方法で奴らの真意を暴く事にする。

 中へ入るとそりゃあもう広すぎて目が回りそうだった。
 大きな庭がドカーンとあり、広い池がいくつもあった。

 建物の造りも少し変わっていた。
 クロードの建造物は基本的にレンガ造りが主流なのだが、この屋敷にはレンガが一切使われていない。
 こっちではどうやら木材が主流のようだった。
 全てのパーツが木材によって構築されており、クロードの建造物と比べると小さい。

 こっちの言葉ではワフウ建築と言うらしい。

 ゲッコウがいる長の間までなんと数分かかった。
 入り口から家主に会うのに数分掛かるとは……

 男がゲッコウのいる部屋の前で立ち止まった。

「ゲッコウ様。つれて参りました」
「入れ」

 戸がバッと開き、ゲッコウの姿が見えた。

「彼女たちか。我に従事したいという者は」 
「左様であります」
「話を聞こう」

 すると男は俺たちに前に来るよう指示する。
 どうやら会話する権利を与えられたようだ。

 ゲッコウは堂々と構える。

「それで……君たちは何故我に従事したいのだ?」
「話す者前へ」

 男がこう言うと俺が代表で前へでる。

「こんな所から失礼いたします。私たちは……」

 俺たちはこの屋敷に来た経緯についてこと細かく話した。

「なるほど。我の演説に感動し、我の思想をより側で感じたいと思い使用人を志したと」
「その通りであります。いきなりの訪問で申し訳ありません」

 できる限り顔を上げず低い姿勢で話す。

「それで……君たちは何ができるのだ?」
「はい。基本的になんでも受け付ける所存であります。家事からお仕事のお手伝いまでこなせることかと」
「それは頼もしい」

 よし、反応はバッチリだ。
 あとはそれの証明させ出来れば……

「もし、よろしければ何かこの場でしていただきたいことをしますが……」

 こう申すとゲッコウは立ち上がる。
 すると何やら印章のような物を五つも差し出してきた。

「これは……?」
「これは我が家に代々と受け継がれてきた印章だ。この五つの印章の中に一つだけ本物が隠れている。それを当てられたなら使用人として迎えよう」

 なるほどな。身に周りの世話ができるとかの問題ではなく、スメラギ家の事をどれほど知っているのか試そうとしているわけか。
 面白い……

 俺は五つ並んだ印章をしっかりと見つめる。
 印章にはスメラギ家の家紋である鷹がデザインされていた。
 レーナの方を見てみると何が何だかさっぱりと言わんばかりの表情だ。

 無理もない。
 確かに素人が見ればどれも同じようにしか見えないだろう。
 だが、俺には分かる。
 鷹の紋様に少しだけ違和感があったのを……

「これが本物ですね」

 俺は一つの印章をゲッコウへ渡す。

「本当にこれでいいのだな?」
「はい。間違いなく本物だと確信しております」

 胸を張って自信満々に言う。
 するとゲッコウは、

「ふっふっふ、どうやら本物のようだな」
 
 手に取った印章を見て一瞬だけ微笑む素振りを見せた。
 後ろではレーナが目を丸くして見ており、家来の男も信じられないという表情が前面に出ていた。

「見事だ。これぞまさしく本物。よくぞ見抜けたな」
「ありがとうございます」
「なぜ分かったのだ?」

 疑問を投げかけてくるゲッコウに、

「はい、その印章以外の物は全て鷹以外の鳥類が描かれていた物でした。もっとも錯覚魔術で鷹を装って映していたみたいですが……」

 俺はさらに続ける。

「それに比べこの印章だけは不自然な感じはしませんでした。それにこの印章の端の所に微かですが小さな傷も見受けられました。これはこの印章をよく使っているという証拠です」

 長くならない程度の推論を展開する。
 微量の魔術を施すことはかなり熟練とした技能がいる。
 それに伴い、見破ることができるのも相当能力がないと厳しい。
 ゲッコウは俺たちが異国人だと知った上で魔術を使った試練で能力を試したのだろう。
 
 と、ここでゲッコウは、

「素晴らしい。そこまで見破れていたとは……おそらく君が初めてだ」
「ほ、本当でありますか!?」
「ああ、これであれば我の使用人として働いても問題はない」
「では……」
「うむ。ここで従事することを認めよう」
「あ、ありがたき幸せ」

 面会は昼過ぎまで行われた。
 そして最終的に俺たちは屋敷の使用人として正式に採用されることになった。

 よし……順調だ。
 今の所スムーズに事が進んでいる。
 
『よしレーナ。次に行くぞ』
『はい、レイナード』

 五感魔術でやり取りを交わす。
 

 そして俺たち二人は次なる一手を打つべく、行動に移すのであった。
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