元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第4章 おっさん、祭りに参加する

第53話 王都散策


 俺の視線の先には一人の少女の姿がある。
 フィオナだ。

 見た感じ彼女が最後に試験を受けるようだった。

 フィオナは我がクラスの学級委員長にして主席入学をした秀才だ。
 全体的なステータスで見れば間違いなくクラス、いや学年トップの力を有している。
 要するにクラスの主力筆頭というわけだ。

 彼女の強みは臨機応変な判断とその冷静さだ。
 着々と試験をこなしていく姿を見るからに彼女は二つの強みを持っていると感じた。
 リーフとガルシアの強みを二等分したような感じでどちらともバランスが取れている。

 間違いない、フィオナは確実に上の連中と張り合える実力を持っている。
 後はどのタイミングで起用するかが勝負の分かれ目だ。

 頭の中で少しずつ構図が出来上がってくる。

 だが一つ、問題点となりえるものが浮上してきた。

 フィオナたちは確かに優秀だ。
 だがその卓越した能力である故に周りの人間が波長を合わせられるかどうかという所が怪しい。

 競技は完全個人戦というものは少ない。
 大体の競技が複数人絡んでくるものばかりだ。

 それに現代魔術師は個人技より団体技の方が重要視される。
 一人で戦況を打開できる魔術師なんて歴代でも数えるほどしかいない。
 これが個人技より団体技が重んじられる理由だ。

 団体で動けない魔術師など使い物にならない。
 恐らくこのような理念が競技に反映されているのだろう。

「中々骨が折れる作業だな……勝利するためには仕方ないことなのだが」

 俺は今まで一人で全てをこなしてきた。
 逆に言ってしまえば俺の頭の中には団体で動くなんて考え方はなかった。

 行動は神魔団のメンバーとのミッション以外は一人が基本だった。
 団からの命令で人生で一回だけ一般パーティーと組んだことがあるのだが、あまりの鈍足さにイライラしたことを覚えている。

 それ以降はずっと一人で任務をこなし、結果を出してきた。
 現に偉人の学術書では『偉大なる魔術師』というタイトルで俺の名が筆頭に出てきたことが証明だ。

 なので尚更考えないといけない。

「ふぅ……個人での立ち回りを教えるなら楽なのだがな」

 思わず溜息が出てしまう。
 すると、

「あ、レイナード先生。お疲れ様です!」

 声をかけてきたのは丁度クラスのデータ処理を終えたハルカだった。

「すまないな。生徒全員分頼んでしまって」
「いえ、こんなの朝飯前ですよ」

 表情から察するに本当に余裕なようだ。
 30人弱の生徒全員の能力を素早くデータベース化するのはそんなに容易いことではない。
 正直、雑務に関しては俺よりできるんじゃないかというくらいだった。

「それで、先生。約束覚えていますか?」
「約束? ああ、王都へ行きたいと言っていたな」
「はい! 私はもうお仕事をすべて終えましたので……」
「え? 確か机の上に大量の書類が乗っていたのを先ほど見たんだが……?」
「あ、それは全部終わらせましたよー」

 ま、マジか……
 俺は雑務マスターのレーナに手伝ってもらって数日くらい時間をかけたのに……

 時間を確認するとデータを取り終えた時刻から1時間がやっと経過したところだった。

 こいつ……化け物だ。

 レーナといいハルカといい俺は優秀な助手を持ってしまったと改めて実感する。

「先生はどうですか? まだお仕事が残っているようでしたら待っていますよ」
「え、あ、ああ」

 仕事なんて山ほど残っている。そりゃあもう目が回るくらいに。
 提出締め切りが近い書類もあるのだが彼女を待たせるわけにもいかない。
 
 で、あるならば……

「いや、オレはもう大丈夫だ」

 仕事放棄。
 これしか選択肢はなかろう。

「本当ですか!? 担任講師ってお仕事いっぱいあって大変だとお聞きしたんですけど先生はお早いんですね。さすがです!」
「あ、ああ。当然だ」

 胸が締め付けられるような感覚だ。
 嘘偽りを今まで言ったことがない俺にとっては初めての感覚だった。

 これが罪悪感というものなのか……

 俺はそのまま残っている仕事を放棄し、王都へ繰り出した。



 * * *



「綺麗ですねぇ~」
「そうだな」

 アロン祭がもうすぐということもあって活気がさらに高まっていた。
 綺麗な洋風の街並みに色とりどりのライトが街を照らしている。

 露店の数も今より倍に増え、ダイヤや希少鉱石などで装飾された飾りつけが施されている。

「この風景を見ていると母国の夜市場を思い出します」
「この前見たやつか」
「はい。やっぱり賑やかなのはいいですね」

 ライトに照らされ、ハルカの煌びやかな黒髪がさらに美しく見える。

「さてハルカ。まずどこから……」
「あ、せんせいせんせい! あれ凄くおいしそうですよ!」
「え、お、おい」

 無理矢理腕を引っ張られた先にあったのは甘く味付けされた薄皮の生地に果物やクリームが巻かれたお菓子の露店だった。

「先生、これ一緒に食べませんか?」
「いや、オレは……」

 と、言ってる間に俺の分まで買われていた。

「おいハルカ、オレはほしいなんて……」
「いいじゃないですか。一緒に食べましょ」

 ハルカの勢いに押され、なすすべなく従うことになった。
 広い噴水広場へと導かれ、そこにチョこんとあったベンチに腰を下ろす。

「それじゃあいただきまーす」

 ハルカはチョコクリームでコーティングされた果物が巻かれたクレープを一口。

 ―――モグモグ。

「お、おいしい……先生も食べてみてください、美味しいですよ!」
「あ、ああ」

 俺も言われるがままにクレープを一口。

 ―――モグモグ。

「ん、おいしいなこれ」
「でしょでしょ! 美味しいですよね!」

 基本甘い物は食わない俺にとっては初めて美味しいと思えるお菓子だった。
 一口二口とペースが上がっていき、一気に無くなってしまった。

「美味だった」

 俺が全部食べ終わるとハルカは、

「さて先生、次行きましょ」
「ん? 今度はどこへ」

 またも手を引っ張られる。

 その後、露店の食べ物を網羅したり服を見に行ったりして王都を満喫した。
 その中に俺の意志で行った店は一つもなく、ただひたすらにハルカに振り回されただけだった。

「はー満喫しましたね」
「そ、そうだな」

 クタクタだ。
 もう何度この景色を見ただろうか。
 あっちにいったりこっちにいったり非常に疲れる数時間だった。

 帰ったら即寝よう……これじゃあ明日は確実にお陀仏コースだ。
 俺はぜーぜーと荒い息をたてながら歩く。

 それに対してハルカはまだピンピンしていた。
 これが若さの差と言うやつなのか?

 そう考えると自分がいかに年をとったかが分かる。
 35ともなれば段々と動かなくなってくる。
 年をとるということは怖いものだ。

「あの、今日はお付き合いさせてしまってすみませんでした」

 途中から死にそうな表情をしていたからかすぐに謝罪をしてきた。

「いや、問題はない。仕事の疲れが少しあっただけだ」

 少しシュンとするハルカを慰める。

「でも今日はすごく楽しかったです。いっぱい王都の事も知れたので」
「そうか、それは良かった」

 案内は全くできなかったが、楽しんでもらえたようで何よりだった。
 俺も久しぶりに羽休めができて気分がすっきりした。
 今なら仕事が捗りそうな気がする。

 するとハルカは俺の二歩先へと進み、ゆっくりと振り返った。

「先生、今日はありがとうございました! これからもよろしくお願いしますっ!」

 ハルカは笑顔で元気よくこう言った。

 月夜の光に照らされた彼女の姿は美しいというよりは凛々しく、そして誰よりも輝いていた。
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