元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第5章 おっさん、優勝を目指す

第100話 始まりの合図

 地をも揺るがす声援が入場と共にこだまする。天気は快晴、もうこれ以上良き天候はないというくらいだ。
 時期ももうすぐ冬季に入るというのにやたら滅多に熱い。その上会場内の熱気も上乗せされているのでさらに暑さは増す。

(異常だろこの暑さ。時季違いかと思うくらいだわ!)

 ただ暑いということに心中文句を垂れ流すも目の前からは決勝戦の相手、3年A組が堂々と姿を現す。
 仮面付けた変人が先行をし、その背後には聖剣を持った十人の戦士がついてくる。

 ついに勝負の場でご面会。仮面鬼と会ったのはいつぶりだろうか。
 両者がアリーナの中央で会すと決まりとして代表者同士の握手が要求される。
 俺は手を差し出し、握手を要求。すると向こうもすぐさま手を差し出してきた。

「お久しぶりですねレイナード先生。私のこと、覚えていらっしゃいますか?」
「もちろん覚えているとも。あの時みたその仮面は忘れられない」
「ははは、そうですね。こんな特殊な仮面を被っていたら目立ちますよね」

 というよりそもそも普段から仮面を被って生活している方が可笑しいのではと思ってしまうのだが……

(それは突っ込まないでおこう)

 俺は仮面鬼と握手を交えると一礼し、相手の生徒一人一人と握手をしていく。
 これは相手をリスペクトする行い、レーナが言うにはスポーツマンシップに乗っ取った行為であるという。
 戦う相手に敬意を払い、お互いにフェアな一戦をしようという一種の礼儀作法。単純に解釈すればこういうことなのだろう。

『それでは、両チーム準備が出来次第所定の位置に集まってください!』

 バトルジャッジの指示に導かれ、両クラス自陣営の方へと向かう。
 今回の一戦は準決勝と同様に全ての競技で優劣をつける全ルール勝負型の仕様。
 なので今回はくじ引きによる競技の選出はない。よって大会の形式ルールに乗っ取り、最初の競技は空術に決まった。

「空術からか。先手を取りたい競技ではあるが……」
「先ずは相手の真の能力を戦いを通じて見極めることが重要だ、ということですよね?」
「あとは十人が持つ聖剣についての詮索……と言った感じでしょうか?」

 その通り。さすがは我が助手たち、俺が伝えたいことを全て言ってくれた。
 この二人の言う通りまずは相手の出方を見なければならない。観客席で見ていた時といざ敵となって目の前で見るのとでは全然見え方が違う。
 戦いを通すことで分かることも多いということだ。

 それにあの聖剣……あいつらはまだ一度もその力を解放していない。まぁ恐らく向こうは聖剣を使わなくとも勝てるとでも思っているのだろう。
 魔技祭においては聖剣はただの飾り、または切り札的なモノ……といったところか。

 ちなみにこの大会の武器使用にはこれといって制限がない。なので聖剣だろうが魔剣だろうが使いたい放題だ。

(ハイアットの言っていたことも探りたい。奴らに聖剣を使わせるには……)

「本気を出させるしかないな」

 そのためにも比較的得意競技にある空術は何としても取って試合を先導していきたい。

 と、なれば……

「リーフ、皆を頼んだぞ。お前が前に立って必ず勝利を手にしてくるんだ」
「は、はい! 頑張ります!」

 空術メンバー8人を選出。メンバーはB組と予行演習した際と全く同じメンツ、リーフを基盤とした先手必勝のチームだ。
 大会までに試行錯誤をした結果、やはりこのチームが最も勝率が高く戦略が立てやすいということからこういった結論へと至った。

 そして対する3年A組は十人しかいないのでその中でも重量級の男剣士二人を除いた計8人が選出される。
 この試合では聖剣を使うことはないため、皆武器を下ろして中央へとやってくる。
 

 そして決勝が始まろうと盛り上がりを見せる中、放送席では……


『いよいよ決勝ですね司会のラルゴ教授』
『はい。実にエクセレントォォォ! な一戦が見れるかと思うとワクワクが止まらないですねぇー』
『そうですね、非常に注目の一戦です。特に史上初の1年勢が魔技祭決勝まで上がって来るとは驚きでした。その上そんな快挙を成し遂げた1年B組を率いるのはなんと今年着任したばかりの新人魔術講師だとか。それについてラルゴ教授はどうお考えで?』
『1年B組を率いるレイナード・アーバンクルス先生は素晴らしい魔術講師ですよ。自らの能力の高さもさることながら人を指導する能力にも非常に長けている。共に同じ仕事をする身ですが彼の底知れぬ能力には思わず声が出てしまうほどです。今日の一戦、もしかすると3年A組が歯が立たずに負ける……ということも十二分にあり得ると思いますねぇー』
『なるほど、それは非常に楽しみですね! この試合は大陸全土に放送されます。試合前の反響も大きかったことからどのような試合が予想されるでしょうか?』
『はい。そりゃもう一言、エクセレントォォォォォ! な試合になることは確実でしょう。彼はやる時にやってくれますからねぇー』
『そうですか、そう聞くと尚更目が離せませんね! 試合はもうすぐで開戦となります。はるばるワイバーンへとお越しの皆さん、そしてテレビの前の皆さん。開戦までしばしお待ちください! 司会はアロナード魔術学園の筆頭人気講師、ラルゴ・ノートリウム教授。そして解説はこのビーンが送りいたします!』



 ……こんなアナウンスが会場内に響き渡る。
 
 解説者のビーンが言うとおりこの試合は大胆にも大陸全土に放送される。我々1年B組の勇姿がテレビ越しで大陸中に流されるわけだ。
 なので尚更下手な試合ができない。

 両者準備完了。ワイバーン上空に設営された空術用バトルフィールドに両チームの選手たちが導かれ、最終確認を大会関係者とバトルジャッジが行う。
 
 そして……

『皆さん、大変長らくお待たせいたしました! これよりアロン魔道技術祭決勝戦、3年A組対1年A組の試合を執り行いたいと思いますっ!』

 バトルジャッジが盛り上がった現場をさらに湧かせる。
 
(……さて、人生をかけた勝負(バトル)を始めようか)

 この暑苦しい会場内で俺たちはただ、始まりの合図を待つだけだった。
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