元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第4章 おっさん、祭りに参加する

第79話 プライド

「くっ、どうして当たらない!」
「……さすがレイナード先生、指一本触れることができない」
「三人で戦っても歯が立たばないなんて……」

 息を切らしながらこちらを見つめるフィオナたち三人。
 俺は今、フィオナ、ガルシア、リーフとの模擬試合の相手をしていた。
 
「どうした? もう終わりか?」
「ちっ、舐めやがって!」

 真っ向から挑んでくるガルシア。だがその攻撃は跳ね返され、みぞおちに一発を当てる。

「ぐはっっっ!」

 ガルシアは俺の一撃で鉄砲玉のように吹っ飛ばされる。
 
「ガルシア!」

 心配する目で彼を見るフィオナたち。だが俺は容赦しなかった。

「人の心配している暇があるなら自分のことを考えろ!」
「……!」

 いきなり目の前に現れた俺にきょとんとするフィオナ。俺は呪縛系魔術を発動し、彼女の動きを完全に封じ込める。

「……か、身体が」

 足掻くフィオナ。だが魔術によって完全に身体を固定されビクともしない。

「無駄だ。この魔術、≪リーガル・ロック≫に一度ハマってしまうとどんなことであっても抜け出すことはできない。ただ……」

 その時だ。気配を消すようにして背後から魔術詠唱の声が聞こえる。

「そこです! ≪シルフ・ウィンド≫!」
「……風魔法か」

 俺は呪縛魔術を強制解除、リーフからの攻撃を回避する。

(ふっ、気づいたか)

「ありがとうリーフ」
「うん! 気にしないで!」

 互いに励まし合う。やはりこの二人の相性はそこそこいいようだ。
 呪縛魔術を行使したのもそのため。この魔術はある一定の人数の動きを完全に封じ込めることができるが、それ故に相手の目を見ていなければならない。その上停止した状態でないと発動はできないため、大きな隙ができる。
 
 俺はあえてこの魔術をフィオナに使い、リーフの動きを試したのだ。
 
「今のは良かったぞリーフ。なんであのタイミングだと思ったんだ?」

 リーフは答える。

「呪縛系の魔術はどの魔術にも使っている相手から目を離せないという弱点を持っています。ですが先生の使った魔術は少し特殊だなって思って確実に視界に入らない背後から攻撃をしたんです」
「なるほどな。さすがリーフ、よく見ている」

 この判断は非常に見事である。呪縛魔術と言っても≪リーガル・ロック≫はかなり特殊なもので相手の目を見ずとも体の一部が視界にさえ入っていれば効果は発動する。
 それは人間が両目で視認できる限界点、左右120度内で見えるものなら問題はない。
 だがそれを超えてしまうと≪リーガル・ロック≫の効果は範囲外となり、発動はしない。

 リーフは自ら持つ知識とフィオナが魔術に飲まれた際の一瞬の動きを捉え、素早く次の行動に移したのだ。
 
「そこまで見ていたなんて……凄いわリーフ」
「そ、そんなことないよ……」
「いや、お前の判断は素晴らしかったぞ。お前のその冷静な分析と判断能力は魔術師にとっては大きな糧となり、強みとなる。自信を持っていい」
「あ、ありがとうございます……」

 顔を赤らめ、下を向くリーフ。戦闘時とは違い、少し緩んだような表情が年相応の女の子であることを象徴づけている。
 
「そろそろ休憩にしよう。お前たちも魔力を相当消費しているみたいだからな」
「あ、はい……でも先生」

 フィオナが何かを言おうとした時、その声は聞こえた。

「……おい、ちょっと待てよ。何勝手に終わらせてんだ」
「ん?」

 そこにいたのはスゴイ形相で睨み付け、肩を抑えながら歩いてくるガルシアだった。
 怪我をしたのか肩辺りをグッと抑え、辛そうな顔を浮かべる。

「おい、お前怪我をしているのか?」
「うるせぇ! んなことどうでもいい! それより続きだ、続きをやるぞ!」

 ガルシアの意識は完全に俺を倒すという目的に支配されていた。彼はクラスの中でも生粋の負けず嫌いだ。俺が少し力を入れ過ぎた責任もあるがこのままでは彼の身体がもたないだろう。
 
「さぁ! 早くかかってこいやぁ!」

 プライドが自身を後押ししているのか瀕死状態でもガルシアの顔色は変わっていなかった。
 正直、精神力の部分で言えば彼はフィオナやリーフを始め、他の人が持たないような特異なものを持っている。

(ただ……それを武器にできていないのが勿体ないんだが)

 ただ今、ガルシアに戦わせて余計傷口が増えるだけ。
 ここは……

「ガルシアよ。今ここで戦っても傷が痛むだけだ。とりあえずその傷を治してからにするんだ」
「ああん? ふざけんな! 俺は今ここでお前をぶっ倒さないと気がすまねぇ! そうでないと……俺のメンツが……」

 過度なプライドは自滅を招く。彼はそれを体現するかのような男だ。
 
(このままでは……いかんな)

 するとここで俺はある一つの名案をを思い付く。

「ガルシア、ちょっと来い」
「逃げんのか、おい!」
「いいから来い!」
「ぬっ……!」

 普段は滅多に大声を出さない俺が初めて声を張り上げて要求する。
 少し怯んでしまったのかガルシアは舌打ちをして後についてくる。

(はぁ……少し怒号をあげただけでこれか。こりゃ精神コントロールが難しそうだな)

 その後、俺はレーナとハルカにその場を任せてガルシアと共にある場所へと向かった。
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