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第4章 おっさん、祭りに参加する
第68話 怒りのレーナ
「おい、入るぞ」
俺は学園長室の前に立っていた。
三回ノックし、俺は学園長室へと入っていく。
―――ガチャ
「あ、カシラ!」
「来たわね、レイナード」
学園長室には既にフィーネとスカーレットの姿があった。
テーブルの上にはいかにも高そうな茶葉と茶菓子が置いてあり、学園直属の護衛人がスカーレットの側についていた。
「何だスカーレット、やけに良い待遇を受けているな」
「うちも護衛なんぞいらん言うたのにフィーネがうるさくてなぁ……」
「当たり前よ。外部からの客人は誰であろうと丁重にお迎えする。それが我が学園の方針の一つでもあるんだから」
ああ、なるほど。内部の人間からも愛され外部の人間からも高い評価を得る学園作りってやつか。
ま、こういう所はイメージも大切だからな。
「まぁカシラ、とりあえずそこに座ってくだせぇ」
「あ、ああ……」
毎度毎度思うのはなぜ俺のことをカシラと呼ぶのだろうか。何と言われようが別に構わないのだがその真意が気になる。喋り方も独特な奴で神魔団にいた時とイメージがだいぶ違うような気がした。
俺はとりあえずフィーネの隣に腰をかける。
「さてと、役者が揃ったちゅうーことでだいーじな話をしますかね」
スカーレットはお茶を一口含み、話を始める。
―――一方その頃
「そういえばレーナ先生、さっきの人見ました?」
「さっきの人?」
「はい。演習場にいた時にレイナード先生の隣にいた謎の人物です」
「えーっと……確かに誰かいたような気がしたけど……」
ここは講師室。レーナとハルカは残りの仕事を終わらせるべく残業に勤しんでいた。
ハルカは何か気になることがあるようだ。
「レーナ先生見ていないんですか? すっごい美人さんでしたよ」
「そ、そうなんだ。……ホントに?」
「ええ! しかも親密そうに何かコソコソと話していたんで決闘の時全然集中できなかったですよ!」
ハルカがどんどんヒートアップしていく。レーナもそれについて少し気になり始めてきた。
ハルカはレーナの肩をガシッと掴む。
「レーナ先生! これはもしかしたら泥棒猫の登場ですよ。それか最悪の場合は……」
「場合は……?」
ゴクリ。
二人しかいない講師室が沈黙の渦に巻き込まれる。
そして、
「最悪の場合は……レイナード先生の彼女さんの可能性があります!」
「え、ええええ! か、かのじょ!?」
「そうです。私の目に狂いがなければあの親密さは恋人同士の可能性が高い。そう踏んでいます」
「で、でも今まで先生にそんな素振りは……」
だんだんレーナが焦り始めてくる。
だがハルカの虚言は止まらない。
「いえ、レイナード先生は生粋のポーカーフェイス。あの真顔の裏に隠された素顔は何人もの女を虜にし、抱いてきたハーレム王子の顔です」
「だ、だだだだだ抱く!?」
それらのことに全く免疫のないレーナは熱があるのかと思うくらいに顔が真っ赤に染まる。
「そうです! もしかすると大事な用っていうのはその人と快楽を共にするための口述……」
「だ、ダメェェェェェェェェェ!」
ハルカの言葉を大声で遮るレーナ、そして深呼吸をする。
気の冷静さを取り戻した後、拳をギュッと握りしめハルカに言う。
「ハルカ、行きましょう」
「はい?」
「レイナード先生のところです」
「えっ、いや……ホントに行くんですか……?」
「もちろん。そんな不純異性交遊は私が撲滅します。ハルカも来てくれますよね……」
ニコッと見せるレーナの笑顔の先には闇深い何かが渦巻いていた。
それに……笑っているはずなのに恐怖を感じる。
(こ、こわっ……)
レーナの目の色にもう輝きはなかった。
逆らうと殺される……そんな勢いが今の彼女にはあった。
「さ、行きますよハルカ」
「は、はい……」
もはや冗談ですなんて言えない雰囲気だ。
(ごめんなさいレイナード先生! 許してください……)
ハルカは心の中でひたすらレイナードに謝罪をする。
そして廊下ですれ違った生徒や講師たちにレイナードの居場所を聞いて回り、学園長室に入ったとの情報を掴んだ。
「場所は学園長室ですか……確かに行為に及ぶには人目につかずもってこいな場所ですね。そう思いませんかハルカ?」
「え? あ、はい。そうですね……」
もはや言葉を発するだけでも恐怖心を感じる。
多分……先生は殺される。
(な、なんとかしないと……)
頭の中で弁解を考えている内に目的地の学園長室の前に着いてしまった。
(や、やばいやばいどうしよう……)
焦りが加速するハルカ。頭の中はどう弁解するかでいっぱいだった。
「えっと……中には……」
ドアの前で聞き耳を立てるレーナ。そして3人いることが確認できた。
「3人……レイナードとその泥棒女とこの声は……学園長ですか。さすがハーレム王子、二人まとめて相手するとか元気なことで」
もう性格がまったく別人のように変わってしまっている。普段のレーナからは想像もつかないぐらいだ。
これに名を付けるのであれば「闇レーナ」という感じだろう。
それほど恐ろしい変貌を遂げてしまっていた。
「ま、何人いた所で私の制裁は揺らぎませんけど。じゃあ行きますよ」
「は、はい……」
恐怖のあまり頭の中がもう真っ白だ。
(お、終わった……)
何食わぬ顔でレーナは学園長室のドアノブに手をかけ、豪快に扉を開けた。
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