元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第4章 おっさん、祭りに参加する

第81話 精神特訓2


 ~ガルシア視点~









 記憶ない景色が広がる。半壊した住居、廃れた市場の跡。
 そして街の中央にそびえ立つのは……

「……あれは城か?」

 だがこの景色、一見するとクロードの王都にそっくりな部分があった。廃墟と化してはいるが面影はある。
 

「やはりこれ、まさかクロードの王都か? でも一体どうなって……」

 今の王都には想像もつかないほど寂しさに拍車がかかっていた。
 ガルシアは戸惑い始め、ひたすら辺りを見渡す。

「空気が悪い。この臭いは……燃えるような臭いか」

 とりあえずここがどこかを……

 ガルシアは一歩、歩き出すといきなり周りの背景が変わる。

「……ど、どういうことだ!?」

 なんか幻想の世界に迷い込んだような……そんな感じだった。
 
 そして次に切り替わったシーンはというと…… 

「これは……俺の実家か?」

 目の前にうつるはガルシアの実家だった。
 だが次の瞬間。

「お、おい……どういうことだよ!」

 ガルシアの実家、彼の育った場所がなんの突拍子もなく燃えだし、そのまま崩れていく。

「……と、父さん! 母さん! イリナ!」

 ガルシアが真っ先に思い浮かべたのは両親のことだった。
 彼はすぐさま家の近くへと駆け寄る。

「……ち、ちくしょう……嘘だ……嘘だ!」

 燃えカスとなったコンクリートの破片をどかし、両親と最愛の妹と身柄を探す。
 すると……

「おい……マジかよ……」

 最初に出てきたのは全身火傷によって悲惨な姿になった妹、イリナの身柄だった。もうすでに亡骸となっており、息はなかった。

「おい、目を開けろよイリナ! イリナ!」

 もちろん死んだはずの人間に反応はない。
 そしてそれに準ずるかのように母親、父親の遺体も出てくる。
 ガルシアはその場で跪き、泣き崩れる。

「なんで……なんでだよ! くそッ、くそッ!」

 悲しみのあまり、近くに落ちていたコンクリートの破片を握りしめる。
 だがその強い悲しみと大切な人を奪われた怒りで彼の目から流れた涙はもうとっくに枯れていた。
 
 そして彼の中に新たな心情が生まれる。

「……ゆるさねぇ。 復讐してやる……絶対に……絶対に!」

 ガルシアはゆっくりと立ち上がり、遺体を近くにある樹木まで運び出す。
 樹木に寄りかからせるように三人を並べ、彼は誓う。

「待ってろ……俺が、俺が仇をうつ! 絶対にだ!」

 ガルシアはそう言い、後ろを振り返る。
 彼の目にはもう復讐以外の目的はなかった。
 ただただ復讐という呪縛に捕らわれ、人間的な感性溢れるものは微塵も感じない。
 
 彼は復讐の鬼となったのだ。

(……そろそろいいな。魔術を解放しよう)

 
 そばでそれをみていた俺は魔術を解放、そしてガルシアを現実の世界へと呼び戻す。
 
「ん……? こ、今度はなんだ……うわッッ!」

 何かに身体が吸い込まれるような感覚を覚え、目を開けた時には元いた多目的ホールへと戻っていた。
 
「どうだ身体の調子は?」
「こ、ここは……も、戻ってきたのか?」

 状況が把握できていない様子だ。まぁ無理もない。
 ガルシアが延々と見ていたのは俺が作り出した幻想の世界だ。そして先ほど行使した魔術≪デッド・オア・メモリー≫は対象者の記憶を操り、行使者の望むままの世界を記憶の中に埋め込むことができるという人道を脱した古代魔術。
 世の科学者や魔術評論家は禁忌の魔術ともいうくらい使い方次第ではとんでもなく恐ろしい事態を招きかねない魔術なのだ。 だが俺はそれをガルシアの精神欠陥を克服させるために使った。

 全ては彼自身の中にある精神的な欠点をなくすために。

「……ということは今のはすべて……」
「ああ、俺が創造した偽りの世界だ」
「じゃ、じゃあ今のは全部嘘だってことか?」

 俺が縦に首を振るとガルシアは安心したのかその場に座り込み、顔を伏せる。

「く、くそがっ! ふざけた真似をしやがって!」
「ああ。少々手荒だったのは謝罪する。でも何か変わったことはないか?」
「変わったことだと?」
「そうだ。心が軽くなった……そんな感覚はしないか?」

 俺が問いかけるとガルシアは無言で目をそらす。否定はせずにこの仕草をするということは図星なようだ。
 
(まぁとりあえずは成功のようだな)

 ガルシアは言動こそ荒いもののその分、仕草に特徴が出る。的確なことを言われるとすぐに目をそらすという癖もその中の一つだ。
 こう見えても俺は生徒一人ひとりをよく見ているつもりだ。特に魔技祭が近づくにつれて観察眼がより敏感になっているのを感じる。
 
「だ、だけどどういうことだ! なんであんたは……」

 何が何だか分からず、ただ混乱するガルシア。

(仕方ない。一応説明だけはしておくか)

 俺は混乱に陥るガルシアを横目に簡潔に説明を始める。
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