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第4章 おっさん、祭りに参加する
第88話 魔技祭前日
しおりを挟む時は流れ、魔技祭前日まで日が経った。
学園内では魔技祭に向けての準備や他の催し物のリハーサルなどでかなりごたついていた。
俺とレーナは朝のミーティングを終え、生徒名簿を持ち、クラスへと向かっていた。
「ふぅ……」
「どうしたんですか、レイナード?」
「いや、遂に……と思ってな」
「明日のことですか?」
首を縦に振り、レーナに返答する。
明日から待ちに待ったアロン大魔道技術祭、通称魔技祭が開幕する。明日の日のために俺たちは今までしのぎを削ってきた。そしてその努力の成果が明日、発揮されることとなる。
俺の心は今まで以上に高ぶっていた。
「明日は絶対に勝てなければならない。俺たち今までそのために練習してきたのだ」
「はい。私も勝ちにいくための指導をみんなにしてきたつもりです。絶対に勝ちましょう!」
レーナも気合十分だった。
「……それにしても今日はかなり騒がしいな。前日ともなるとこんなものなのか?」
「準備期間が短かったというのがやはり影響しているんじゃないですか? クラスの中には魔技祭がメインではなく露店ンや劇に焦点を当てているところもありますし……」
学園内は一週間前の時と比べやたらと騒がしかった。魔技祭中に露店を出すクラス、魔法の実演会を行うクラスなど様々だ。
観客もかなりの人数が世界中から集まると予想されていく。学園側で去年のデータと照合して予想を出したところ少なくとも数万の人間がここ、アロナード学園に訪れるだろうという結果になった。
今、考えればそれにあやかって露店を出し、とんでもない額の利益を上げる……という商売路線という道もあったのだがその売上の十数パーセントを学園に納付しなければならないという制約付だったため断念することにした。
やはり全額を手取りとしてこの手に収めたい。そんな金銭的欲求が心の高鳴りと同時に湧き上がってきたのだ。
そしてその後、俺はいつものようにホームルームを終わらせいくつか連絡事項を言う。
「よし、これでHRを終了する。ここから先は連絡事項だ。大事な話だからよく聞いておけ」
念入りに聞くようにと伝えると、生徒たちの目はキリっとなりこちらを見る。
(うんうん、良い目だ。休み明けで不安だったが切り替えはできているみたいだ)
ひとまずホッと息を吐く。
俺はレーナに連絡事項を頼み、ハルカが背後にある巨大黒板の前に立つ。
レーナの言ったことを黒板に書き写す係だ。
そして俺はいつものように教卓の前にある椅子で楽な姿勢をとり、それを見守る。
「……ではみなさん、今からいくつか連絡事項を言います。内容はもちろん、明日の魔道技術祭についてです」
先ほどまで話し声で満たされていたはずのクラスの雰囲気が一気に静かになる。
レーナは皆が周りの様子を伺いながら話し始める。
「今日の連絡事項は大きく分けて2つ。一つ目は明日に控えた魔技祭の記念すべき第一回戦の相手が決まったことです。相手はいきなりですが2年A組、上級生になります」
「―――うわっマジか……いきなり上級生かよ」
「―――しかもA組だ。2年のA組はとんでもない奴らの宝庫だって聞いたことあるぜ?」
「―――でも楽しみじゃないか。俺たちの力がどこまで上に通じるか……まぁ確かに緊張はするけどな」
レーナの連絡でクラスは再び、ざわつき始める。
所々で不安を募らせている奴と楽しみでワクワクしている奴とて気持ちが差が生まれているな……さてどうしたものか。
そもそもなぜ俺がレーナに連絡事項を言うのを頼んだのかは全てこのため。クラス全体の雰囲気を見るためだった。
魔技祭はもう明日に迫っている。本気で今までの日々を魔技祭優勝のために捧げてきた1年A組にとって目標が高い故にその不安も大きい。
案の定、我がクラスでも気持ちに不安の持つ生徒が出てきていた。
強い精神力を持たないものはその不安、プレッシャーに押し潰されて結局自分の力を出し切れずに終わる。人間であるのなら仕方のないことだ。
だが本気で勝ちにいくのならそんな甘いことは言っていられない。
最終的に勝つのは技術や知識を持った博識な人間ではなくそれを成し遂げたいという心が強いほうだと昔神魔団の誰かがそう言っていた。
「……やっぱり思った通りだ。オレの選択はどうやら間違いではなさそうだ」
もちろんこれは予想できた範疇。その上、相手が2年A組となるとその予想は確信へと変わった。
そのためにも策はしっかりと用意してある。
魔道技術祭は文字通り魔術や錬金術を使った競技で優劣をつける祭りだ。特に魔術師にとって精神の乱れは大いに影響を与える。
ぐだぐだした精神で明日の相手に勝負を挑んでも勝ち目はない。だからこそ、できるだけ研ぎ澄まされた精神状態で明日を迎えてほしい。
そこで、俺が出した策、それは……
「そして次にもう一つ、今日の一日の流れですが……」
レーナがこう切り出すと、生徒たちはゴクリと息を呑む。
俺は目の合ったレーナに「うん」と頷き、彼女もニヤリと笑う。
もちろん周りは本番前日に何を指示されるのかとドキドキしたような目でレーナを見ている。
そんな生徒たちを横目にレーナは間をあけ、こう言う。
「……今日の活動は、特になしの自由時間ですっっっっっ!」
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