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第3章 おっさん、冒険をする
第42話 賢者の間
「オルカ、ハルカの居場所の目処はつくか?」
「はい、恐らく賢者の間かと」
オルカ救出後、俺たちは彼女の情報を頼りにハルカの捜索を再開していた。
今の所誰かに見られてはいない。
とりあえず誰かに見つかる前にハルカを発見したい。
俺たちはゲッコウの屋敷を駆け回る。
「賢者の間……?」
「そうです。あそこの間は特殊な結界で覆われています。隔離されているのならば可能性が高いと思います」
「場所は分かるのか?」
「大丈夫です。幸いにも使用人としての仕事をしていた頃に一度だけ見たことがあります」
「心強い。頼むぞオルカ」
「はい!」
賢者の間は屋敷の裏側に独立した講堂の中にあるという。
だが周りには人払いの結界が張られており、許可のない者が立ち入れば一瞬にして業火の渦に飲み込まれてしまうらしい。
にしてもしんどい。
オルカは足と手を鎖で縛られているため、歩けても走れない。
よって抱えながら走っているわけなのだが、体力が持たない。
「くそっ……少しくらい運動しておくべきだったな」
「あ、あの……その……ごめんなさい。重たいですよね」
オルカが申し訳なそうに目を見てくる。
だが俺は特に顔色変えず、
「いや、問題はない。オルカこそ邪魔じゃないか? よかったら鎖を千切るが……」
しかしオルカは首を振る。
「それはダメなんです。この鎖には特殊な魔術が込められています。無理矢理千切ってしまうと……」
「魔術が発動してそのまま天国行きってことか……」
「は、はい……」
参ったな……正直辛い。
あのゴリラ野郎……ふざけた細工しやがって。
すごくきついが表情を変えるとオルカにバレてしまうので何とか踏ん張る。
「そういえば、レイナードさんって女性……ですよね?」
「え?」
ああ、そうだった……今は俺の姿ではなかった。
汚点だ。ナチュラルに素の自分を出してしまった。
いや……今は誤魔化そう。変な事を言えば混乱を招くだけだ。
「へ、変か?」
俺はオルカに恐る恐る問いてみる。
するとオルカは、
「いえ、凄くかっこいいです! 同じ女性なのに芯の強さと太さというか……女性とは思えません」
「そ、そうか……なら良かった」
実際は男なんだがな……後でなんて言おうか……
幼い子を騙しているようで少しばかりの罪悪感を感じる。
まぁ……いい。後でレーナにも協力してもらって適当な理由でもつけよう。
ちょうど屋敷の裏側まで来るとレーナが、
「レイナード、あそこじゃないですか?」
レーナの指さした方向にはひと際大きな建物があった。
「そうです、あの建物が講堂です」
オルカも言う通りあの建物が講堂のようだ。
「何とか誰にも見られずに着いたな」
運がいいのか知らないが、面倒なことにならずに目的地まで辿りつくことができた。
とりあえず今は講堂の周りにある結界が問題だ。
隠れながら講堂の良く見える所へ移動する。
「周りの護衛兵は……いないな。それに静かだ」
「そうですね……よほど結界による効果が強いでしょうか?」
「それもあるかもしれないです。講堂に張り巡らされている人払いの結界はゲッコウ様が作りだしたものらしいので」
となると検証が必要だな。
俺は二人に、
「二人とも、ここで待機だ。誰かが来たら知らせてくれ」
「レイナード、何を?」
「結界の強度を調べてくるだけだ。すぐ帰って来る」
「きょ、強度を調べるんですか!? 危険すぎます! それに、一人の手で簡単に壊せるものじゃ……」
俺を止めようとするオルカにレーナがそっと言う。
「大丈夫よ。レイナードはこう見えても凄い人なんだから」
こう見えても……って……
まぁ、この姿を見れば強そうには見えないよな。
複雑な感情だが仕方ないと受け止める。
「じゃあ頼むぞ」
「はい」「わかりました」
俺は二人に見張り番をやらせて結界へと近づく。
「ふむ……結界が張ってあるのは本当のようだな。だが妙だな……この程度の結界なら中級魔術師でも破壊できるレベルだ。オルカの言っていたことは間違いだったのか?」
しかし、これくらいなら突破は容易だ。
俺は二人に此処へ来るよう呼びかける。
「レイナード、どうでしたか?」
「問題はない。薄い結界さ、護衛にしては貧弱だ」
「それならすぐにハルカの所へ」
「ああ」
俺は結界を軽々と破壊し、講堂の中へと入っていく。
中に入るとそこはとてつもなく広い空間が続いていた。
「なんだこれは……」
「スゴイですね……無限に続いているようです」
「講堂では召喚研究が行われていたと聞いたことがあります。今は使われてないみたいですが」
なるほど……どうりで広いわけだ。
「レイナード、早く賢者の間へ」
「ああ、そうだな。オルカ、案内を頼む」
「はい!」
俺たちは賢者の間へと急ぐ。
そして……
「あそこが賢者の間です」
視線の先には特になんの変哲もない大きな扉が一つあった。
周りに人の気配はない。
後は扉が開いているかどうかだ。
俺は開くかどうか確認をする。
―――ガチャ。
「ん? 開いているぞ」
扉は施錠されておらず開いたままだった。
「ということは誰かが……」
「ああ、その可能性は高いな。気を付けていくぞ」
慎重に中へと入る。
中は真っ暗で何も見えない暗闇の空間だった。
「これじゃ何も見えんな。二人とも大丈夫か?」
俺が声をかけた次の瞬間だった。
―――ビューン!
「……!? なんだ?」
地面が揺れている。
これは……吸い込まれている?
揺れと同時に足が地面へとめり込んでいくのを感じる。
「ちっ、転移結界か」
逃れようと試みるがビクともしない。
動けば動くほど足が地面にめり込んでいく。
「くっ、ハメられたか……」
俺はそのまま地面に吸い込まれ、意識を失った。
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