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第4章 おっさん、祭りに参加する
第55話 予行演習
カンカンと照り付ける日差しの中、俺たちは魔技祭に向けて特訓をしていた。
「あと30分で模擬戦に入る。各自準備しておくように」
「「「「「はい!」」」」」
我々1年A組はより当日と似た環境で練習を行うため、隣のB組と共同練習をすることになった。
場所は学園敷地内にある特設会場で当日は行われる。
まだ準備中で練習では使えないため、仕方なく演習場で行うことになった。
「皆さんはりきってますね」
「ああ、良い傾向だ」
「そういう先生が一番はりきっていたりして……」
ハルカがニヤリと笑ってこっちを見る。
「何を言う。オレはいつだって本気だ」
いや、正直今だけである。
金と言う目標で動いているなんてことを知られたら面倒だ。
いつもやる気ない人間がいきなり気合いを入れ始めるなどおかしな話。
だからあまり表情に出さないよう気を配っている。
「本当はまた別に目的があったりして……」
「っ……!」
ギロっとした目で見るハルカ。
こいつ……何かを察しているな。
というかもうばれていたりするのか?
「ハルカ、もうやめなさい。先生が困っていますよ」
「すみませーん」
ナイスレーナ!
さすができる女は違う。
「で……本当の目的はなんですか?」
「はぁぁぁ?」
全然ナイスじゃなかった。
せっかくいい方向へ傾いていたのになぜ戻す?
どうにも分からん。そんなに俺が気合い入れているのが変なのか?
「いや、別にきまぐれだ。あ、そ、そう! オレはこういう催しが割と好きな輩なのだ」
「こういうって……お祭りとかですか?」
「ああ! そうだとも」
頼む……これで理解してくれ。
心の中でそう願う。
するとレーナは、
「そうだったんですね! 先生がお祭り好きなんて意外です」
「そ、そうか?」
「はい! いつもけだるげにしているので」
「ま、まぁこんなオレでも好きな物の一つや二つあるさ!」
はぁ……ようやく理解してもらえたようだ。
ここで俺の野望がバレたら面倒な事態になる。
とにかくあまり熱くなりすぎないようにしなければ。
と、ここでラルゴが俺の元へとやってくる。
「レイナード先生。そろそろ始めましょうか」
「ん? ああ、そうだな」
疑似的な競技会場の準備は完了していた。
生徒たちもそれぞれウォーミングアップを済ませられたようだ。
「よし、じゃあお前ら集まれ!」
A組、B組の生徒が颯爽と集まる。
「これより2組合同の予行演習を行う。本番同様のルールで行うので当日に向けて感覚を掴む練習をしてもらう」
そしてラルゴも彼らの前に立ち、話し始める。
「一つ、注意していただきたいことはケガだけは絶対にしないこと。危険行為は即失格扱いになりますので頭の中に入れておいて下さい。何事もフェアプレイですよ」
「「「「「はい!」」」」」
「それではまず、空術競技から始めるので参加者の生徒は所定の位置に集まってください」
生徒たちはぞろぞろと競技開始地点へと移動を始める。
「最初は空術か」
空術競技。それは8人1組で行われるレース型の競技である。
予め設営されたコースの中で競技が行われ、一周800m。
一人一周を8人で競い合うというリレー形式だ。
この競技で求められるのは速さももちろんのことなのだが、一番重要なのは巧みな魔力操作だ。
コースは直線だけでなくカーブもある。
空術というのは割と自己操作が難しい術で一歩間違えれば自らが引き飛ばされてしまうほど繊細な技術が必要だ。
特にこのレースは直線とカーブの組み合わせだ。
猛スピードで直線を飛べてもカーブの際にブレーキがかからずそのままコース外なんてこともある。
なので爆速で飛べても技術がなければ意味がない。
勝負の決め手はそこになるだろう。
「レーナ、ハルカ、B組のデータ収集は頼んだぞ」
「はい、お任せを」
「わかりましたぁ!」
「オレは少し日陰で休憩させてもらう。このままだと死ぬ」
「わ、わかりました。無理はなさらないでくださいね……」
熱気がムンムンとしている。
恐らく今年一番の猛暑日だろう。
汗がとにかく止まらない。
よく立っていられるなというほどであった。
「はぁ……」
俺は校舎の建物を盾に日差しから身をガードする。
「観戦にしては少し遠いが、まぁいいか」
俺はスタート地点に立つ生徒たちの様子を眺める。
「さて、どういう展開になるのだろうか」
我が1年A組のメンバーはリーフを主力にした空術適性のある8人をチョイスした。
主力メンバーのリーフは魔力の扱いに関してはピカイチだ。繊細な操作もできる。
スピードは中の上くらいであるがカーブで一気に勝負を仕掛けることが可能であろう。
そしてもう一人、空術の主力メンバーにセリナという女子生徒がいる。
彼女はリーフほどの繊細な魔力操作ができるわけではないが、スピードはリーフよりも速い。
いわゆるバランス型だ。大いに期待できる。
あとは爆速重視の男子勢3人と魔力操作が平均よりも少し上の女性陣3人を加えた計8人が我がA組の選抜メンバーだ。
そして対するB組だが、これまた厄介な奴が出場してきた。
それはB組の主力メンバー、リアム・リンドリウムだ。
彼はB組内ではトップを張っている一人であると言っても過言ではなく潜在能力はとてつもないものを持っているとのことだ。
そしてもう一人、双子のお姉さんであるルーシア・リンドリウムも要注意人物として挙げられる。
二人とも基礎的な能力値はとても高くリアムは空術、ルーシアは剣術と魔術とそれぞれ得意分野が異なる。
他の能力も平均値以上なのでなぜA組にいないのか不思議なくらいだ。
他のB組の生徒も空術の才に秀でたメンバーが揃っている。
恐らくスタッツではこちらが押されている。
だが今回は試しの一戦だ。なのでフルメンバーで戦うつもりは端からなかった。
生徒たちにも感覚を意識しつつ相手チームの分析もしてこいと指示も出してある。
「そろそろか」
準備ができたようだ。
先陣はいきなりリーフが担当する。
そして相手チームもいきなりリアムを先陣に投入してきた。
中々面白くなりそうだ。
「それでは位置についてください」
リーフはグッと身構える。
リアムはなんだか余裕そうな表情だ。
「よーい」
この一言で場の空気がしーんと静まり返る。
こうして予行練習は幕を開けたのだった。
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