元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第5章 おっさん、優勝を目指す

第95話 出陣


「B組すごかったですね!」
「ああ、予想以上に仕上げてきていたな」
「二学年上、しかも3年B組に勝利だなんて……」
「私もつい見入ってしまいました!」

 ハルカの言う通り、試合自体はそんなに悪いものではなかった。B組の完全勝利とはいえ、3年側も見事な攻防を繰り広げていた。
 ただラルゴのクラスの実力が相手より一回り上だっただけ。一方的な試合ではなかった。

(だが負けた3年B組は単に能力による実力差で言えば負ける確率はかなり低いはず……)

 データ上では3年B組の圧勝の予定だった。相手には元A組候補の生徒が数名在籍しており、個々の
能力差もかなりあった。
 だが結果はその真逆、1年B組に軍配があがった。
 前に演習場で戦った時とはまるで別次元のような強さだったのだ。

(あの馬鹿、どうやってあそこまでの……)

 謎は深まるばかり、考えれば考えるほど理解不能になってくる。
 ただ一つ言えるのはどの生徒も非常に冷静だったということ。リラックスをしていてまるで緊張感がないようにも思えた。

「むむむ……」
「どうしたんです先生?」
「むむ……」
「レイナード先生!」
「ぬわっっっ! な、なんだ?」

 ハルカの声が脳内にジーン響き、驚きのあまり声が裏返ってしまう。
 
「はぁ……どうしたんですかぼーっとして。中々応答がなくててっきり無視されているのかと思いましたよ」
「す、すまない……」
「さっきの試合のこと……ですか?」
「ああ。考えていた、どうやってあそこまでの力を手にすることができたかを」
「確かに前に模擬戦で戦った時とは比べ物にならないくらい成長してますよね。あれからまだそんな日が経っていないのに……」

 ハルカもあの試合を見て模擬戦の時のことを思い出したようだった。
 あの時の模擬戦と比べるとどれだけ力をつけたのは一目瞭然、生徒たちも前に戦った時との力の相違に気付いたことだろう。

 だがそうはいってもB組の生徒たちは元々素質のあった連中だ。一人一人に合致した適確なカリキュラムを立てれば能力の向上は短期間でも十分可能。だが問題はそこに行くまでの過程にある。
 さすがに俺とてクラス全員分の実力や能力を知れても学外での生活習慣などには手を付けることはできない。

 適確なカリキュラムとは文字通りその人に合った生活スタイルのことを指す。一見関係のないように思うかもしれないが普段の生活というのは自身の能力に大いに影響を与える。
 要因は様々で例を挙げるとなると食生活や運動習慣などが出てくる。あとは家庭環境や育ちの良し悪しなども該当する。

 良い生活を送れば魔力も安定し、心も身体も楽になる。対して悪い生活を送れば魔力は不安定になり、病気や風邪などを引き起こす原因となる。
 単純な話だが魔術の世界はこんなことにも深く関わってくる。実際、俺もミキに言われるまで知らなかったことだ。

 昔の俺はその日その日の調子によって力が大きく左右されたりはしなかったため自覚はなかった。
 だがこんな俺でも変化を感じることはあった。天下無双の英雄時代の俺が唯一心に引っかかっていたことだ。

 そしてこの年になってミキにその話を聞かされ、謎が解けた。
 
 大まかな理由は分からない。しかし考えられる要因としてはこれらのことも完璧に管理していたのではないかと推測できる。
 だとすればあのラルゴ・ノートリウムという男はかなり勤勉な男だ。

(だがこれでB組に対する認識を改めなければならなくなったな……データはもう信用できないか)

 真の勝利を手にするにはもちろんラルゴ率いる1年B組も倒さなければならない。
 どんな理由であろうが結果が全てだ。今はとにかく立ちはだかる敵をひたすら蹂躙していくしかない。
 
 俺は顔をパンパンと叩き、気合いを入れる。
 その時、

「……レイナード先生、そろそろ時間です」

 レーナが試合開始10分前を知らせるべく待機室へと姿を現した。
 
「分かった、今すぐ行く。あいつらは?」
「もう準備を完了し、あとは先生を待つばかりの状態です」
「そうか、ご苦労だったなレーナ」
「いえ、絶対勝ちましょうね!」
「ああ、もちろんだ!」

 俺は待機室にある椅子から立ち上がり、我が生徒たちが待つ出場ゲート前へ足を運ぶ。
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