63 / 127
第4章 おっさん、祭りに参加する
第62話 追跡者
カーテンから漏れた強い日差しが俺を目覚めさせる。
少し頭痛がして関節に痛みがある。
俺たちはあの後、夜遅くまで晩酌をしており寝たのはほんの数時間前だ。
(二日酔いか? 頭が……)
それにしても身体が重い。なんだか誰かに潰されているかのようだ。
(身体が動かん……どうなっている?)
俺はそっと目を開けると目の前にレーナの姿が。
「……!?」
俺の上でうつ伏せで寝ているレーナ。すやすやと寝息を立て、熟睡している。
(どうなっているんだこれは……)
昨日の記憶がごっそりとない。レーナと共に晩酌していたのは覚えているが酔いが回ってから俺がどうなっていたかは全く記憶にない。
ちなみに俺はそこまで酒に強いわけではない。対するレーナはすごく強かったのでグイグイといっていたが俺はすぐにバテた。
(飲みすぎだったか……)
とりあえずこのままじゃ身動きが取れないのでレーナを起こすことに。
「レーナ、起きてくれ。動けない」
「ん、んんん?」
俺の声に反応してレーナがそっと目を開ける。
そして目の前にある俺の顔をみるなり慌ててその場から離れる。
「え、あっ、ご、ごめんなさいレイナード!」
「あ、ああ……」
「私一体どうなって……確か布団で寝ていたはずなのに……」
そうなのか? 確かに横を見ると布団がしっかりと敷かれてある。
そこで寝ていたにも関わらず俺の腹の上で堂々と熟睡なすっていたということは相当な寝相の悪さだ。
「寝相……悪いのか?」
「ふ、普段はそんなことないんですよ!? た、たまたまですたまたま」
顔面を真っ赤にされながらそう言われても説得力は皆無だ。
いつもキチンとしているレーナも日常はそんな感じなのか……意外だ。
「と、とりあえず何かご飯作りますね」
「お、おう……」
寝起きというのに素早い行動だ。
時刻は昼前。あっという間に食事の支度が出来上がった。
「お、おお……これまたすごいな」
寝起きとは思えない豪勢な食事の数々。
家事の腕前に関してはホントに尊敬する。一人暮らしを始めて結構経ったが未だにまともな料理も作れない上、部屋は散らかり放題だ。
(彼女のこういうところは見習うべきだな)
「ん? どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。いただきます」
俺はレーナの料理を一口、二口と次々と口の中に入れていく。
やはり美味しい。毎日でも作ってほしいくらいだ。
「ど、どうでしょうか?」
「うん。すごくおいしいよ。流石レーナだ」
「そうですか……よかったぁ。あるものだけで素早く作っちゃったので味に不安がありましたが」
「いや、こちらこそすまん。食材不足で」
いやしかし昨日同様、何もない所からここまでのご馳走が作れるのはもはや才能だ。
恐らく食材は一種類か二種類くらいしか使われていない。しかしちょっとしたアレンジでこうも変わるとは本当に驚かされる。
冗談抜きで我が家の専属メイドとして雇いたいくらいだ。
「ごちそうさまでした」
寝起きだというのに難なく完食。いつもはあまり食さない俺だが今回は胃が求めているかのように平らげることができた。
「すまんなレーナ。今日は家まで送ることにしよう」
「そ、そんな……お気を使わなくても」
「いや、家主であるのに何もできないのは結構つらいものだ。せめて送り迎えだけはさせてくれ」
「そ、それなら……」
レーナは俺にある提案をする。
「か、買い物か?」
「はい。王都で少し行きたい所があって……ぜひ付き添いできてほしいな~って」
そんなことでいいのか。もっと他に要求されるかと思ったが……
でもまぁ彼女がそういうなら俺は別に構わない。
こうして俺たちは王都へ買い物に出向くことになった。
* * *
「―――らっしゃいらっしゃい! 今日も新鮮な魚はいってるよぉ~!」
「―――ねえねえお姉さん方、ちょっとうちの店見ていかない?」
「―――お姉ちゃん美人さんやねぇ~どや、うちの店きてくれたらサービスしたるで!」
相変わらず活気に満ちた所だ。それになぜか俺たちにぐいぐいと迫ってくるものが多い。
女性は俺の所へ、男性はレーナの所へ。
何を基準にして商売客を選んでいるのか実に疑問だ。
「ここはホントに楽しいところですよね。いつも活気で溢れていて」
「まぁうるさすぎるがな」
こう横に歩いていると前にレーナと買い物をしに来たのを思い出す。
確かあの時は変人魔剣姉弟の家へ行く前の出来事だった。
あの時もやはりレーナは注目の的だった。確かに彼女は美人だ。この不自然な猫耳を除けば……だが。
「わぁ~ねえねえ見てくださいレイナード! これすごく綺麗ですよ!」
そこに並べられていたのは青く光り輝く結晶のついた華美なネックレスだった。
「ん? ああ、深海結晶のネックレスか」
「深海結晶?」
「そうだ。イグニス帝国の結晶鉱山で取れる希少結晶だ。まるで海のように青く澄んだ色をしているためそう呼ばれている」
「お、兄ちゃんよく知っているねぇ。これは特別なルートを経て手に入れた最高級の深海結晶を使っているんだ」
「へ、へぇ……レイナードは物知りですね」
「まぁ昔は世界を渡っていた時期もあったからな」
俺の全盛期時代は団長の指令で色々な所へ遠征に行ったのを今でも覚えている。
そしてそこで色々なものを見たり聞いたりした。なので結構色々なことを知っているのだ。
「でもちょっと高いなぁ……やっぱり高級品は手が出せないです」
「まぁ希少価値の高いものだからねぇ……値下げしてあげたいけどできないのよ」
「仕方ないですね。行きましょうかレイナード」
「あ、ああ」
確かに値は高い。それも俺の給料一か月分に相当する金額だ。
だが……
「なぁおじさん、これ一個くれないか?」
「お、男買いだねぇ~毎度ありぃ!」
これで今月の給料はおさらばだな。
まぁ仕方ないか。
「どうしたんですかレイナード? 早く行きましょ~」
「ああ、すぐ行く」
俺がレーナの元へ戻るその時であった。
すぐ背後で何かしらの違和感を感じた。
(ん? 誰だ?)
市場に入った時から何となく不信感があったが、やはり誰かにつけられているようだった。
「行くぞレーナ」
「え、ちょ、レイナード?」
とりあえず人のいない所まで誘きよせるか……
何者かわからない以上、こんな人の多い所でどんぱちやるわけにもいかない。
俺はレーナの手を引っ張り、裏の路地へと駆け込んだ。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか?
chocopoppo
ファンタジー
【毎日12:10更新!】
松本(35)は会社でうたた寝をした瞬間に異世界転移してしまった。
特別な才能を持っているわけでも、与えられたわけでもない彼は当然戦うことなど出来ないが、彼には持ち前の『単調作業適性』と『社会人適性』のスキル(?)があった。
第二の『社会人』人生を送るため、超資格重視社会で手に職付けようと奮闘する、自称『どこにでもいる』社会人のお話。