元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第3章 おっさん、冒険をする

第44話 秘刀 スメラギ

「いざ、尋常に勝負!」

 腰に差したカタナとやらの物に手を当て、ゲッコウは俺の懐に飛び込んできた。

 早いな……だが。

 俺はそれを見切ったかのようにかわす。

「今のをかわすか。一撃で仕留める予定だったのだがな」
「悪いな。そういう類の者は慣れているんだ」
「そうか。ふっふっふ、面白い」

 今の一連の行動を見た限り、あいつは俺の敵ではないと判断する。
 剣術は未知数とはいえ、体術スキルに関しては中の上だ(俺から言わせれば)。

 この程度で世の中では猛者扱いなのか……
 だいぶこの世も腐敗してきたものだな。

 少し期待をしていたからか残念な気分になる。
 一つだけ褒めるべき点があるとすれば……あいつ特有の凄まじい覇気だ。

 並大抵の人間なら奴の覇気に一瞬にして飲み込まれてしまうだろう。
 背後からオーラみたいな物が目に見える。
 あれほどのオーラを発することができるのは恐らく世の中探してもそういないだろう。

「それにしても尋常ではない覇気だな。中々の物だ」
「貴様こそ、我の覇気に触れて立っていられるとは……驚きの極みよ」

 奴の力はどんどん膨れ上がっていく。
 
「よかろう……貴様は我の相手に相応しい男だと判断した。よって貴様を全力で仕留めにかかろうぞ」
「ほう……それは楽しみだな」
「ふふふ、いつまでその口が叩けるか見物だな」

 他言無用と言ったところか。ゲッコウはすぐさま刀を抜き、斬りかかってくる。

「おっと……」

 ギリギリのラインでかわしていく。
 
 あいつ、本気で仕留めにきているな。
 スピードがさっきとは別物だ。それにあの剣術……どうやら実力に偽りはないようだな。

「どうした? 逃げてばかりでは我には勝てんぞ」

 勢いに乗ったのか動きにキレが出始める。
 
 剣さばきのレベルがどんどん上がっている。
 しかもこの動き……魔術による作用ではないな。

 強靭な体術と純粋な剣術……膨大な魔力量は感じるが奴自身魔術を行使していない。

 謎が深まるばかりだな。
 
 すると、いきなりピタりと剣撃が止まる。

「貴様、何故反撃せぬのだ?」

 反撃……? ああ。
 考えてばかりで反撃を忘れていた。

「悪いな、少し考え事をしていた」
「決闘最中に考え事だと? 私もなめられたものだ」

 あー、こりゃ怒らせてしまったか。

「ここまで舐められたのは初めてだ。もう少しゆっくりと仕留めようかと思ったが、気が変わった」

 そう言うと、奴は身に覆った黒い布を脱ぐ。

「……!? お前、アンデッドだったのか」

 その姿は紛れもなくアンデッドそのものだった。

 なるほどな、長年生きていられるのはこういうことだったのか。
 
 髑髏の面に大柄な身体。
 正に不死の骸、不死の王という名に相応しい容貌だ。
 
「まさか我がこの姿を見せることになるとは……何百年ぶりであるか」
「何百年もあんな恰好をしていたのか……ご苦労なこった」
「この姿は我が認めた相手にしか見せん。貴様は幸運な男なのだよ」

 幸運ねぇ……正直、アンデッド程度造作もない。。
 魔王大戦の際に嫌と言うほど見たからである。
 
 魔王の手下にアンデッドは鉄板だった。
 その中には不死の力を持つアンデッドも存在したが、俺たちの敵ではなかった。

 だが、一つ言えるのは今まで戦ったアンデッドと比べたら奴は別格だという事だ。
 
 知力も戦闘能力も今までのアンデッドをはるかに凌駕している。

「ふむ、貴様はこの姿を見ても冷静なのだな」

 ゲッコウは冷静さを欠かない俺に少し驚いている様子だった。

「まぁな、アンデッドは見慣れていてな」
「そうか、今のご時世でお前みたいな人間がいたとはな。ここ数百年でアンデッドと渡り合えたのは神聖魔術師団の7人の使徒だけだと思っていたが……」

 神聖魔術団ねぇ……確かにあの時は大量に狩っていたから、アンデッドにとっては天敵だっただろうが……
 
 まぁ、まさかその7人の使徒の一人が此処にいるなんて思わないだろうな。
 
 と、こう色々と考えているとゲッコウは、

「ふん、だがまぁいい。この姿になった以上、貴様に勝ち目はないと思え!」

 再び戦闘モードへと入る。
 そしてゲッコウは突然何の迷いもなく刀を振るってくる。

「なっ!?」

 まるで別人かのような動きだった。
 怒涛の剣撃は俺の頬に傷をつくる。

 かわしきれないだと……

 速い、そして何よりスピードだけでなく力強さも増している。

「はははは! どこまで耐えられる? 逃げるだけしかできぬか?」

 調子に乗ってきたな……だが、これが恐らく奴の実力そのものだろう。

 そろそろ少しだけ力を解放するか。

 俺はゲッコウと少しばかり距離を置き、拳を握る。

 ゲッコウは当然のように俺に斬りかかってくる。

 そして奴が射程圏内に入った瞬間、魔力を一気に爆発させる。

「はっ!」
「なにっ!?」

 爆発で怯むゲッコウ。
 その隙に魔力を込めた拳で一気に相手の腹部に一発くらわす。

「ぐはっっっっっ!」

 ゲッコウは数十メートル先まで豪快に飛ばされる。

 ―――バタッッッ!

「ぐうううう……」
「おいおい、今の一撃で終わりか? だとしたら相当期待外れなんだがな」

 俺は頭を掻きながら奴の元へと近づく。

「なるほど……このような力を持っていたとは想定外だ」

 ゲッコウはすぐさま立ち上がる。

「ふっふっふ、面白くなってきた……ここまで心躍る戦は久々よ」
「ほう……そりゃ良かったな」

 するとゲッコウは一つの大きく長い刀を取り出す。

「まさか……これを抜く日がこようとは」

 鞘を抜くと刃の部分にはなにやら魔力が込められているようだった。

 魔剣……か? いや少し違う。そこらの魔剣とは魔力量が段違いだ。

「秘刀 スメラギ……再び我に力を与えよ」

 ゲッコウの唱えと共に刀が共鳴する。

 すごい魔力の流れだ。これは……オレも少々力を出さないといけないかもな。

「……我が認めし冒険者よ。次なる戦を始めようか」

 俺も魔力をグッと高める。

「ああ、魔剣だがなんだが知らんがオレもそろそろりきを出させてもらう。これ以上時間をかけるのも面倒だからな」

 緊迫感がさらに増す。
 それに伴い、奴の覇気も先ほどとは比べ物にならないくらいになっていた。




「さぁ……かかってくるが良い。冒険者よ!」

 

 こうして、二人の男の戦いは終盤を迎えようとしていた。
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