87 / 127
第4章 おっさん、祭りに参加する
第85話 葛藤とツンデレ
「もう大丈夫なのか?」
「はい、まだちょっとふらつきますけど」
「まったく無理しすぎだ。もう少しベッドで休んでいろ」
「ご、ごめんなさい……」
俺はフィオナのデコを指でピンっとはねる。
最初リーフから聞いた時は何事かと思ったんだぞまったく。
「一体何をしてたんだ? 演習で魔力欠乏に陥るまで魔力を使うことは普通はないはずだが……」
フィオナに真相を問いただす。魔力欠乏なんて自分の限界を知っていれば滅多になるものではない。
魔術師を目指し、魔術に適正がある者は基本的に幼子の時点で自分の魔力量の限界を知ることができる。よっぽど自分の魔力を蒸かさない限りは欠乏にまで至ることはないのだ。
フィオナは俯きながら答える。
「そ、その……今のままじゃなんかダメかなって思って」
「それはどういう意味だ?……」
「力不足だなって思ったんです。特にリーフやガルシアを見ているとそう思うんです」
「リーフとガルシア? あの二人と何かあったのか?」
「い、いえ! そういうことじゃないんです、ただ……」
「ただ……?」
その後、俺はフィオナの話を聞いた。
そこで知ったのは彼女の自分の能力についての悩みと他人にはあって自分にはないという葛藤だった。
「なるほど……自分にはリーフやガルシアのような特殊な能力はないと?」
「はい。リーフの治癒能力と強化(バフ)系統の魔術は正直クラス内では別格だと思います。ガルシアもいつもあんな粗暴な性格だけど魔術を使う時はホントに冷静で素直でパワーを感じつつも器用に魔術を扱える……どれも私にはないものです」
「それで、自分も何か誇れるものを持ちたいと思ってやったこともない大魔術の練習を?」
「はい……」
彼女はずっと下を向いたまま俺と目を合わせない。怒られる……とでも思っているのだろうか。
確かにもう魔技祭まであと一週間をもう切っている。このタイミングで病気やケガをされてたらたまったもんじゃない。特にフィオナのような主力メンバーが消えるのはかなりの痛手だ。
一応俺も常に口酸っぱく言っているわけではないが無理だけはするなとはクラスの連中には忠告している。
でも俺は今この瞬間、生徒たちに伝えていないことがあったことに気がつく。
「顔を上げろフィオナ。それと、放課後時間あるか?」
「えっ? 放課後、ですか?」
「うん。用があるなら別に大丈夫だが」
「い、いいえ! 何にもないです!」
「そうか。なら放課後、演習場に来い」
「え、演習場ですか?」
「ああ。やることはその時に話す。とりあえず今はここで休んでいろ」
「は、はい!」
俺はフッと彼女に笑いかけ身体を休めるよう指示を出し、出口の方へと振り返る。
「ミキ、後は頼む。フィオナのこと、ちゃんと見てやってくれ」
「はいはい、分かりました。ふふふ」
「何がおかしいんだ?」
「何でもないですよ。乙女心は分からなくても生徒想いなのは本当なんですね」
「な、何をいっている! オレは別に……」
「あー分かりました分かりました。それはそうと行かなくて大丈夫なんですか? 仕事、抜け出してきたんでしょ?」
「あ、そうだった。じゃあ後は頼んだ!」
俺は勢いよく扉を開扉させ、急いで設営準備へと戻っていく。
その時ミキは……
「……はぁ、その頑張りを少しは恋愛に向けてもいいと思うんだけどな……」
そう、思ったのだった。
俺はその後、再び設営準備へと戻った。
レーナとハルカそして暇そうにしていたラルゴを無理矢理引っ張り出し、なんとか自分たちの役割を終えることができた。
「ふぅ……あとは雑務か。ホント社畜だな講師ってのは」
「その割にはレイナードはいつも頑張っていますよね。なんか赴任してきた時とはまるで別人です」
「そーそー、私も初めて此処に来たときは驚きましたよ。先生のやる気のなさに」
「お、オレはは別にやる気があってこんなことやっているわけじゃない。全ては魔技祭のためだ」
「ホントですかぁ? 結構まんざらでもなかったりするんじゃないんですか?」
「からかうな! それより今は雑務を終わらせないと先へ進めない。いくぞ二人とも」
俺は少しムッとした表情をしながら講師室のある方角へと歩いていく。
「もう……ツンデレなんだから。行きましょレーナ先生」
「う、うん」
「ん? どうかしたんですか?」
「へっ……? い、いや……なんでもないよ」
「……?」
そんなやり取りが行われていた中、アロナード学園別館では……
「そろそろ魔技祭が近づいてきました。皆さん、準備はよろしいですか?」
「「「「「イエス、マイマスター」」」」」
「よろしい。我々神剣十傑には勝利しか許されません。表向きはただの祭りです……でも、我々にとっては違います。そのことをよーく、肝に銘じておいてくださいね」
「「「「「イエス、仰せのままに」」」」」
同日夜の出来事だ。そして、魔技祭まであと5日ほどまでに時間は迫っていた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )