58 / 127
第4章 おっさん、祭りに参加する
第57.5話 例の秘薬(前)
―――この話は1年B組との予行演習が行われる前、生徒たちのデータ分析をしている最中に起こった出来事である。
「くそっ、ずっとデスクワークだと肩が凝って仕方がない」
俺は我がクラスA組の生徒全員のデータを分析していた。
データ取りは案外時間をかけずに終えることができ、優秀な助手を持って非常に助かったわけだが本題はここからであった。
「むぅ……中々偏りがあって厳しいな」
そう都合よく競技ごとに選手を上手く当てはめられるわけもなかった。
どの生徒も偏りがあり、チーム編成をしてみたとしてもどうしてもどこかに能力の穴が開く。
もう丸二日こんな感じだ。例えるなら複数人で行う超難関のパズルゲームを一人でこなしているような気分だ。
ずっと座っていたためか腰が痛い。いや、腰だけじゃないな。眼も疲れてるし、肩もだいぶ凝っている。
身体はほぼほぼ限界に達していた。
「まずいな……このままだと栄養失調で死ぬ」
極め付けは何も食べていないということだ。
元英雄で魔王を一人で討伐した前代未聞の負けなし最強キャスターでも中身は人間。
何も飲み食いしなければ餓死もするし脱水症状にもなる。
くっ、こんなことなら魔族に魂を売って人間やめればよかった。
こんな考え方も出てくるくらい追い込まれていたのだ。
「はぁ……」
俺はデスクの上で伏せる。
と、その時胸元でコロンと何かが落ちた音が聞こえた。
「ん? これは……」
落ちていたのは謎の青い液体が入った小瓶だった。
胸ポケットにずっと入れたままそのままにしていたのだろう。
「確かこれは”あのバカ”に貰ったやつだな」
あのバカとは隣のB組の担任でありいつもどこか彼方へ突っ走っている自称有能魔術講師、ラルゴ・ノートリウムのことだ。
(確かこの小瓶に入っている液体は秘薬かなにかだと言っていたな)
一応言っておくが俺は今までで一度もポーションを始めとする回復薬を口にしたことはない。
なぜか? 俺には不必要なモノだったからだ。
まず今までの戦いで肉体的なダメージを負ったことは一度もない。
誰も俺に触れずして無残に散っていったからだ。
なのでこのようなものを口にするのは人生で初めて。正直に言うと少し抵抗がある。
「これ大丈夫なのか?」
市販のポーションとかならまだしも”あいつ”から貰ったものである故に不安度が増す。
しかしだ。今はそんな甘いことも言っていられない。
身体がボロッカス寸前。このまま同じことをしているとどうなるか分からない。
くっ! まさかあんな奴に貰ったものに頼ることになるとはな。
不本意だが仕方ない。
俺はグッとこらえ、その青く澄んだ謎の液体を飲み干す。
―――ゴクッ!
ぷはぁ……苦い!
味はただひたすら苦いだけだった。
道端に生えている薬草みたいな味だ。
俺は飲んだ後、しばらく身体を安静にしていた。
すると、
「むっ? 身体が……」
みるみる回復していく。
身体がどんどん軽くなり、腰や肩の痛みが無くなっていく。
「バカな、まだ数分だぞ」
超即効性のある薬だ。
飲んでから5分足らずで身体は完全に回復した。
「これなら……まだやれるぞ!」
そう思い、再度仕事にとりかかろうとした時であった。
身体に少しばかり異変を感じる。
なんか変だ。
アソコの部分に感覚がない。
しかもだ、なにやら胸元がやけに重い。
そして長くないはずの髪が俺の胸元まで垂れ下がっている。
ま、まさか……
俺はすぐに講師室の隅にある鏡を見た。
なっ!?
驚愕。鏡の中には見ず知らずの女の顔が映っていたのだ。
「お前誰だ……?」
しかし講師室には俺以外誰もいない。
と、いうことは……
「まさか……オレか!?」
間違いない。
この長い髪、ぱつんぱつんに張った大きな胸、そしてこの細いくびれ。
俺が……女になっている……
しばらく俺は情報整理に追われた。
信じられないことが起こり、冷静さが欠かれる。
落ち着け……おそらくこうなったのはあの薬の影響だ。恐らくあの薬には性転換の作用がある何かが入っていたのだろう。
とりあえず、”あのバカ”に突き詰める必要があるみたいだ。
そしてちょうどその時、その”バカ”が講師室へと入ってきた。
お、ナイスタイミングだ。
「おい、ラルゴ」
俺はすぐさまラルゴの元へ走り寄る。
「ん? 見ない顔ですねぇ。ここに何か用でしょうか?」
「何か用でしょうかだと? キサマ、オレに変な薬を渡したな?」
「変な薬……? あ!」
やっと気づいたか。
と、思ったが、
「薬剤師の方なんでしたか! わざわざご苦労様です」
「ああん?」
通じていなかった。
とりあえず誰かが来る前にこの姿を戻してもらわないといけない。
俺はこの”バカ”に事情をすべて話した。
「うっぷす! なんとまぁ!」
「くっ……!」
いちいち腹が立つリアクションだ。
なぜこんなにも相手をイライラさせることができるのか、ある意味天才だわこいつ。
「とにかく、早く戻せ。でないとここで消し炭にするぞ」
「いや、まぁまぁ落ち着いてください。レイナード先生。案外可愛いですよ?」
「は? オレは可愛さなど微塵も求めていない。これ以上調子をこくようなら……」
俺が凄い形相で睨むと流石にまずいと思ったのかラルゴの顔が真剣になる。
「いや、まさかこんなことになるなんて私も思わなかったのですよ」
「なんだと? どういうことだ?」
「その……その薬はイラーハが作った試作薬だったんですよ。快楽の力で身体を癒す究極の薬を作るためのね」
「イラーハ……」
その名前、どこかで聞いたことがある。
んっ? まさかあの錬金術の……
思い出した。
俺がハルカの母国、ホンニに出向いている最中に開いた我がA組の臨時担任をしてくれていた女性講師だ。
確か普段は錬金術を教えていると言っていた。
「おい、今その女はどこにいる?」
「えっ? 今は多分錬金術生がいる別棟にいるかと」
「分かった。お前も来い!」
「え? ちょちょちょっとレイナード先生!?」
俺はラルゴの腕を無理矢理引っ張り、イラーハを探しに講師室を出た。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。