元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第3章 おっさん、冒険をする

第43話 賭けという名の……

 ―――ここは……どこだ?

 周りを見渡すと見知らぬ空間が広がっていた。

 どうやらどこかの神殿の入り口のようだった。

 白く大きな柱がいくつも軒を連ねている。

「そうか……転移結界で飛ばされたんだったな」

 見た限り外傷はない。
 それに……なんだ、下半身に違和感が……
 ん? 身体が戻っている?

 身体中を触ると元の姿に戻っていることに気付く。

「どうなっているんだ? 全能薬の効能時間が切れるにはまだ早いはず」

 原因は分からないが、とりあえずレーナたちを探すことにしよう。

 俺は神殿の中へと入っていく。
 
 それにしても立派なものだ。
 新設されたかのように綺麗に整備されている。
 
 もしや、ここは現実世界ではないのだろうか。
 今時、ここまで綺麗な神殿は珍しい。
 もしこの世界がゲッコウの作り出したものだと仮定すれば奴はこの場所のどこかにいるということになる。

 調査が必要だな。

 俺はさらに神殿の奥へと進む。

「ここは……」

 先に進むと広々とした場所に出た。
 
 みた感じ闘技場だな。
 見渡す限り使い古された感じはしない。
 目視だけだと学園のコロシアムの倍の敷地面積はある。

 神殿に闘技場とは……一体ここはなんなんだ?
 

 俺がゆっくりと闘技場に足を踏み入れた時だった。


 ―――ようこそ、賢者の間へ。

 ん? 誰だ?

 周りを見渡しても誰の気配もない。
 だが、声だけは鮮明に聞こえる。

 ―――やはり来たな、偽りの冒険者よ。
 
 ドスの効いた声が響く。
 だが、どこを見ても人の気配は感じられない。

 これは……魔術によるものか? いや、考える必要などない。大人しく出てきてもらうまでだ。

「おい、どこにいる。隠れてないで出てきたらどうだ?」

 俺の声が闘技場全体に響く。
 しかし、しばらく経っても姿を見せる気配はない。

「どうした? 俺をこんな世界にまで連れてきたのは訳があるんじゃないのか?」

 するとすぐに返答が返ってきた。

 ―――ほう……この世界の存在に気付いたのか。

 やはりか。
 ここは現実世界ではなくゲッコウが作った仮想世界……秘薬の効能が消えたのもこれが原因だろう。

 レーナたちがどこにいるのか知らんが、まずは奴と話をつけねばな……

 と、俺が考えていると背後に膨大な魔力を持つ大きな影の存在を察知する。

「……ほう、オレに気付かれず背後を取るとは……中々だな」
「貴様、この我を誰だと思っているのだ?」
「ああ……そうだったな」
 
 俺はゆっくりと振り向く。
 すると、漆黒の布で覆われた大柄な男の姿があった。
 
(相変わらずデカいな)

 威圧感は凄い物が伝わってくる。
 これは人が発せる威圧ではなかった。
 言ってしまえば、人間の域を超えた化け物だ。
 
「まさかそっちから声をかけてくるとはな。探す手間が省けて助かるよ」
「ふん。貴様らなど眼中にはなかったが、念のためだ。近々来ることは予想していたからな」
「いつから気付いていた?」
「オルカを蔵から出した時だ。あいつの首輪は特注でな、居場所が特定できるのだよ」

 なるほど、あの首輪にはそんな仕掛けが……
 どうりで誰にも会わず、賢者の間までいけたわけだ。
 結界の強度も大したことがなかったのは俺たちを此処へ誘き出すため、というわけか。

「オレたちは誘き出されたわけか」
「そういうことだ。ここなら異国人を殺しても問題はないからな」

 異国人……? ああ、殺人法で規制されているということか。
 説明すればある一部の国では殺人法というものが適応されており、異国人を殺すとどんな理由であれ厳重に罰せられるというものだ。

 異国間交流法に基づいた考え方で適応している国も少しずつ増え始めている。

「ということは殺す気満々なわけか」
「当たり前だ。貴様たちは知りすぎた。我の事を……」
「オレたちが情報を得たことを知っていたのか」
「全て筒抜けだ。面会の際、もう片方の女に特殊な魔術をかけておいた」

 そこまでしていたとは……中々に用心深い男だ。
 だが逆に説明する必要がなくなった。
 後はわざわざここまで来た目的を果たすだけだ。

「そこまで知っているなら俺たちがここまで来た理由が分かるな?」
「ああ、もちろんだ。先ほどハルカが言ってくれたよ。貴様たちがこの国に来た理由をな」
「そうか……それで、ハルカたちは無事なんだろうな?」

 こういうとゲッコウは『ふっ』と微笑する。

「ああ、心配するな。殺してはいない」

 なら問題はない。
 この世界にレーナたちがいることは理解できた。

 後は……

「それで、オレたちの要求を呑む気はあるのか?」

 俺がこう聞くとゲッコウは、

「悪いが却下だ。ハルカには決められた道に進んでもらう。家のさらなる繁栄のためにな」
「なるほど……要求を呑む気はないと……理解した」

 俺はゲッコウから2、3mほど離れる。

「何をする気だ……と、問いただそうと思ったがその必要はなくなった」
「そうか、理解が早くて助かるよ」
「貴様、この我と一戦交えるというのか?」
「ああ。あまり手荒な真似はしたくなかったのだがな」

 するとゲッコウは不吉な笑みを浮かべ、

「ふっ……面白い。我に勝てるとでも思っているのか?」
「さぁな。だが勝利した暁にはオレの要求を呑んでもらうがな」
「なるほど……賭けというわけか。では……貴様が敗北したらどうするのだ?」
「そうだな……お前の好きなようにしろ。敗北したのなら何でも言う事を聞いてやる」

 それを聞くとゲッコウは、

「ふん、愚かな男よ。後で後悔しても知らんぞ?」
「それはこっちのセリフだな」

 ゲッコウは徐々に魔力を高めていく。

 さて、喧嘩を売ってしまったことだし、やるしかねぇな。
 初めから面倒なことは避けたかったが、こうするほうが手っ取り早い。
 幸いレーナたちがいないので少しくらい力を出しても問題はないだろう。

 ゲッコウはグッと身構える。

「準備はいいか?」
「ああ、オレはいつでもいいさ」
「ふふふ、勇ましい男よ。我に勝負を挑むとは……」
「褒め言葉か? ありがたく受け取っておこう」
「余裕を言っていられるのも今の内だ。我にあまり刀を抜かせるなよ」
「お前も死なないようにな」

 互いに挑発し合う。
 膨大な魔力の高まりで地鳴りが起こり始める。

「貴様の力がいかなるものか。我が見定めてやろう!」

 こうして、二人の男の戦いの火ぶたが切って落とされるのだった。
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