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第4章 おっさん、祭りに参加する
第50話 始動
―――アロン魔道技術祭。
それは年に一度開催されるアロン祭の一大イベントである。
世界各国から人々が集まり、中にはこれだけを見に来る輩もいるくらいなので驚きである。
アロン祭ではいくつかの催し物が行われるが、アロナードが主催する魔道技術祭は別格の人気を誇っている。
アロン祭は二週間に渡って行われるビッグフェスティバルなわけだが、その中の一週間が魔技祭に使われるということで最も力を入れているのが理解できる。
故に世界でも有名な祭事としてその名を馳せているわけだ。
と、まぁ知名度はこんな感じなのだがルールは至って簡単だ。
クラスが一つのチームとして参加し、後は順に決められた競技に参加するだけ。
学年関係なし。負ければその場で終わりのサバイバル形式だ。
種目は多岐で剣術、武術、空術、もちろん魔術も扱った競技が行われる。
そして俺が目を光らせているのはなんといっても優勝賞金だ。
優勝したクラスの生徒は国王陛下に一つだけ願いを言うことができ、講師には賞金とプラスアルファで願いを聞いてもらうことができる。
正直、祭りの景品にしては相当豪華だ。
毎年この魅力的な景品を獲得するべく講師も生徒も必死になるというわけだ。
これで優勝することができれば、ニート生活に戻れる。
一攫千金。しかも年に一度だ。
これはやるしかない!
俺のやる気は頂点に達していた。
* * *
「と、いうわけで早速、出場選手とその競技を決めるとしよう」
本当は授業をしなければならないのだが、俺の意識は完全に魔技祭にあった。
どっちにせよ自習しかしない。
ただフィーネにはそれでもいいから形態だけはしっかりとしてほしいと言われた。
自習をやらない時点で掟破りを侵しているわけだが、一日二日やらなくてもフィーネにはバレないだろう。
バレなきゃ問題はない。
多くの盗賊や密売人はこの言葉を根底に動くわけだが、まったくその通りなのだ。
見られなければ罪としてとらわれない。下衆だがそれが今の世の中だ。
ということで今日は授業を止めて魔技祭に意識を注ぎ込むことにする。
「時にレーナ、競技は何があるのだ?」
「あ、はい。一応決まっているのは……」
レーナは次々と競技名を出していく。
「―――以上ですね」
「うむ、ご苦労」
とりあえず今分かったことは全部で6つの競技が存在するということだ。
大まかにカテゴリーで言えば、剣術、体術、空術、錬金術、魔術、総合の6つだ。
総合は一度にまとめて術を行使する、いわば規定内ならなんでもありの競技というわけだ。
うーむ……とりあえずはこいつらの得意分野を把握せねば始まらんな。
早速、脳内で作戦を模索し始める。
「とりあえずだ、レーナが言ってくれたように競技は6つ。それぞれ分野が異なる故、お前らを得意分野ごとに分ける必要がある」
「あ、あの先生。よろしいですか?」
手を挙げていたのはクラスの委員長フィオナだ。
「フィオナか。どうした?」
「はい。えっと……この魔技祭は全員参加なのでしょうか? それとも選抜ですか?」
なるほど。確かに俺も同じ疑問を持っていた。
同じ人を複数回出せるのであれば、一人ずつ能力を確認する必要はない。
「レイナード先生、どうやら規定にクラス全員参加が必須のようですよ」
レーナがアロン祭に関する書類を見ながら話す。
「そうか。分かった」
まぁ想像の範囲内だ。
さすがにそんなに甘くはないのは承知である。
だがここで一人の男子生徒が挙手をする。
「先生。もう一ついいですか?」
「ん? 今度はなんだ?」
「えっと、その……もちろん3年生や2年生も参戦するんですよね……?」
「ああ、高等部は学年関係なしに全クラス参加だ」
「そ、そうですか……」
「どうした? なぜ暗い顔をするのだ?」
さっきから感じていたのだがクラス全体が勝ちに行くムードとは少し違うような印象があった。
こう、なんというかやる気はあるのだが不安が残っているような感じだ。
だがそれも大体見当はつく。
「学年の能力差か?」
すると彼はコクリと頷く。
やはりそうか。この雰囲気はこれが原因か。
確かに先ほど講師室でも同じようなことが講師間で話されていた。
だがしかし、はっきりと言わせてもらおう。
魔術や剣術に年齢など関係ない。
熟練度による差があるという意見も出るだろうがそんなのはどうとでもなる。
そう、俺にかかればな。
確かに学年別じゃないのは疑問な点だ。理解はできる。だが規定である以上、仕方がない。
しかしながらこんな雰囲気では初手を打てないな。
ここは……
「なぁお前ら。一つ聞くが願いはないか?」
「―――願い……」
「―――私は新しいマジックアイテムがほしいわね」
「―――俺は上級魔術の秘伝書だな」
「―――オレは腹いっぱいにうまいもん食いたいな」
クラス全体が願いについてガヤつき始める。
「よし、もういい。お前らに願いはあることは分かった。じゃあそれを叶えてみたくはないのか?」
願いはいくらでも出てくる。だがそれを叶えるという話が出てくると途端に静かになる。
「でも先生。相手は上級生です。私たち一年生は知識的にも能力的にも不利なんですよ?」
「だからどうした?」
「えっ……?」
「不利だからなんだ? 勝てないとでも言うのか?」
少々圧迫感が強くなってしまうが致し方ない。
これも勝利を得るためだ。彼らにはやる気になってもらわないとならない。
「言わせてもらうが、そんなことじゃ立派な魔術師とやらには絶対になれんぞ。魔術師が対峙する相手は特殊な場合を除いて自分より常に格上の相手だ。上級生だから、知識量が違うからで諦める口述になるのなら今すぐ魔術師になることを断念しろ」
威圧感を添えて彼らに放つ。
「だが……お前たちはまだ何もしらない。これから覚えていくことが山ほどある。その一つがこれだ」
というと俺は自分の胸に手をあてる。
するとリーフが、
「心……ですか?」
「そうだ。今回の事で思ったのはお前たちはまず屈強なメンタルを鍛えることが重要だということだ。格上の相手に向かう姿勢、それでいてどうやったら勝利を掴めるか、冷静に試行錯誤できる能力。魔術師には大事なものだ」
彼らは俺の話をじっと聞く。
よしよしいいぞ。さっきよりかは表情に厚みが出てきた。
俺はさらに続ける。
「よってだ、今回はお前たちにそれのなんたるかを指導してやる。もちろん負ける気はない。オレがお前らを勝たせてやる。ついてきたい奴だけついてこい、分かったか!」
「はい!」
声にも張りが出てきた。
これならなんとかなりそうだ。
「よし、では早速訓練だ! レーナ、ハルカ、補助を頼む」
「了解です!」「わ、分かりました!」
いつもと違う俺の姿にハルカは少し驚いているようだ。
レーナは……いつもと変わらんな。
俺は準備をするべく、教室を去る。
こうして俺たち1年A組は魔技祭優勝に向けて一歩、歩き出すのであった。
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