元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

文字の大きさ
64 / 127
第4章 おっさん、祭りに参加する

第63話 女同士の戦い

しおりを挟む

 俺は人気ひとけのない市場の裏路地までレーナを連れていく。
 確かに感じた。誰かに追いかけられているという感覚が。
 だが一つ疑問に思うことがあり、邪悪な気配というにはほど遠い感覚だったのだ。

(よし、ここまで来ればいいだろう)

 俺は足を止め、後ろを振り向く。

「あ~あ、気づいちまったか」

 暗闇から突如、小太りなオヤジが姿を現す。
 
「お前か? 俺たちをつけていたのは」
「ああ、そうだ。お二人にちと用があってな」

 お二人? 用? 
 俺は何か怪しい気配を感じた。だがこの男に邪悪な気配もなければ殺意もない。
 
(こいつ、もしかしたら……)

「用って私たちに何の用があると言うんですか? 内容によっては今ここであなたを……」

 レーナはそのオヤジ相手に魔術詠唱の準備を始める。

「いや待てレーナ。落ち着くんだ」
「でもレイナード!」
「いいからその手を下ろせ」
「わ、分かりました……」

 なんとかレーナを宥めることができた。
 そして俺はそいつの方へ身体を向ける。

「おい、そろそろその姿は苦しいんじゃないか? 趣味が悪いぞ」
「えっ? レイナード何を?」

 するとその小太りなオヤジはふふふと笑みを浮かべ始める。

「さすがですね。全てお見通しってことですか」
「ど、どういう?」

 レーナはまだ気づいていないようだった。
 するといきなりオヤジから閃光が放たれ、別の男の姿が現れる。

「ら、ラルゴ先生!?」
「ごきげんようレーナ先生。今日もいい天気ですね」

 その男とはもはやもう説明不要。
 アロナード総合魔術学園、魔術専攻の1年B組担任、ラルゴ・ノートリウムだった。
 まだ暑さが続くこの時期にこういうテンションのおかしい奴と会うとさらに暑くなる。
 せめて休日はこいつとはあまり会いたくはなかった。

「お前、休暇日でもその格好なんだな」
「もちろんです! これが私の正装ですから! ちなみにこの制服は屋敷のクローゼットにあと50着はありますよ」

(こいつマジか……)

 正直その格好で現れるのはやめてほしい。見ているだけで暑くなってくる。
 
「それで? こんな休日に変装魔術まで施して一体何の用なんだ?」
「それはですね……すこーし話が長くなるのですが……」

「ああ、もうじれったいなぁ~前置きが長すぎるのよラルゴ先生は!」
「ん?」

 どこからかもう一人の声が聞こえる。聞いたことがある声だ。
 そしていつの間にかラルゴの隣に私服姿のハルカが現れていた。

「ハルカ先生、迷彩魔術を解いてもよろしいのですか?」
「いや、先生の正体がバレた時点でもうゲームオーバーよ。もう……せっかくいい感じで見張れていたのに!」
「無理言わないでください。私も最善を尽くしたのですから」

(な、なんなんだこいつら。休日から騒がしい奴らだ)

「お前の仕業かハルカ」
「あ、はい……いきなりすみません。たまたまラルゴ先生と会って王都を散策していたら偶然二人が目に入ったもので……」

 ラルゴと二人でってこいつらそんなに仲が良かったか?
 意外なコンビだ。この二人に接点があったなんて。

「いや、ハルカ先生が私を誘ったではあり……」
「う、うるさいです! 少し黙っていていただけませんか?」
「……! ……!」

 ラルゴが何やらハルカに口を塞がれている。
 何をやっているんだあのバカコンビは。

「ぜぇ……ぜぇ……ハルカ先生、私死ぬところでしたよ」
「もう一度されたくなければ少し黙っていてください」
「わ、分かりました」

 すごい。何やらあのラルゴを手懐けているような感じがする。
 あんな一緒にいるだけで疲れる奴、関わるだけでも疲労がたまっていくのにハルカにそんな気配はない。
 頑固なスメラギのオヤジの娘というのは伊達じゃないな。

「それで……ハルカとラルゴ先生は私たちに何の用があるというんですか?」
「何って……決まっています。レーナさん、私と勝負してください!」

「えっ?」「は?」「ん?」

(いや、お前も分かってないのか!)

 俺たちだけじゃなくラルゴまで疑問の表情を浮かべる。

「勝負ってなんのですか?」
「どちらがレイナード先生のお相手に相応しいかです!」
「ハルカ、お前何を……」
「知っていますよ。レーナ先生と一夜を共にしたんですよね?」
「お、お前それ……」
「やはり本当のようですね。実にうらやま……不純です!」

 なんか今心の声が漏れかけたような気がしたが、指摘すると面倒なのでスルーしておくことにする。

 とりあえずざっと経緯を説明すると、どうやらハルカは昨晩レーナが俺を担いで学園を出た所をたまたま見ていたらしい。
 それで後をつけて監視をしていた所、中々レーナが出てこなかったことからそのような結論に至ったという。
 まぁ完全に犯罪的行為である。

「お前……」

 呆れてものが言えなくなる。
 そしてハルカは弾丸のように次から次へと話し続ける。

「とにかくレイナード先生の助手としてどちらが相応しいか勝負です。レーナ先生!」
「助手として……ですか。それなら負けるわけにはいきませんね」
「お、おいレーナ」
「ご安心をレイナード。私の方が助手歴は先輩なのですからしっかりそのことを彼女に教えてきます」
「いや、別にオレは……」
「決まりですね。それじゃあ会場にいきましょうか」
「お、おい……」

 もはや二人の間に介入できるスペースはなかった。
 それにレーナも結構やる気なようで静かなる闘志を感じた。
 
「こりゃ……止められないな」
「そうですねぇ。一度ついた炎を消すのは中々大変なものです。特にレディーのはね」
「鬱陶しい表現をするな……」

 俺は汗でぬれた額を手で抑えながら深くため息をする。
 そして誰が得をするのか全く分からない勝負が今、ここに始まろうとしているのだった。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...