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第4章 おっさん、祭りに参加する
第67話 助手として……
両者、一歩も譲らぬ攻防。互いに一歩も引かない勝負が演習場で行われていた。
(初めて戦っている所みたが二人とも中々だな)
レーナは基本的に白魔術を多用し、ハルカは白、黒、精霊魔術など多様な術式で迎え撃っている。
やはり一人の魔術講師としての技能は双方とも相当なものを持っているようだ。
(うーむ……これは総合競技の際に出場メンバーたちとタイマン張らせるってのもありかもな)
「ああ! やっと見つけはりましたで!」
「ん?」
遠くで二人の熱戦を見ていると背後にスカーレットの姿があった。
何やら不満を抱いているような表情だ。
「スカーレット……? あ……」
「忘れた……とは言わせまへんで」
(そ、そうだったー! 何か忘れてるなと思ったらこれだった!)
「い、いやすまんスカーレット! 忘れてたわけじゃないんだ。こっちも仕事があるしな!」
「へぇ……こない所でのんびりと人様の戦い眺めているんが仕事だとでも言いたいんですか?」
ぐっ……この女よりにもよって痛い所を突いてきやがる。まぁこいつにごまかしなぞ通じないことなんて承知の上だったが。
「はぁ……悪かった。完全に忘れてたわ」
「そんなことだろうと思ってはりましたよ。いいです、元英雄さんに免じて許したりますよ」
「ああ、すまん」
スカーレットは何も言わずに隣に座る。そして胸ポケットから葉巻を取り出し、火をつける。
「ふぅ……やっぱうめぇなこのシガーは」
「お、おい。学園内は禁煙だぞ?」
「男がそんな小さいこと気にするなって。大丈夫、フィーネはんにはもう許可取ってはるから」
肩をバシバシと叩きながら葉巻を吸うスカーレット。
実に勝手な奴だ。突如現れたかと思ったら好き勝手やっている。
見た目はそこそこ顔の整った女の子、なのに中身はチンピラみたいなものだ。
「あの二人はおまんとこの教え子か?」
「いや、違う。助手だ」
「助手やて? はっはっはっは!」
「何がおかしい?」
「いや、悪い悪い。お前さんみたいな一匹オオカミだった奴が良くもまあ魔術講師なんぞ引き受けたな」
言われればごもっともである。俺はこいつの言う通り組織内でもあまり馴れ合いを避けてた一匹オオカミ。今の俺は昔とは想像を絶する程様変わりしているのは自分でも自覚していた。
「訳アリだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「あっそう。それにしてもええなぁ~あんなに可愛い娘が二人も助手とは……な、もうやることは済んだんか?」
「は? やること? なんのことだ」
するとスカーレットは大声を上げ、腹を抱えて笑い出す。
「おまんまじか! その年になってまだ済ましとらんのかいな」
「だから何をだ!」
「ここまで言っても気づかんか。まぁいいや」
頬を歪ませ、ニヤリと笑う。
そしてスカーレットはゆっくりと立ち上がり、俺に葉巻を渡す。
「ん、どういうことだ? 俺は葉巻など吸わないぞ? それにお前はここへ何しに来たんだ?」
「まぁいいから吸ってみぃ。ごっつうまいからさぁ。それと……」
「……?」
「後で学園長室へと来い。うちがこない所までわざわざ足を運んだ理由を教えたる」
「なんだか……ただ事ではなさそうだな」
「ふっ、相変わらず鋭いな。まぁ後で来てくれや」
「分かった」
「ほなそゆことで」
スカーレットは俺に葉巻を持たせ、去っていく。
(あの雰囲気、嫌な感じだな)
俺は引き続き、二人の戦いを眺めることにする。
両者とももうボロボロになっていた。それでもまだ互いに立ち上がり勝負を続ける。
(こりゃ……決着つかないな)
「はぁぁぁぁぁ!」
「やぁぁぁぁぁ!」
魔術と魔術のぶつかり合い。それを見てると昔の自分を思い出す。
力で何とでも言わせていたあの時代。懐かしく思う反面、今のご時世ではあまり快く思われないので繰り返してはいけないとも思う。
英雄、そして引きこもり、そして一人の魔術講師として生きている今だからこそそう思えるようになったのだ。
(ま、過去のことなんかあんまり覚えていないだがな……そろそろやめさせるか)
俺は立ち上がり、レーナたちの元へ。
「二人ともそこまでだ」
「えっ? でもまだ勝負は終わって……」
「もう十分だ。二人ともいい動きだったぞ」
「で、でも……それじゃあ勝敗が」
双方ともまだ戦いたい様子だった。でもこのまま戦わせたらただの潰し合いになりかねない。
なら……
「勝敗はもう決している」
「じゃあもう勝者が……?」
俺はコクリと頷く。
両者の目線は俺に釘付けだ。
「それじゃあ発表するぞ……」
ゴクリ……
俺たち以外誰もいないこの広い演習場が二人の戦いが終わった途端、一気に静けさを取り戻す。
「勝者は……二人ともだ」
「……え?」
「先生、それは……」
「いわゆる引き分け。この三番勝負は五分だ」
俺の決断によって二人とも黙り始める。
まぁ勝敗をつけたかったからにこの判断はあまり適切ではなかっただろう……特にハルカはそうだ。
ハルカは俺に訴えかけるような目を向けてくる。
「先生、でもそれじゃあ!」
「あのなハルカ、俺は最初から二人が勝負すること自体が反対だったんだ。なぜかわかるか?」
「い、いえ……」
「そうか。ならこの際だから教えてやる。それは二人ともオレの大切な助手だからだ」
「大切な助手……ですか?」
「ああ。だから優劣とか言って二人で殴り合うことはもとから快く思っていなかった。オレは二人とも違った特色があって十分優秀だと思っている。現に今、オレは二人に助けられてばかりだ」
「そ、そんなことは……」
ないとでも言いたいのだろうか。そうだとしたら答えは否。
正直この二人がいなければ仕事にならない時が何度もあった。
二人にはとても感謝しているのだ。
「何を争ってこんなことを始めたのかは知らない。でももうこういうことで優劣をつけるのはなしだ。それでもというのなら仕事でつけてくれないか?」
「せんせい……」
「レーナもだ。分かったか?」
「は、はい……! すみませんでした……」
「分かったならいいんだ。すまないがオレはちょっと用事があるから外すぞ」
「お手伝いしましょうか……?」
「いや、大丈夫だ。すぐに戻る」
はいと頷き、俺は演習場を去る。
(はぁ……やっと片付いたな)
手に持った葉巻を近くのごみ箱へと捨て、俺は学園長室へと向かう。
そのころ……
「やっぱり……カッコいいなぁレイナード先生」
「は、ハルカ?」
「いよーし! こうなったら仕事で先生にいい所を見せなければ! 負けませんよレーナ先生」
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「はい! そしてゆくゆくは先生と……うふふふふ」
(ホントにレイナードのことが好きなのね……でも私だって負けない。だって私は……)
二人の関係は勝負を通じて良い方向へ結びつつあった。
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