元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第4章 おっさん、祭りに参加する

第49話 盛大なお出迎え

 数日後、俺は特別休暇を終えて久しぶりの出勤となった。

「―――あ、レイナード先生。出張お疲れ様です」
「―――お疲れ~」
「ああ……どうも」

 他の講師陣には出張という扱いになっていたらしい。
 今時魔術講師でこんなに長期間の出張は珍しい。
 何かと怪しまれていないかと不安要素はあったが、問題はなかったようだ。

 さて……準備して面倒な授業をしに行くか。

 俺は素早く準備をして講師室を出る。

 学園内を歩いていると前より活気があるように思えた。
 アロン祭の影響だろうか? ホンニに行く前より騒がしいな。

 俺はいつものようなルートで担任を務める1年A組のクラスへと向かう。

「―――あ、おはようございます。レイナード先生」
「うむ」
「―――先生、おはようございます!」
「ああ」

 廊下を歩けば生徒に挨拶をされる。
 ここ数か月で極端に変わったことだ。
 
 怪しい目で見られていた当初からここまでの激変ぶり。
 人間はつくづく単純な生き物なのだと痛感する。
 
 そうこうしている内に教室の近くまで来た。

「怠い一日が始まるな……」

 そう言って扉を開ける。

 ―――ガラガラ。

 ―――パン! パン!

「レイナード先生! お帰りなさい!」

 教室に入るといきなりポッパーの音が鳴り響き、盛大に出迎えられる。

「これはどういうことだレーナ」

 後ろでコソコソしているレーナを見つけ、状況説明を促す。

「先生が学園に来るのが今日だと聞いてみんなで気持ちよく出迎えようってなったんですよ!」

 レーナよりも先にフィオナが説明をする。

 ちょっと学園を去っていただけで大袈裟である。

 それになにやら皆のテンションがいつもよりも一段階くらい高いように見える。

 なんだ? 祭りの影響でここまで変わるものなのか?

「大袈裟だ。そこまで長期間ではなかっただろう?」
「そんなことないですよ! レイナード先生がいなくて寂しかったんですから!」
「まぁ……俺は今の先生でも良かったんだがな」
「コラ、ガルシア!」

 横から出てきたガルシアをフィオナが止めに入る。
 
 前と変わらない光景だ。
 どうやら上手くやっていたらしい。

 それに今の先生ってなんだ……?

「あ、お帰りになられたんですね」
「ん?」
「あ、イラーハ先生」

 イラーハ先生? 誰だ?

 振り向くと一人の女性が立っていた。

 薄紫の髪色にオーシャンブルーの瞳、髪を一つに束ねた正しく美女と呼ぶにふさわしい女性だ。
 そしてこの人もデカい。
 なぜこうも色気の強い女性が周りに多いのだろうか? 疑問である。

「お初にお目にかかります。レイナード先生」

 丁寧な振る舞いで挨拶をしてくる。

「貴方が自分の不在時の臨時担任で?」
「はい、おっしゃる通りです。わたくしはイラーハ・シュタットゲイン。普段は錬金術講師をしております」
「レイナード・アーバンクルスです。不在時にはご迷惑を」
「いえいえ、皆さんとてもいい子ばかりでしたし楽しく授業ができましたよ」

 ほんわかとした女性だ。
 それでいて礼節もわきまえている。一緒にいると安心感を得られる女性……といえばいいのだろうか。
 とりあえず生徒にとってはプラスに働く先生だ。

「それで、これからイラーハ先生はどうするのです?」
「私はいつものように錬金術講師の仕事へと戻ります。挨拶に伺っただけですから。それに一応、副担任ですので……」
「そうだったのですね、忙しいのに申し訳ない……」
「いえ、後で不在時の授業内容をお渡しいたしますのでお待ちください」
「お手数をおかけします」

 イラーハはニコッと笑う。

「それでは私も授業があるますのでこの辺で失礼致します」

 イラーハはこう言うとフィオナたちと別れを交わし、教室を出て行った。

 と、そこへ入れ替わるようにハルカが飛び込んできた。

「お、遅れてすみません! ってまだ始まってない感じですか?」
「いや、もう始まっているが。初日から遅刻か?」
「す、すみません! 目覚ましが……じゃなくて寝坊で……」

 はぁ、初日からお前は……
 生徒の前で悪影響だろう……

 だがまぁいい。魔術講師となって初日ということで許すことにする。

「じゃあ、お前ら授業を始めるぞ」
「はい!」

 生徒たちは素早く席に着く。

「と、その前に連絡事項がある」

 俺は今日から副担任となったハルカを紹介する。
 レーナの時と同様、クラスがざわつき始める。

「ハルカ先生、魔術講師になったんですね! おめでとうございます!」
「え、あ、うん。ありがとう……」

 喜ぼうとしても喜びきれない表情だ。
 そりゃあ、俺の推薦で講師試験をパスしているのだからそうなるのも無理はない。

 しかしだが、この話は重要ではない。
 問題は次だ。

 俺は話題を転換させる。

「次が本題だ。お前らよく聞いておけよ」

 ざわついていた空気が一瞬で静寂の空気へと変わる。
 こういう所はさすが優等生。空気をしっかりと読んでくれる。

「オレが今から話すのは他でもない。魔技祭についてだ」

 話を切り出すと、フィオナたち生徒の表情は真剣身を帯びる。
 レーナとハルカの表情も真剣そのものだ。

「予め言っておくが、オレは魔技祭で優勝を狙っている。冗談じゃない本気だ」

 最初はコソコソと話し始めた彼らであったが、俺の表情が本気だということを察したのか話し声が聞こえなくなった。

「おそらくお前らもお祭りムードでテンションが上がっていることだろう。久々に学園に来てあちらこちらうるさくてビックリだ」

 段々と喋り方に威圧感が増していく。
 そんなつもりはさらさらなかったのだが過去の性からか自然となってしまうのだ。

 そして俺は彼らに言い放つ。

「よって今日の授業は魔技祭に向けてのクラス会議を執り行う。これは真面目な会議だ。心しておけ!」

 クラス内に電撃が走ったかのような沈黙が続く。

 全てはニート生活奪還のため。
 俺はどうしても勝たなくちゃいけない。

 沈黙が続く中、俺は一人だけ密かな闘志を燃やしているのだった。
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