元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

文字の大きさ
90 / 127
第4章 おっさん、祭りに参加する

第88話 魔技祭前日

しおりを挟む

 時は流れ、魔技祭前日まで日が経った。
 学園内では魔技祭に向けての準備や他の催し物のリハーサルなどでかなりごたついていた。
 
 俺とレーナは朝のミーティングを終え、生徒名簿を持ち、クラスへと向かっていた。
 
「ふぅ……」
「どうしたんですか、レイナード?」
「いや、遂に……と思ってな」
「明日のことですか?」

 首を縦に振り、レーナに返答する。
 明日から待ちに待ったアロン大魔道技術祭、通称魔技祭が開幕する。明日の日のために俺たちは今までしのぎを削ってきた。そしてその努力の成果が明日、発揮されることとなる。
 
 俺の心は今まで以上に高ぶっていた。

「明日は絶対に勝てなければならない。俺たち今までそのために練習してきたのだ」
「はい。私も勝ちにいくための指導をみんなにしてきたつもりです。絶対に勝ちましょう!」


 レーナも気合十分だった。

「……それにしても今日はかなり騒がしいな。前日ともなるとこんなものなのか?」
「準備期間が短かったというのがやはり影響しているんじゃないですか? クラスの中には魔技祭がメインではなく露店ンや劇に焦点を当てているところもありますし……」

 学園内は一週間前の時と比べやたらと騒がしかった。魔技祭中に露店を出すクラス、魔法の実演会を行うクラスなど様々だ。
 観客もかなりの人数が世界中から集まると予想されていく。学園側で去年のデータと照合して予想を出したところ少なくとも数万の人間がここ、アロナード学園に訪れるだろうという結果になった。
 
 今、考えればそれにあやかって露店を出し、とんでもない額の利益を上げる……という商売路線という道もあったのだがその売上の十数パーセントを学園に納付しなければならないという制約付だったため断念することにした。
 
 やはり全額を手取りとしてこの手に収めたい。そんな金銭的欲求が心の高鳴りと同時に湧き上がってきたのだ。

 そしてその後、俺はいつものようにホームルームを終わらせいくつか連絡事項を言う。

「よし、これでHRを終了する。ここから先は連絡事項だ。大事な話だからよく聞いておけ」

 念入りに聞くようにと伝えると、生徒たちの目はキリっとなりこちらを見る。
 
(うんうん、良い目だ。休み明けで不安だったが切り替えはできているみたいだ)

 ひとまずホッと息を吐く。

 俺はレーナに連絡事項を頼み、ハルカが背後にある巨大黒板の前に立つ。
 レーナの言ったことを黒板に書き写す係だ。
 
 そして俺はいつものように教卓の前にある椅子で楽な姿勢をとり、それを見守る。

「……ではみなさん、今からいくつか連絡事項を言います。内容はもちろん、明日の魔道技術祭についてです」

 先ほどまで話し声で満たされていたはずのクラスの雰囲気が一気に静かになる。
 レーナは皆が周りの様子を伺いながら話し始める。

「今日の連絡事項は大きく分けて2つ。一つ目は明日に控えた魔技祭の記念すべき第一回戦の相手が決まったことです。相手はいきなりですが2年A組、上級生になります」

「―――うわっマジか……いきなり上級生かよ」
「―――しかもA組だ。2年のA組はとんでもない奴らの宝庫だって聞いたことあるぜ?」
「―――でも楽しみじゃないか。俺たちの力がどこまで上に通じるか……まぁ確かに緊張はするけどな」

 レーナの連絡でクラスは再び、ざわつき始める。
 
 所々で不安を募らせている奴と楽しみでワクワクしている奴とて気持ちが差が生まれているな……さてどうしたものか。

 そもそもなぜ俺がレーナに連絡事項を言うのを頼んだのかは全てこのため。クラス全体の雰囲気を見るためだった。

 魔技祭はもう明日に迫っている。本気で今までの日々を魔技祭優勝のために捧げてきた1年A組にとって目標が高い故にその不安も大きい。
 案の定、我がクラスでも気持ちに不安の持つ生徒が出てきていた。

 強い精神力メンタルを持たないものはその不安、プレッシャーに押し潰されて結局自分の力を出し切れずに終わる。人間であるのなら仕方のないことだ。
 だが本気で勝ちにいくのならそんな甘いことは言っていられない。

 最終的に勝つのは技術や知識を持った博識な人間ではなくそれを成し遂げたいという心が強いほうだと昔神魔団の誰かがそう言っていた。

「……やっぱり思った通りだ。オレの選択はどうやら間違いではなさそうだ」

 もちろんこれは予想できた範疇。その上、相手が2年A組となるとその予想は確信へと変わった。
 そのためにも策はしっかりと用意してある。
 魔道技術祭は文字通り魔術や錬金術を使った競技で優劣をつける祭りだ。特に魔術師にとって精神の乱れは大いに影響を与える。
 
 ぐだぐだした精神で明日の相手に勝負を挑んでも勝ち目はない。だからこそ、できるだけ研ぎ澄まされた精神状態で明日を迎えてほしい。

 そこで、俺が出した策、それは……

「そして次にもう一つ、今日の一日の流れですが……」

 レーナがこう切り出すと、生徒たちはゴクリと息を呑む。
 俺は目の合ったレーナに「うん」と頷き、彼女もニヤリと笑う。

 もちろん周りは本番前日に何を指示されるのかとドキドキしたような目でレーナを見ている。

 そんな生徒たちを横目にレーナは間をあけ、こう言う。



「……今日の活動は、特になしの自由時間ですっっっっっ!」
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...