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第4章 おっさん、祭りに参加する
第59話 目覚めたら……
疲れで身体が思うように動かない。
年齢を追うごとに貧弱化している気がする。
いくら天才と言われし者でも年を取れば老いるし、いつか死ということにも向き合わなければならない。
身体が人間である以上、その法則には決して逆らえないのだ。
そろそろ起きないと……
そう思っていても中々眠りから覚めない自分がいた。
起きようという意識はある。でも身体が言うことを聞かないのだ。
だが、一つ疑問に思ったのは水が流れる音が聞こえたことだ。
誰かがシャワーを浴びているかのような音だ。
(ん? 確か講師室にシャワールームなんてないはずだが……)
でもやはり聞こえる。
いったい何の音なんだ?
俺は気になり始めた反動で目を開けることができた。
「ん……? 天井?」
目の前に見えたものは見覚えのある天井だった。
まさか、オレの家か!?
ゆっくりと身体を起こし辺りを見渡すとそこは紛れもなく自分の家だった。
服装は講師服のままで着替えてある様子はない。
(オレはいつ帰ったんだ? 確かさっきまで講師室のデスクで寝ていたはずだ……)
寝起きということもあってデータ処理が上手くできない。
あ、そうだ時間!
俺はすぐさま手元の懐中時計で時間を見る。
「なっ……! もうこんな時間か!」
退勤時間からすでに数時間が経過していた。
おそらく俺は学園の閉鎖時間まで爆睡しており、誰かに運ばれたと考えるのが一番妥当だ。
しかし誰だ? 家に運ぶといっても俺の住処を知っているのは今の所フィーネだけだ。
あの童顔ババアはこんな面倒なことをするような人間ではない。かといって他の人に運ばれてくるのもあり得ない。
実に謎だ……
と、今の状況を整理していると再びシャワーの音が浴室の方向から聞こえてきた。
(そうだ。オレはこの音で起こされたんだ)
俺は音のする浴室の方へと向かう。
「電気がついている……誰かいるな?」
恐らく俺をここまで運んでくれた人だろう。
だんだんと目が覚めてきて思考力が戻ってくる。
そして再度部屋中を見渡すと見違えるように綺麗になっていたことに気付いた。
「マジか……最近忙しくて散らかっていたはずなのに……」
目覚めにより視野が広くなり、周りが鮮明に見えてこないと気付かなかった。
家の掃除なんてめったにやらないし、する気もなかった。
なんだかゴミやらなにやらで散らかっていたのがウソみたいだ。
(一体誰なんだ?)
俺は浴室の前にある脱衣所までそっと移動した。
誰かがシャワーを浴びている。
シルエットは髪が長く、スタイルがよい人のようだった。
(まさか女か?)
そのまさかだった。
俺は脱衣所にあった洗濯籠の中を見てすぐさま確信した。
これは……女性用下着とブラジャーだと?
花柄が描かれており可愛いリボンのついたピンクの下着だった。
女性らしい可愛らしい下着で思わず手に取ってしまった。
「これが女性用の下着か。初めて見たな」
つい手に取り、上にかざした時だった。
「ふふふ~ん♪」
「あ……」
鼻歌を歌いながら全裸姿で浴室から出てきた。
そしてすぐさま目が合う。
「レイナードせんせい? 一体何を……」
「れ、レーナ……」
浴室から出てきたのはまさかのレーナだった。
そしてレーナの目に映っている俺は自分のパンツを天に掲げている変態そのものであった。
「い、いやレーナこれは!」
遅かった。この姿を見られたら何も言い訳ができない。
レーナはこの上なく顔を真っ赤にして、
「さ、さ、最低です! 先生にそんな趣味があったなんて!」
「いや、違う誤解だ。いつの間にか自分の部屋にいたからそれで……!」
「もう! そんなことより早く出て行ってください!」
「は、はい……」
レーナの怒号に思わずその場から逃げ出してしまった。
あんなに怒っている所を見たのは初めてだ。
いや、でもまぁ仕方がないか。
確実にあの時の俺、犯罪者そのものだったからな。
その後、俺はすごく反省をした。
(後でしっかりと謝ろう……)
しばらくするとレーナは私服に着替えて脱衣所から出てきた。
俺は真っ先に謝った。
「れ、レーナ。さっきはすまなかった。いつの間にかこんなことになっていて少し驚いたんだ」
「い、いえ。こちらこそ騒いですみませんでした。お風呂も勝手に使ってしまって……」
少し激情しすぎたのかレーナも謝罪をしてきた。
なんだか申し訳ない気持ちが自分の中を駆け巡った。
「それで……オレをここに運んでくれたのはレーナなのか?」
俺は彼女にこう問うとすぐにコクリと首を縦に振った。
「そうです。フィーネ先生から連れていくよう頼まれて住所も教えてもらったんです」
(やはりフィーネの仕業だったのか)
「そうか。迷惑をかけたな」
「いえいえ、お気になさらず。あ、そういえば夕ご飯作ったんですよ」
「ほ、本当か? 助かる!」
レーナは冷蔵保管庫から手料理を取り出し、魔力レンジで温めをする。
「疲れているだろうに手間をかけてすまない」
「いつも私たちのために頑張ってくれるお礼ですよ。私も仕事の面で助けられている事が多いので」
助けてるといってもレーナが仕上げた書類の整理など微々たるものだ。
実際一番頑張っているのはレーナと言ってもいい。ハルカも最近は仕事内容を覚えてきて着任当初の俺よりすごい働きを見せている。
総合的に言えば俺より助手二人の方が圧倒的に優秀なのだ。
「どうぞ。レイナードの冷蔵倉庫にあった食料だけで作りました」
「おお……これは!」
到底俺の料理スキルじゃ作れそうにないものばかりだ。
しかも当分買い出しに行っていなかったためほとんど食材がなかったはずなのにこの豪華さ。
何もない所から豪勢な料理を作り出す。これこそまさに魔法だ。
俺はまずメインディッシュの魚の煮つけを口に運ぶ。
―――パクッ、モグモグ
「う、美味い……」
「本当ですか? よかったです!」
ああ、本当にお世辞抜きで美味だ。
前にアルフォート家にお邪魔した時にもレーナの手料理を食べたかやはり腕が良い。
普通に神聖魔術団の専属シェフにも引けをとらない実力だ。
「流石レーナだ。関心するほどの料理の腕だ」
「そんな……私なんか大したことないですよ。でも美味しいと思っていただいて嬉しいです」
本当に嬉しそうな笑顔を見せるレーナ。
俺はレーナの料理をペロリとたいらげてしまった。
「美味しかった。ありがとうレーナ」
「お粗末様です。いい食べっぷりでしたね」
「腹を空かしていたからな。こんなに美味い料理ならいくらでも食えるさ」
「も、もう……大袈裟ですよ」
レーナは少し顔を赤くさせ、俺から視線を逸らす。
普段の職場ではあまり見せない一面だ。
すごく新鮮で年相応の女の子と言う感じだった。
「ところでレーナはいつまでここにいるのだ?」
「そろそろ帰りますよ。今時間を……」
そういって時間を確認すると赤らめていたレーナの顔が一気に真っ青になる。
「れ、レイナード……」
「ん? どうかしたのか?」
「帰りの……帰りの馬車に乗り過ごしました……」
「は?」
時間はとっくに馬車の最終便を過ぎていた。
俺に気を取られて時間意識が薄くなっていたのだろう。
レーナがそのようなミスを簡単にするとは思えない。
恐らく疲れなども相まって他のことが考えられなかったのだ。
改めて悪いことをしたなと思う。
するとその直後にレーナが、
「あ、あの……レイナード先生。今日、泊めていただけませんか?」
男の家だというのにナチュラルにそういうレーナもあれだが俺に断る理由はなく、この日だけ彼女を泊めることにした。
「わ、分かった……」
少し戸惑いながらOKサインを出す。
そして俺たちは一夜限りではあるが、一つ屋根の下で一緒に過ごすことになったのだ。
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