元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第4章 おっさん、祭りに参加する

第86話 過去のわたしと今のわたし(1)


 ~ミキ視点~





 私の名前は軽澤美姫。今はミキ・カルサワとしてアロナード総合魔術学園の保健室の先生をやっている。
 そして私には他の人にはないある一つの事情がある。それはこの世界の人間ではないこと、いわゆる転生者というやつだ。
 私は元々、日本という小さな島国にある東京という街で看護師ナースをしていた。都内にある総合病院が私の勤務先で、結構大きな病院だったためか患者もかなり多かった。

 もちろん、患者が多い分仕事も大変だ。それに看護師と言う仕事は近年減少の一途を辿っているためか各地で人手不足が相次いでいた。その影響もあって一人一人に課される仕事が多くなり、毎日多忙な日々が続いたのだ。

 でも私は決して看護師の仕事を苦に思ったことはない。むしろやりがいを感じていたくらいだ。
 小さい頃からの夢であった看護師、私は努力の末にその夢を掴むことができた。
 周りが辛いとか帰りたいとか弱音を吐いている中、私一人だけは生き生きと仕事に励んでいたのでたまに変な目で見られることもあった。
 
 どれも今となっては懐かしい思い出だ。
 でもある時、私の人生はとある日を境に360°変わってしまった。
 
 それは私が看護師をなってから1年後のこと。ある勤務日の早朝の出来事だった。




 ■ ■ ■





「えっ! もうこんな時間!?」

 早朝。私の朝はデジタル時計とのにらめっこから始まった。
 時刻は朝の7時を指していた。いつも勤務先には7時30分に出ているが、今回は目覚ましのセットが1時間ほど遅くセットされており、起きたのが出発の30分前だった。

「あーもう! しっかり昨日セットしたはずなのにぃ……」

 とはいったものの昨晩のことはあまり覚えてはいない。なぜなら昨日は友人との付き合いで仕方なく飲み会に参加し、帰ってきたのは深夜3時ごろだった。
 お風呂には入った……という所まで覚えてはいるのだがそこから先が思い出せない。恐らく目覚ましも無意識にセットしたのだろう。

「やばいやばいやばいーーー! このままじゃ遅刻コースだよぉぉ」

 看護師という仕事は時間にかなりうるさい。時間にルーズな人間は即クビ……となることも十分にあり得る世界だ。それもたった一度や二度で。
 自分で言うのもあれだが私は時間だけはしっかりと守る人間だった。毎朝余裕を持って起床、身支度をし、早朝ランニングと体操を行ってから仕事へ行く。

 まさに充実人間だった。だけど今日は大失敗、看護師になって始めて絶体絶命の危機に瀕していた。
 
「あーーー髪のセットが上手くいかない……まぁいいか遅れるよりは」

 悪く思われない最低限度の身支度を済ませ、ハンディタイプのゼリー片手に玄関を飛び出す。
 それでも時間はもう8時前を指していた。

「やばいこのままじゃギリギリ間に合うか……」

 勤務先に病院へは自分の住んでいるマンションから少し離れた所にあったため、電車を使い、乗換もしなければならなかった。
 逆算しても間に合うか間に合わないかの瀬戸際であったため、全速力で駅へと向かっていた。

「最低でもあと10分後の電車に乗らないと間に合わない……それだけは遅れるわけには!」

 全速力で走った甲斐もあってか駅のすぐ目の前まで来ることができた。信号の前に待機をし、腕時計を確認しながら電車の時刻表とにらめっこをする。

「はぁ……はぁ……これなら間に合いそうね」

 どうしても乗らなければいけない電車へは5分ほど時間の猶予があった。
 なんとか遅刻は免れることができそうだ。

 ホッと一息つき、信号が青に切り替わった時だった

「あれ……あのおばあちゃん……信号がまだ……」

 その老婆の渡る方向はまだ歩行者信号が赤を指していた。
 でもそれに気づいていないのがその老婆はグングン横断歩道を渡っていく。

 嫌な予感がしたその時だった。

 いきなり横から自家用車が物凄い勢いで飛ばしてくる。
 そしてその車は真っ先に老婆の方へと突進していく。
 だが老婆はまだそのことに気が付いていなかった。

「あ、危ないっっっ!」

 私の身体はもう既に考える暇もなく勝手に動いていた。
 そして……間一髪その老婆を弾き飛ばし、救出することができた。


 のだが……


 ―――キキキキッッッッーーーー!



「はっっっ!?」


 大きな音は私のすぐ耳元で高らかに鳴り響いた。
 そして横を振り向いた時には目の前にその自家用車の姿があったのだ。


 ―――ド―――――――――――――――――――――――――ンッッッッ!!



 そしてその後、私はその車に撥ねられ、何も言葉を発することなく22年間というその短い生涯に幕を閉じたのだ。
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