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第4章 おっさん、祭りに参加する
第70話 勘違い
スカーレット、フィーネ、そして俺。
神魔団のメンツで重要な会議をしている時に彼女は入ってきた。
「レーナ、どうしてここに……」
「どうして……? それはご自身の心にお聞きした方がよろしいのでは?」
(な、なんだこの異様なオーラは……)
何か様子がおかしい。少なくともいつものレーナ・アルフォートではなかった。
銀色の美しい髪は逆立ち、レーナの感情を示す猫耳はギンギンに尖っていた。
「な、なぁレーナ、怒っているのか?」
「いいえ、別に」
「誰かに何かされたとか?」
「いいえ、別に」
俺が何を言おうが「いいえ、別に」の一点張り。これは間違いない、相当怒っている。
だが心当たりはない。あるとすれば……
「その……あれか? ハルカとの勝負についての判定に不満があったのか?」
「いえ、そんな些細なことじゃないです」
(いや些細って……さっきまでドンパチやってたのに)
「じゃあどうしたんだ? いつものレーナらしくないぞ」
レーナは俺をじっと見たままなにも話さない。
室内が一気に混沌とした空間に変わる。
数秒もの間があっただろうか。ようやくレーナは口を開く。
「聞いたんです……ハルカから」
「聞いた……?」
「はい。レイナードの本当の素顔は何人もの女を抱いてきた変態王子なのだと……」
「……いや何言っているんだ?」
「とぼけても無駄ですよ。まさか先生がここまでお盛んな変態さんだとは思いませんでした」
「いや、だから……」
俺の話を聞くような耳は持たないと言う感じだった。だが本当にレーナを怒らせた心当たりはない。
レーナの後ろを見ると気まずそうな顔をしたハルカが横目で俺を見ていた。
(まさかあいつ……レーナに変なことを……)
俺がハルカに目線を合わせると彼女は全力で目をそらそうとする。
やはり何か変なデマを流したな……
(と、とりあえず弁解せねば)
「お、おいレー……」
「はっはっはっはっは! こりゃ傑作やな!」
「……ん?」
弁解しようとしたらスカーレットの笑い声によってかき消される。
ツボに入ったのか腹を抱えて笑い出す。
「おいスカーレット、何がおかしいんだ?」
「え? いや……悪い悪い。はははは」
笑い涙を拭き、スカーレットはレーナの方を見る。
「えっと君は確かカシラの助手をやっているせんせーやな?」
「はい。そうですが何か?」
高圧的な態度でスカーレットに応対するレーナ。
正直、もう彼女はレーナ・アルフォートという人物像からかけ離れていた。
普通に怖い。
「いやぁそない目で見ないでくれ。きっとあんたは何か勘違いしとるで」
「勘違い……? 私がですか?」
「どういうことなんだスカーレット」
この事件の真相にスカーレットとフィーネは気づいているような素振りを見せていた。
だが俺だけは未だに何なのか全く見当がついていなかったのだ。
「なるほどなぁ……これならカシラが”ソッチ”の面で全く進歩がないのも納得ですわ。こない分かりやすい子がいるというのになぁ……」
「まったくですねぇ……」
フィーネまでもうんうんと頷き始める。
(おいおい何でお前ら二人が納得したような感じになっているんだ?)
肝心な俺は全く分かっていないというのに……!
「おい、一体……」
「何が言いたいのでしょうか?」
「……」
またも話そうとした所を遮られる。
レーナのその獲物を狙うかのような眼差しはいつしか俺ではなくスカーレットの方へと向いていた。
だがスカーレットは何も動じることなくゆっくりと答えていく。
「まぁ結論から言えばうちとカシラはそない関係ではないっちゅうや」
「関係……じゃない?」
「せや。どうせあんたはうちとカシラが恋人同士とでも思ったんとちゃうか?」
「は……? どういうことだスカーレット」
「カシラは黙ってな! 今は女同士の話し合いや!」
「え……わ、悪い」
鷹のような鋭い目で睨み付けるスカーレット。
その凄まじい眼光に思わず身を引いてしまった。
「で……どうなんや? うち何か間違っとるか?」
「い、いや……それは……本当に恋人同士とかだ、抱くとか……」
スカーレットはまたも大笑いながら答える。
「そないわけあるかいな! うちはこんな男ぜーんぜんタイプでもあらへん。ましては抱かれるなんてもってのほかや。安心せえ」
「じゃ、じゃあお二人はどんな関係なんですか?」
「うちとカシラか? 関係というか仕事仲間みたいなもんや。昔世話になったことがあってな」
「じゃあ本当にそういう関係じゃ……」
スカーレットは首を縦に振り、恋人としての関係を否定する。
するとレーナはホッとした表情を見せ、いつの間にか目の潤いも取り戻していた。
ただ俺はなぜか分からない所でボロクソに言われてなんだか腑に落ちない。
「くそ……なんなんだ一体。人が分かっていないことをいいことに好き勝手言いやがって」
ふてくされた俺をスカーレットが笑いながら宥める。
「まぁそういうなカシラ。そうはいってもうちは信用してはるで。もちろん、”仕事仲間”としてな」
「ふん、まぁたとえお前に好意を抱かれたとしてもまったく嬉しくはないがな」
「おい、それはどういうこっちゃ!」
俺たちの二人の会話を見てレーナも安心したようだった。そしてなぜかそのすぐ後ろにいたハルカが本人以上に安心しているような……そんな感じがした。
(ちょっとあいつには後で話をした方がよさそうだな)
かくして一連の騒動は誤解を解いた形で終了……するはずだったのだが……
「ところで助手の嬢ちゃんよ。一応聞くがカシラのどういうところが好きなんや?」
「は……?」「え……?」「あ……」
沈黙する俺とレーナ。そしてその後ろであんぐりと口を開けるハルカ。
そしてスカーレットのこの一言でまた新たな波紋を呼び起こすことになったのは言うまでもなかった。
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