元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第3章 おっさん、冒険をする

第39話 第二の試練

「初めまして。ワタクシはここ、スメラギ家の使用人長をしております。カレンというものです」
「アナ・ユークリウッドです」
「メイア・シューンです。お願いします」

 俺たち二人はゲッコウに認められ、使用人として屋敷に潜入することができた。
 そして今、使用人としての知識を学ぶべく使用人長のカレンの元にいた。

「ここでのご奉仕は他の大名家とは全く違うものだとお考え下さい」

 大名家? ああ、貴族階級みたいなものか。
 ここでは大名というのか。

「早速ですが簡単な家事をやっていただきます」

 そう言われて連れてこられたのはスメラギ家の厨房だった。

「あらかじめ言っておきますが、スメラギ家では料理は基本中の基本。ゲッコウ様は生粋の食通です。毎日ゲッコウ様の舌を唸らせる料理を作れるようになることが使用人としてのスタート地点です」

 そう言って大量の食材をドンっと置く。

「ちなみにここの料理担当はローテーションで行っています。料理だけ逃れるといったことは決してできませんのであしからず。まぁ……ゲッコウ様に仕える者ならそんな愚かな事をすることはないと思いますが」

 とりあえずここで使用人としての地位を築くには料理ができないと話にならないらしい。
 
 料理か……一人暮らしを始めてから自炊はするようにはなったがまともな物は作ったことがない。
 あのゴリラ野郎の舌を唸らせる料理を作れなど……正直無理だ。不可能だ。

 対してレーナは料理上手。
 この前、変人魔剣使いの家に行った時に振る舞ってくれた料理はすごいものだった。
 どれも俺好みで美味しく、独自性もあって見た目も楽しい料理ばかりだった。

 こりゃ……料理地獄にはまったらレーナに任務を託すしかないかもな……

「お二人とも準備はよろしいですか? 制限時間は30分です。この食材でできることなら何をお作りしても構いません。それと料理魔術等の使用は禁止とします」
 
 ここの食材って……野菜、肉、魚、その他調味料全て揃っているじゃないか。
 それに魔術を使えないのか……困ったな。

 魔術を使う気でいたので頭を抱える。

 ま、まぁとりあえずやらないと計画に移れない。
 ここは奴らのルールに従おう。

「それでは始め!」

 始めの合図と共にベルの音を鳴らす。
 
 さて……どうするか。
 頭の中でレシピを構造する。
 いや、考える必要はないまずは肉だ。
 肉が全て、肉が正義! 肉料理で唸らない舌はない!

 俺は肉を手に取り、料理を始める。

 そしてあっという間に30分が経ち―――


「そこまで!」

 タイムアップ。
 俺たちは手を止める。

 よし……なんとか形にはなったぞ。味は知らんが見た目はグッドだ。
 対するレーナはさすがと言うべきか。
 俺が一品をやっと作った所を二品、三品と作っていた。しかもかなり旨そう。

 やはり彼女の料理スキルは格が違う。

 するとカレンは俺の方を向く。

「えっと……アナさんでしたっけ?」
「あ、はい……そうですが」

 カレンは難しそうな顔をする。
 
 なんだ? その微妙な表情は。何か文句でもあるっていうのか?

 と、ここでカレンが、

「その……大変申し訳ないのですがその料理はゲッコウ様には出せません」
「えっ!?」

 な、なぜだ!? 見た目は想像以上に出来、味は知らないが見た目だけで判断するには早すぎるぞ。

 カレンは続けて言う。

「ワタクシは見た瞬間にその料理の味が分かってしまいます。それはゲッコウ様も同じ。見た目がいくらよくても意味がないのです」

 要するに俺の料理は不味いと。食ってもいないのに。
 それに相反してレーナに対する評価はかなり良かった。

 理不尽だ。この俺が知力と体力を消費してまで作ったものを一蹴するとは……この女舐めやがって。

 怒りがこみあげてくるがレーナに止められる。

『れ、レイナード! 表情が……』
『ぐっ! す、すまない。俺としたことが』

 なんとか持ちこたえる。

「アナさん。この後あなたには特別研修をご用意いたします。準備をいたしますのでその間にそこに散らばっている汚い物を片付けておいてくださいね」
「グ……! は、はい……」

 またも表情が引きつりかける。
 カレンは厨房を後にし、俺たちだけが残された。

「くそっ……あの女……!」

 いなくなった途端に怒りを全面に出す。

「落ち着いてください、レイナード。確かに見た目はホントに美味しそうですよ」

 必死にレーナがフォローする。
 俺は散らかった料理道具を跳ね除け、料理の際に使った調理箸を取り出す。

「くだらん。見ただけで判断できるなど……ここで俺が食べて料理の腕の有能さを証明してやる」

 俺は箸で一口、料理を口に運ぶ。

 ―――モグモグ。

 しっかりと噛み、味を確かめる。
 バリっとした食感が最初に来るかと思ったら噛めば噛むほどコリコリとしており、その上ネチョっとした粘りがあった。
 俺は言葉を失う。

「レーナ……」
「は、はい!?」

 名をいきなり呼ばれてビクッとする。

「計画に移るぞ。今が好機だ」
「わ、分かりました!」

 俺たちは厨房を後にし、次なる行動に移す。
 
「あの……レイナード? 顔色悪いみたいですが大丈夫ですか?」
「ああ、問題はない」

 レーナもあえて料理の感想を聞いてはこなかった。

 それにしてもあれは……自分で作ったとはいえ、人間が食するものではなかった。

 先ほどの事は忘れよう……

 俺はそう思った。
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