元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第4章 おっさん、祭りに参加する

第90話 手紙の主


 ラブレター。俺は世間でそのように呼ばれているものをどうやら貰ってしまったようなのである。

 で……


「おいレーナ、らぶれたーとは何だ?」

「「え……?」」

 一瞬、その場が凍りついたかのように二人はフリーズする。
 周りの講師陣もぽかーんとこちらを見つめたまま動かない。

(え、なに? 俺なんかしたか?)

 そんな時が止まったかのような雰囲気の中、最初に口を開いたのはレーナだった。

「あ、あの……レイナード。さすがにそれは冗談で言っていますよね?」
「え? 何がだ?」
 
 きょとんとする目でレーナをみる。と、彼女は手で頭を抱え、この上ない位の深く長い溜息を放つ。
 
「え、え? どういうことなのだ? おいハルカ、お前はらぶれたーなるものを知っているのか?」
「いや……その、知っているも何も……」

 思わず苦笑いをするハルカ。というか逆に知らないのと言わんばかりの目線が俺を襲ってくる。
 周りの反応を見る限り、知っていて当たり前のものなようだ。
 
(ラブレター……これが皆の言うそれとしてこの手紙の示す意味は一体なんなんだ?)

 だがここは正直に言うしかない。
 俺には意味が分かりませんと。そう告白しなければ話が進まなそうだった。

「……す、すまんレーナ。らぶれたーってなんだ? 初めて貰ったので意味が分からんのだ……」

 素直にそう告げ、レーナにその意味を仰ぐ。
 レーナは少々戸惑いつつも他言を言うことなくゆっくりと説明を始める。

「艶書のことですよ。相手に自らの愛を伝えるための手紙、それがラブレターです」
「……あ、愛を伝える?」
「そうです。レイナードに対しての愛を伝えたいという人がそれを送ったのでしょう」

 愛を伝える……か。それはいわゆる俺に対して好意を持っている者がいるという事だよな。
 だとしたら俺に面と向かってそういえばいいのに……と思ったがそれができないからわざわざ手紙を送るというまわりくどい行動に出るのだそう。

(まったく、意味が分からん……)

 そしてレーナが言うにはこの手紙に記載された時間と場所にその送り主が姿を見せるのではないかとのこと。
 そういうことならば行かないわけにはいかない。
 俺は講師室にあった時計をすぐに見る。

「今の時刻は午後14時……ざっと後3時間といった所か」
「せ、先生、行くんですね」
「一応な。誰がこんなものを送ってきたのかも気になるし」
「心当たりとかないんですか? こう、自分のことを好意的な目線で見てくる人がいたり……とか」

 心当たりか。ざっと考えた所そんな奴は思い当たらない。
 可能性があるとしたらオルカ辺りだ。彼女のは時折熱烈な目線で俺を凝視してくる時がある。
 それが愛ゆえのものかは不明だが、それ以外に思い当たる節がないのだ。

「フィーネは絶対にない。フィオナやリーフも……あと関わりのある異性と言えばスカーレットやドリル女という事になるが……」

 だがあいつらがやるとしたら嫌がらせだな。特に意味もないこういうことしそうだ。
 だが二人とも今は色々と事情があって忙しい身だ。
 そんなことをする暇はないだろう。

(やっぱりオルカ以外は考えられないなぁ……)

 消去法でオルカという結論に至るがその可能性も著しく低い。
 
 いや、考えても何も始まらない。とりあえずこの場所に行けば答えが分かる。それまでは……

 気長に待つことにする。
 今できるのはそれくらいしかない。

「レーナ、ハルカ、この件で途中仕事を抜けることになるが代わりに頼めるか?」
「私は大丈夫ですよ」
「わ、わたしもです!」

 二人とも快く承諾してくれた。
 にしても魔技祭前日ともあろう日になんてことだ。俺にも明日に向けての準備等色々あるというのに。

(……これで悪戯とかだったら承知しないぞホントに)

 そんなことを思いつつ仕事をしていると、気が付けばもう時計は17時ちょっと前を指していた。
 
「……そろそろか」
「あ、先生抜けますか?」
「あ、ああ……レーナにもそう伝えておいてくれ」
「りょーかいですっっ! ご武運を!」
「う、うん……」
 
 ビシッと敬礼をするハルカに背を向け、俺は呼ばれた場所へと向かう。
 別に戦場に行くわけではないのに、と思ってしまうがある意味戦場か。

 もし本当に俺のことを好いていた相手の場合、どう返答しようか……
 あ、答えはもちろんノーだ。だが断り方にも色々ある。
 思いっきりストレートに行くか、遠回しに否定するか。

(ああ……もう面倒だ)


 ―――一方、その頃講師室では……


「レーナ先生、もう行きましたよ」
「もうそんな時間? なら気づかないようにしなきゃね」

 もちろん尾行しようと数時間前から計画を立てていた。
 あのレイナードに告白しようというのだ。当然、どういう輩か知りたいという想いはあった。

「じゃ、行きましょ!」
「うん!」

 席を立ちあがり、講師室へ出ようととした時だ。

「ぜひワタクシも一緒にご同行してもよろしいでしょうか?」
「うわっっ! ら、ラルゴ先生一体どこから湧い……姿を現したんですか?」
 
 ハルカが驚きながら後ろを向く。
 いきなり背後からラルゴ・ノートリウムが姿を現したのだ。そう、まるで霊のように。

 どうやらラルゴも事情を知っているみたいだ。

「ら、ラルゴ先生も行くのですか?」
「ええ、もちろん。先ほどチラッとお話を聞かせてもらいましたが、どうやら面白いことになっているみたいですねぇ」
「は、はぁ……まぁ」

 さっきまで講師室にいなかったはずの人間がなぜ今此処にいるのか。というかどこから話を聞いていたのか。
 色々疑問が残るが、彼がこういうので仕方なく連れて行くことにする。

「わ、分かりました……行きましょう」
「ありがとうございます。では……」

 こうして三人はレイナードをそっと尾行することになったのだ。
 
 そんなこともつゆ知らず、レイナードは……

「待ち合わせ場所はここのはずだがまだいない……か」

 待ち合わせ場所である展望デッキに到着していた。
 何かイベントがあるたびに此処に来る……そんな気がした。

 ハルカの一件もそうだし、仕事に対する意欲が湧かない時にはいつもこの場所に世話になっている。
 周りを見渡しても人のいる気配はない。
 
 いつものように静かで安らかな風が俺の身体を透き通っていく。
 手元の懐中時計はもう17時過ぎを指していた。

「やはり……悪戯だったか」

 そう思い、戻ろうとした時だった。

「……お、もう来ていたのか。意外と早かったなアーク……いや、今はレイナード・アーバンクルス先生と呼んだ方がいいか?」
「お、お前は……」

 物陰からひっそりと身を出すその姿は俺の記憶に鮮明に残っていたある人物だったのだ。
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